【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第276話【カティア、察する】

 今日は何事もなく平穏無事な1日だった。

 カーティスは自宅に戻り、オフィーリアと共に夜食を取る。

 

 彼女として付き合い始めてからオフィーリアは当たり前のようにウチに来るようになった。

 追い返すのも面倒なので受け入れて一緒に過ごしているわけだが、今日のオフィーリアは何かが違った。

 

 ずっとソワソワしている。

 というより……こちらの隙を窺っているような、そんな危うい気配さえ感じさせていた。

 

 おかげでこっちも警戒せざるを得なくなり、心休まらない時間を過ごしている。

 

 オフィーリアは皿などを台所へ持っていき、全て洗って片付けた。

 するとすぐカーティスの座るソファーへ来て、隣に座った。

 

 ただならぬ雰囲気を発するオフィーリアに、カーティスはとんでもない息苦しさを味わった。

 オフィーリア本人は何かを言おうとしているようだが、いったいなんなのだろうか?

 

 食事の時もあまり喋らなかった。

 いつも1人でペラペラペラペラと喋るのがオフィーリアなのだが、今日はまったく喋らない。

 

 何か怒らせるようなことをしただろうか?

 正直まったく心当たりがない。

 

 無言の圧力を掛けてくるオフィーリアに動揺を隠せないカーティスは、仕方なく自分を落ち着かせようとエールを口にした。

 するとオフィーリアが意を決したように口を開く。

 

「カーティスさんわたし! 赤ちゃん欲しいです!」

 

 ブパァアアアッ!

 

 カーティスは盛大にエールを吹いた。

 ゴホゴホとむせて涙目になる。

 

「大丈夫ですか?」

 

「大丈夫じゃない! いきなりなんだ!?」

 

 エールをテーブルに置いてカーティスはオフィーリアを見た。

 すると当のオフィーリアは意外にも真剣な気配を見せていた。

 

「だってわたしもう21歳ですよ? 同い年の女の子はもうみんな3~4人ほど子供いるんですよ?」

 

 21歳で3~4人? そんなバカな。

 逆算すると17歳から一年単位で1人生んでる計算になるが、そんなにみんなポンポン子供を作ってるのだろうか?

 

 確かにうちの母たちは17~19歳でもう自分たちを生んでいたから不思議ではないが。

 

「……そうなのか?」

 

「そうですよ! カーティスさん修行とか仕事ばっかりで知らなすぎるんです! わたしはもう遅すぎるくらいなんです! だからカーティスさん! 抱いてください! 今すぐ!」

 

 あの糸目のオフィーリアがまさかの開眼!

 ライトブルーの美しい瞳が露出したが、その瞳から発せられるのは盛りがついた獣のような気。

 

 隙を見せれば食われそうな、油断ならない気配に覆われている。

 

「お、落ちつけ! 俺たちはまだ結婚すらしてないだろ。先に結婚してからだそういうのは」

 

「じゃあ結婚しましょう!」

 

「わかった」

 

「え!?」

 

 今度はオフィーリアが驚いて止まる番だった。 

 先程のオフィーリアの主張を聞けば、彼女は彼女なりに悩んでいたんだろう。

 

 女性には女性の悩みがある。

 叔母のリリーベールから聞いた言葉だが、まさにオフィーリアの悩みがそれなんだろう。

 

 21歳でありながら子供がいない。

 それが今のオフィーリアにとって最大の悩みになっているのは間違いない。

 焦っているのも事実。

 

 ならば彼氏として聞き入れないわけにはいかないだろう。

 

「父さんや母さんたちが帰ってきたら結婚の話をしよう。それでいいな?」

 

「ぇ、え……え!? 良いんですか!?」

 

「いや……こっちが聞いてるんだが?」

 

「もも、もちろんですよ! 良いに決まってるじゃないですか! やったあああああああああああああああああ!」

 

 本気で喜ぶオフィーリアに、カーティスも満更ではなかった。

 オフィーリアは意気揚々とカーティスの隣に密着してきた。

 

 するとオフィーリアの甘い薫りが鼻をくすぐり、なんとも言えない安らぎを感じてしまった。

 オフィーリアはいつも良い薫りがするが、今日は一段と濃厚だ。

 

 官能的と表現するべきか?

 いつもより魅力的に見えるのは何故だ?

 やたら肌が綺麗に見えるし、なんだこれは?

 

「そうと決まったら子供の名前を考えましょうカーティスさん!」

 

「ん? ああ。気が早いな……」

 

「だってもう嬉しくて!」

 

 子供の名前を考えようと言うのに、その母となる女が子供のようにハシャイでいる。

 なんとも微笑ましい光景だが。

 

「名前か……」

 

「男の子だったらどうします?」

 

「父さんに似た名前がいいな。ゼクー……ゼク……いや、ゼド」

 

 ゼド……悪くない。

 我ながらなかなか秀逸な名前な気がする。

 父さんに似て強そうだ。

 

「ゼド! なかなかカッコいい名前ですね! じゃあ女の子だったらどうします?」

 

 女の子か……

 正直、女の子だと育児が大変な気がする。

 叔母リリーベールの話ではグロリアとレミーベールがヤンチャだったらしい。

 男のカーティスは大人しくて助かったとかなんとか。

 

 普通は逆らしいのだが、自分たち三姉弟は別だったようだ。

 

 あと個人的に女の子だと叱る時どう叱ればいいか分からない。

 男の子なら多少は力で分からせる事もできるが、女の子だと話は変わってくる。

 

 できるなら男の子だけでいいのだが…………いや、今は名前の話か。

 

「そうだな。女の子ならお前に近い名前がいいな。オフィーリア……オフィー……んー……リア?」

 

「いやリアはさすがに安直すぎますよ。カフィってどうです?」

 

「カフィ?」

 

「カーティスさんの【カ】とわたしの【フィ】を混ぜてみたんです! けっこう可愛くないですか?」

 

「……」

 

「……ダ、ダメですか?」

 

「いや、悪くない」

 

 カフィか。

 呼びやすくて良い名前だ。

 でも男の子がいいな。個人的に。

 

「良かった~。じゃあとりあえずキスしましょうか!」

 

「なんでだ!? 意味がわからん!」

 

 しかしオフィーリアはソファーでカーティスを押し倒して来た!

 

「逃がしませんよ! 結婚するならもう速い方がいいんです! 人間が一番若いのは今この瞬間ですから!」

 

「ま、待て! まだ心の準備が──」

 

 その先を言う前に口で口を塞がれた。

 

 

 夜もすっかり更けてしまった頃にカティアたちは【エルガンディ】へ着いた。

 

 記憶を失ったゼクードはローエたちに任せ、カティアはカーティスの自宅へ足を運んだ。

 深夜で静まり返った街中を歩く。

 

 まだ起きていればいいが、こんな時間に重い話をするのもどうかと、ちょっと考えていた。

 

 明日の朝、改めてカーティスへ報告する方が良い気もするが……

 

「……?」

 

 カティアはカーティスの自宅の玄関前まで来て止まった。

 玄関の奥から音が聞こえる。

 窓からはほんのり光が見える。

 

 どうやらカーティスは起きてるようだが、なにやら様子がおかしい。

 

 ギシ、ギシ、ギシとリズミカルな木の軋む音が聞こえるのだ。

 

 そして聞き覚えのある女性の声まで。

 

「カ、カーティスさん! 激しい!」

「仕掛けてきたのはお前だろう?」

 

 荒い息遣いのまま繰り出される声。

 生々しい肉と肉のぶつかる音。

 その時点でカティアは察した。

 

 よし。

 帰って寝よう。

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