【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった 作:ミズノみすぎ
夜も更けて、レイゼとネオしかいない【女王の間】。
そこでネオからゼクードの容態を聞いたのだが、まさかの事態だった。
「ゼクードが記憶喪失!?」
レイゼは思わず驚愕して玉座から立ち上がる。
ネオは跪き、頭を垂れながら口を開く。
「は……医者からそう報告されました。目を覚まし、一命はとりとめたとの事ですが……」
「マジかよ……治らねぇのか?」
「可能性はあるそうです。時間が立てば回復するかもしれないと」
「マジか!」
「ですが、治らない場合もあると……」
「そっちは聞きたくなかったな……フォルス家のみんなどうしてる?」
「かなりショックを受けているようです。奥様方が特に……」
「だろうな……お腹の子に響かなきゃいいが……」
自分も妊娠経験があるから言えるのだが、ショックとはいわばストレスだ。
妊婦のストレスはそのままお腹の赤ちゃんにも影響が出ると医者に言われた事がある。
だから余計に心配だ。
カティア・ローエ・フランベールの三人が。
おそらく娘のグロリアとレミーベールが側についてるだろうが、やはりそれでも心配になる。
早めに【エルガンディ】へ帰還させて、長男のカーティスにも知らせるべきだろう。
大黒柱のゼクードが記憶喪失でも、長男のカーティスが居ればカティアたちは持ち直す気がする。
カーティスはしっかりしている男だから、フォルス家の中心になってみんなをゼクードの代わりにまとめてくれるだろう。
あとはゼクードが回復してくれれば元通りだ。
「……まぁいい。あれこれ言っても仕方ねぇ。ゼクードに関しては回復する可能性に賭けるしかねぇな」
「は……」
「ところでネオ。お前の方はどうなんだ?」
「え?」
「ミオンだよ。ちゃんと謝って来たか?」
「はい。それはもう」
良かった。
ミオンちゃんと謝ったのか。
本当に良かった。
「なら良かった。安心したぜ」
「……ありがとうございます。女王様」
「なんだよ急に?」
「いえ、母と女王様の殴り合いを見ていたので……」
思わず「ブッ!」っと吹き出してしまった。
頬がカァッと熱くなる。
「み、見てたのかよお前!」
「はい」
淡々と返事するネオに、レイゼは赤面しながら頭を掻いた。
言葉が見つからず息を吐く。
するとネオが顔を上げて、レイゼをまっすぐ見た。
「ですから……ありがとうございます。女王様が動いて下さらなければ、僕と母はずっと壊れた関係のままでした」
壊れた関係……か。
壊れるまで黙って見ていた自分には、ネオのこの言葉はあまりにも重くて、彼のまっすぐな瞳から逃げるように逸らした。
「……ちげぇよネオ」
「?」
「今回の件……オレはお前に礼を言われていい立場じゃない。お前は……被害者なんだ」
息を呑み、絶句した顔をこちらに向けるネオの気配が伝わった。
ホーホーと梟の鳴き声が【女王の間】に小さく響く。
「オレがもっと早く動いてりゃ、こんな事にはならなかった」
「女王様……」
「
本当は自分こそミオンと向き合うべきだったのに。
自分しかミオンと向き合えないと分かっていたのに。
彼女との関係の維持を優先してしまった。
その結果がネオとミオンの壊れた親子の絆。
修復できる立場にいながら、それが出来なかった。
ミオンなら母親を出来ると信じていたのもあるが、それにしたって行動が遅すぎた。
だからこそ、自分はネオに礼を言われる資格はない。
むしろ自分はネオに──
「──だから、その……本当にごめん」
言われたネオの顔は、あまりにも意外そうな顔だった。
柄にもないことを言ったせいもあるだろうが、嘘は言っていない。
母の笑顔が見たい一心で剣を振るっていたネオ。
そんな彼を知っているからこそ、もっと早く行動すべきだったのに。
レイゼは深々とネオに頭を下げた。
主君が騎士に頭を下げるのは、本来ならばあってはならない事だが、今のレイゼにはあまりにどうでもいいことだった。
「女王様……主君が騎士に頭を下げるのは……──」
言い欠けて止まり、ネオは上げていた頭を下げた。
「──あなたが主君で本当に良かった。今は心からそう思います」
「!」
ネオの思わぬ返しに、レイゼは瞼が熱くなるのを感じた。
なんだろう……やっと彼とは本当の主従関係になれたような気がする。
いつもはどこか距離と壁を感じていたから。
「このネオ・ラザ。いつかゼクード・フォルスを越える騎士になって見せます」
あのゼクードを越える……か。
今の彼ならやりかねないな。
なんて頼もしい。
「お前が居ればロジェールの世代は安心だ。これからもみんなを……【シエルグリス】を守るために、その力を存分に振るってほしい」
「はっ!」