【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった 作:ミズノみすぎ
夜……トイレに行くと嘘をついた。
城の寝室を抜け出たカティアは外をゆっくり歩く。
向かった先はゼクードが泊まる病院。
静まり返った病院の前で、カティアはただ呆然と立った。
ゼクードが出てこないかと、内心で祈りながら。
「お義母さん!」
後ろから誰かに呼ばれ、カティアは振り返った。
そこには暗がりでも光る金髪を垂らした義娘(ぎじょう)の姿があった。
「グロリアか。どうしたんだ?」
「どうしたんだじゃないわよ。探しに来たの。寝室に居ないと思ったらこんなところに……」
「ただの散歩だ」
「散歩って……こんな時間にやらなくてもさぁ……」
「いいだろ別に。それよりローエとフランは寝たのか?」
「うん。泣きつかれてやっと寝てくれた。だからお義母さんもそろそろ寝ないとダメだよ? ほら、一緒に行こう?」
「むぅ……」
グロリアに言われたカティアは困ったように病院を見つめた。
最愛の夫が……ゼクードが出てくる気配はない。
「お義母さん……」
「正直に言うとなグロリア。ここで待っていれば、ゼクードが記憶を取り戻して、飛び出してくるんじゃないかって……期待してたんだ」
「!」
「あいつは私より頑丈だからな。2年前……いや、20年前か。【エルガンディ】がS級ドラゴンの総攻撃を受けたとき、ゼクードは私を庇(かば)って重傷を負った」
「え!?」
「いつ倒れてもおかしくない瀕死の状態だった。だがあいつは、そんな身体でフル装備の私を担ぎ【エルガンディ】を脱出したんだ」
「すご……」
「そんな化け物染みたアイツだから……記憶もすぐに回復するだろうと思っている」
言い切って、それから溜め息に繋がった。
「だが、まぁ……さすがに現実は厳しいな……」
「判断が早いよお義母さんは。アタシたちもやれることをやらないと」
グロリアに言われ「やれること?」っとカティアは聞き返した。すると義娘は頷いた。
「実はレミーと話し合ってたんだけど、明日の昼にはここを発って【エルガンディ】へ帰ろうと思ってるの」
「明日の昼? 随分と急だな」
「うん。でも早めにカーティスに知らせたいし、陛下やグリータおじさんにも事情を説明しないとだし」
「……確かにそうだな」
「でしょ? それに【エルガンディ】へお父さんを連れてけば、それだけで記憶回復を促せるんじゃないかって思ってるの。先代国王様のお墓を見せたり、カーティスに会わせたり、グリータおじさんに会わせたり、とにかくいろいろやってみようと思って」
「なるほど……」
グロリアとレミーベールがこんなに考えてくれていたとは。
自分は悲しんでばかりで何も考えていなかった。
親として、少々情けない思いが込み上がってくる。
「なら私も……明日に備えてもう寝るか」
「うんうん。そうしてくれると助かるわ~。寝坊したら置いてくからね?」
「そこは起こしてくれ。無理矢理でもいいから」
「ふふ、りょ~かい」
グロリアの笑いに釣られ、カティアも小さく笑っていた。
こんな時に笑うなんて……と思ったが、憂鬱な気分が少し晴れたような気がした。
「それにしても凄いねお父さんは。それだけお義母さんの事を大切に思ってたんだ」
「ん?」
「さっきの話。重傷のままお義母さんを担いだってやつ」
「ああそれか。まぁ……そうだな」
「もうその時から愛し合ってたの?」
「ん……どうだろうな。愛は結婚してから育むものだと思ってたからな」
「ふーん……お父さんのどこに惹かれたの?」
「強さ。そしてどこか憎めんところだ」
「へぇ……やっぱり強さが一番に来るんだ?」
「ああ。騎士をやっていると自分より軟弱な男はどうにも受け付けん」
「あーそれ分かる」
「アイツは私にとってこれ以上にない理想の男だった。だから、まぁ、その、好きになった。おそらくあの時はもう……お腹にカーティスがいたかもしれん」
「え? カーティスがいたかもって……それならアタシとレミーも?」
「そうだな。いないとおかしいな。ローエとフランの腹に」
「え!? もうその時から結婚してたの?」
「いや、結婚はまだだったな」
「えぇ……順番が逆じゃない?」
「まぁそう言うな。あの時は私もゼクードも若かった。性欲旺盛な10代だったんだ。昂れば早まってしまうこともあるさ」
まさに若気の至り、というべきか。
あの時はホンット……
「いや若かったって……お義母さんまだ10代だよね?」
「…………そうだった。すまん」
「いや別に謝らなくてもいいけど……」