【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第285話【息子感心する】

 昼が過ぎて昼食を取り終えた頃にカーティスが俺の自宅にやってきた。

 俺の様子を見に来てくれたらしい。

 

 ローエ・カティア・フランベールとは会話が弾まず困っていたから本当に助かるのだが。

 

「母さん。脱いでください」

 

「いや、しかしだな……」

 

「早く」

 

 家に着て早々誤解されそうな会話をするカーティスとカティア。

 この二人は血の繋がった親子らしく、それ故にカーティスの言葉には容赦がない。

 

 あまりの威圧に母カティアはタジタジであった。

 

「わ、私は鎧を着ていないと落ち着かないんだ」

 

「職業病ですね。お気持ちは理解しますが医者にも言われているでしょう? 妊娠している時は重たい物は持たない、着ない、と。家にいる時くらいは脱いでください」

 

「そうですわよカティア。だから言ってるでしょう? あとフランも脱ぎなさい」

 

 私服のローエが騎士姿のフランベールを指す。

 

「え、でもわたしのは軽いから……」

 

「ダメです」

「ダメですわよ」

 

 カーティスとローエがほぼ同時に言った。

 

「は、はい……」

「く……落ち着かん」

 

 渋々と着替えに戻るカティアとフランベールを見送り、ローエはやれやれと皿洗いを始めた。

 いま机を囲んでいるのは俺とカーティスだけ。

 

「……なぁカーティス」

 

「なんでしょう?」

 

「俺の家族構成は分かったけど、俺の両親っていないの?」

 

 俺の発言にローエの皿を洗う手が一瞬止まった。

 カーティスも顔を曇らせ、ゆっくりと言葉を紡ぐ。

 

「それは、残念ながら……」

 

「そっか……」

 

 まぁ、予想はしていた。

 エルガンディという故郷に帰って来たのに案内もされず、紹介もされなかったから。

 

「父さんも英雄ですが、祖父も英雄だったと聞いています」

 

 カーティスが真顔で告げた。

 どうやら俺は英雄でもあったようだ。

 二つ柱とか色々言われてきたから、今さらもう驚かないが。

 

「過去にディザスタードラゴンという恐ろしいドラゴンがいたそうですが、祖父はそいつと戦って行方不明になったそうです。見つかったのは武器だけだとか」

 

「そうなんだ。名前は?」

 

「フォレッド・フォルスです。祖母はセレン・フォルス。それからロゼ・シエルグリスと聞いています」

 

 親父も嫁が二人いたのか。

 なんでロゼだけ家名が違うのかは謎だが、そんなことはいい。

 今すごく気になったことがある。

 

「フォレッド……セレン……」

 

 前に夢の中で聞いた名前だ。

 あの夢は今でもハッキリ覚えている。

 黒い髪と黒い瞳のお姉さんが俺に膝枕をして撫でてくれていた心地良い夢だった。

 

 だが同時に意味深な事も言っていた。

 

『フォレッドはこっちにはいないぞ。この大嘘つき者め』

 

『それから、セレンが消えた』

 

 フォレッドとセレン。

 確かにあのお姉さんはそう言っていた。

 彼女が何者かは分からないが、俺の両親の名を知っている点が気になる。

 

 フォレッドはこっちにいない、とはなんだ?

 

 セレンが消えたって、なんの話だ?

 

 どういう事なんだ?

 

 訳が分からないはずなのに、俺はずっと胸騒ぎを覚えている。

 記憶がないはずなのに、心のどこかで何かを覚えていて騒いでいる。

 

 気持ち悪い……頭が痛くなってくる。

 

「父さん?」

 

 机を挟んだ向かいのカーティスに呼び掛けられ、俺はハッと意識を戻した。

 

「ぁ、ああ……ごめん」

 

「どうされたんです?」

 

「いや、ちょっと前に見た夢でその名前を聞いたなって……」

 

「夢?」

 

 俺は頷いて息子の眼を見た。

 

「知らないお姉さんに膝枕をされていて、その人が言ってたんだ。フォレッドはこっちにいないぞ、とか。セレンが消えた、とか」

 

 するとテーブルを拭いていたローエと、向かいのカーティスが目を丸くして俺を見てきた。

 

「どういう意味です?」

 

 カーティスに問われ「さぁ?」っと俺は肩を竦めた。

 

「その知らないお姉さんはどんな見た目でしたの?」

 

 ローエに聞かれたので俺は腕を組んで思い出す。

 

「黒い髪と黒い眼をしてたな。雰囲気はなんかあのレイゼって人に似てた気がする」

 

「黒い髪と黒い瞳……レイゼさんに似てる……」

 

 何か思い当たる人物がいるらしいローエが顔を険しくしながら繰り返した。

 

「まさか……ロゼ女王?」

 

「お母様。知っているんですか?」

 

「さっき言ったロゼ・シエルグリスですわ。あなたの祖母の一人ですのよ」

 

 カーティスの祖母? ってことは俺の母親か。

 あの膝枕してくれていたお姉さんが俺のもう一人の母親とは。

 どう見ても若かったけど……

 

「あれがカーティスのお婆ちゃん? そんなオバさんには見えなかったけどなぁ……」

 

「当たり前ですわ。若くしてお亡くなりになられてますもの」

 

「え、死んでるの!?」

 

「ええ昔、雪のドラゴンからあなたとレイゼ女王を庇って……」

 

「そうだったんだ……」

 

 また雪のドラゴンか。

 人を氷漬けにしたり、人の祖母を殺したり、とんでもないヤツだったんだな。

 

 いやでも待てよ?

 じゃあ、あのロゼって人は……この世にいない人?

 だったら──

 

『フォレッドはこっちにいない』

 

『セレンが消えた』

 

 ────この言葉の意味は……いや、まさかな。

 所詮は夢の話だ。

 信じるに値しない。

 

 だけど、なんだろう。

 胸騒ぎが収まらない。

 まるでもう一人の自分が大騒ぎしているようだ。

 

 どうしようもない胸騒ぎに軽く深呼吸をすると、テーブルの上に水の入ったコップをローエが置いてくれた。

 俺の分とカーティスの分と。

 

「ロゼ様があなたを心配して夢に出て来てくれたのかもしれませんわね」

 

「やっぱりそういう夢だったのかな?」

 

「きっとそうですわよ。それかあなたの心に印象強く残ってるのかもしれませんわ。なにせ出会って数秒後にパンチでブッ飛ばされてましたもの」

 

「えぇ……」

 

 なんで俺お母さんにブッ飛ばされてんの?

 ほんっとに意味わかんない。

 

「父さんを素手でブッ飛ばすなんて凄いな……」

 

 いやカーティス。

 そこは感心するとこじゃないぞ?

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