【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第272話【若気の至り】

 夜……トイレに行くと嘘をついた。

 城の寝室を抜け出たカティアは外をゆっくり歩く。

 向かった先はゼクードが泊まる病院。

 

 静まり返った病院の前で、カティアはただ呆然と立った。

 ゼクードが出てこないかと、内心で祈りながら。

 

「お義母さん!」

 

 後ろから誰かに呼ばれ、カティアは振り返った。

 そこには暗がりでも光る金髪を垂らした義娘(ぎじょう)の姿があった。

 

「グロリアか。どうしたんだ?」

 

「どうしたんだじゃないわよ。探しに来たの。寝室に居ないと思ったらこんなところに……」

 

「ただの散歩だ」

 

「散歩って……こんな時間にやらなくてもさぁ……」

 

「いいだろ別に。それよりローエとフランは寝たのか?」

 

「うん。泣きつかれてやっと寝てくれた。だからお義母さんもそろそろ寝ないとダメだよ? ほら、一緒に行こう?」

 

「むぅ……」

 

 グロリアに言われたカティアは困ったように病院を見つめた。

 最愛の夫が……ゼクードが出てくる気配はない。

 

「お義母さん……」

 

「正直に言うとなグロリア。ここで待っていれば、ゼクードが記憶を取り戻して、飛び出してくるんじゃないかって……期待してたんだ」

 

「!」

 

「あいつは私より頑丈だからな。2年前……いや、20年前か。【エルガンディ】がS級ドラゴンの総攻撃を受けたとき、ゼクードは私を庇(かば)って重傷を負った」

 

「え!?」

 

「いつ倒れてもおかしくない瀕死の状態だった。だがあいつは、そんな身体でフル装備の私を担ぎ【エルガンディ】を脱出したんだ」

 

「すご……」

 

「そんな化け物染みたアイツだから……記憶もすぐに回復するだろうと思っている」

 

 言い切って、それから溜め息に繋がった。

 

「だが、まぁ……さすがに現実は厳しいな……」

 

「判断が早いよお義母さんは。アタシたちもやれることをやらないと」

 

 グロリアに言われ「やれること?」っとカティアは聞き返した。すると義娘は頷いた。

 

「実はレミーと話し合ってたんだけど、明日の昼にはここを発って【エルガンディ】へ帰ろうと思ってるの」

 

「明日の昼? 随分と急だな」

 

「うん。でも早めにカーティスに知らせたいし、陛下やグリータおじさんにも事情を説明しないとだし」

 

「……確かにそうだな」

 

「でしょ? それに【エルガンディ】へお父さんを連れてけば、それだけで記憶回復を促せるんじゃないかって思ってるの。先代国王様のお墓を見せたり、カーティスに会わせたり、グリータおじさんに会わせたり、とにかくいろいろやってみようと思って」

 

「なるほど……」

 

 グロリアとレミーベールがこんなに考えてくれていたとは。

 自分は悲しんでばかりで何も考えていなかった。

 親として、少々情けない思いが込み上がってくる。

 

「なら私も……明日に備えてもう寝るか」

 

「うんうん。そうしてくれると助かるわ~。寝坊したら置いてくからね?」

 

「そこは起こしてくれ。無理矢理でもいいから」

 

「ふふ、りょ~かい」

 

 グロリアの笑いに釣られ、カティアも小さく笑っていた。

 こんな時に笑うなんて……と思ったが、憂鬱な気分が少し晴れたような気がした。

 

「それにしても凄いねお父さんは。それだけお義母さんの事を大切に思ってたんだ」

 

「ん?」

 

「さっきの話。重傷のままお義母さんを担いだってやつ」

 

「ああそれか。まぁ……そうだな」

 

「もうその時から愛し合ってたの?」

 

「ん……どうだろうな。愛は結婚してから育むものだと思ってたからな」

 

「ふーん……お父さんのどこに惹かれたの?」

 

「強さ。そしてどこか憎めんところだ」

 

「へぇ……やっぱり強さが一番に来るんだ?」

 

「ああ。騎士をやっていると自分より軟弱な男はどうにも受け付けん」

 

「あーそれ分かる」

 

「アイツは私にとってこれ以上にない理想の男だった。だから、まぁ、その、好きになった。おそらくあの時はもう……お腹にカーティスがいたかもしれん」

 

「え? カーティスがいたかもって……それならアタシとレミーも?」

 

「そうだな。いないとおかしいな。ローエとフランの腹に」

 

「え!? もうその時から結婚してたの?」

 

「いや、結婚はまだだったな」

 

「えぇ……順番が逆じゃない?」

 

「まぁそう言うな。あの時は私もゼクードも若かった。性欲旺盛な10代だったんだ。昂れば早まってしまうこともあるさ」

 

 まさに若気の至り、というべきか。

 あの時はホンット……

 

「いや若かったって……お義母さんまだ10代だよね?」

 

「…………そうだった。すまん」

 

「いや別に謝らなくてもいいけど……」

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