【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

284 / 448
第284話【真実は残酷】

「アルベール・アルフェルド。以下3名。帰還しました」

 

 カーティスの騎士仲間であり友人でもあるアルベールが帰還した。

 母リリーベール譲りの銀髪を揺らしながら、彼はここ【王の間】にてアスレイ陛下の元に跪く。

 

「よく無事に戻ってくれた。君たちには先代国王の事を説明したいが、まずは報告から聞かせてほしい」

 

「はっ! 結論から申しますと……リングレイスの北東には王国がありました」

 

「王国だと!?」

 

 この場にいるみなが息を呑んだ。

 無論、カーティスもその一人だ。

 アルベールは「はい」と続ける。

 

「エルガンディよりも遥かに大きな王国でした」

 

「エルガンディより? よほど生き残りがいたのだな?」

 

 アスレイ陛下がそう言うと、隣の大臣が口を開く。

 

「もしくは初めから避難先として作っていたのでは?」

 

「避難先?」

 

「リングレイスは最古の王国です。有り得ない話ではないでしょう」

 

「しかしそれでは過去の難民の話と噛み合わなくなるぞ?」

 

「あ……」

 

 あっさり仮説を否定された大臣は頬を赤くして縮こまった。

 小さく溜め息を吐いたアスレイ陛下はこちらに視線を寄越す。

 

「君はどう思うカーティス?」

 

「は……もう少し情報が欲しいです。アルベール」

 

 友人を呼び、彼の赤い瞳に自分を映させた。

 

「その発見した王国は、リングレイスからどれほど離れてるんだ?」

 

「馬で一週間は掛かる距離だ。生半可じゃない」

 

 予想以上に遠いな。

 それで避難所というのはさすがにないだろう。

 

「……避難先をそんな離れた場所に建設するとは思えません。リングレイスとはまた別の王国だと思います」

 

「ふむ……シエルグリスに続く新たな王国か。その王国の者とは接触を?」

 

 アスレイ陛下の問いにアルベールは首を振る。

 

「していません。それはまだ早計かと判断しました。それに距離が距離でしたので、場所だけの把握をしていったん帰還しました。出ないと期限内に戻れませんでしたので」

 

「そうか。素晴らしい判断力だ。君たちにこの仕事を任せて正解だったな。異文化との接触は何かしらの危険を伴う。この件は慎重に進めよう」

 

「は……距離があまりにもあります。まずは中継拠点を建設すると良いと思います」

 

 アルベールの提案にアスレイ陛下は「よし。それで行こう」っと即決した。

 カーティスもそれには異論がなかったので黙っている。

 

「これは大きな発見だ。みんな……本当によくやってくれた」

 

「は……それで、国王様の話とは?」

 

「ああ……実は──」

 

 

「──まさか国王様がお亡くなりになられていたとはな……お見送りできなくて残念だ」

 

 隣でアルベールが悲しそうに言った。

 カーティスは王に報告を済ませた彼と共に城を後にしていた。

 久しぶりの再会なのでこうして共に街を散歩しながら雑談している。

 

「こればかりは仕方ないさ」

 

「そうだな」

 

「……アルベール。その発見した王国はそんなに大きいのか?」

 

「ああ、軽くエルガンディの3倍はあった。あんな大きな王国の存在に今まで気付かなかったとはな……」

 

「馬で一週間だろう? そんな距離なら普通は気づかん」

 

「ああ……ところでカーティス」

 

「なんだ?」

 

「お前にだから正直に言うが……俺は、恋をしてしまったかもしれん」

 

「……恋?」

 

 生真面目なアルベールからは信じられない言葉が飛び出てきた。

 彼の顔は精悍で整っているから女性にはかなりモテていた。

 

 しかし当の本人が女性にまるで興味がないかんじだった。

 というより仕事にストイックなタイプなのが彼だ。

 そんな男がこんなことを言うのは軽く事件だ。

 

「凄く可憐な女性を見掛けてな。あんなに目を奪われたのは生まれて初めてだ」

 

「お前が女性に? 珍しいな。そんなに綺麗な人だったのか?」

 

「ああ……心の底から綺麗だと思ったよ。ああいう人こそを美人と言うんだろうな」

 

「どんな見た目だったんだ?」

 

「透き通るような碧眼で、髪はクリーム色の少し癖毛がある長髪だ。装備を見る限り弓使いだ」

 

 ん?

 

「青を主としていたから氷魔法の使い手だろう」

 

「………………それって」

 

「思い出すだけで胸が焦がれそうだ。また会いたい……見掛けた場所は【南の領地】だった。あの辺を探せばまた会えるかもしれんな」

 

「いやたぶんそれお前のオバ──」

 

「聞いてくれカーティス。俺はその人を見た時……不思議な感覚が走ったんだ。まるで他人じゃないような、言葉にしにくい何とも言えない感覚が走ったんだ。あれはきっと……恋なのかもしれん」

 

「絶対違うと思うぞ」

 

「なぜそう言い切れる? お前はオフィーリアに恋をしなかったのか?」

 

「……あいつに恋を感じたことはないな。可愛いと思ったことならあるが」

 

「気づいてないだけじゃないのか?」

 

「否定はしない」

 

「ふ、お前らしいな。……さて、そろそろ帰るよ。顔を見せないと母がうるさくてな」

 

「ああ」

 

 アルベールは行ってしまった。

 言うべきだっただろうか?

 

 彼が恋した相手は間違いなくフランベール・フォルスだろう。朝の散歩でもしていたのだろうか?

 

 フランベールは、アルベールの母リリーベールの妹で、アルベールにとっては叔母である。

 

 ……真実を伝えるべきだったか?

 いや、しかし……彼のあんな幸せそうな顔は初めて見た気がする。

 

 本当の事を伝えるのは、あまりにも酷な気がする。

 

 そう頭の中でも自問自答していると、いつの間にか自宅に着いていた。

 

「あ、お帰りなさいカーティスさん。お昼ご飯できてますよ!」

 

「ああ、ありがとう」

 

 未来の妻オフィーリアが健気に帰りを待っていてくれていた。

 

「……なぁ、オフィーリア」

 

「はい!」

 

「言ったほうが良かったかな?」

 

「はい?」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。