【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第286話【あれから】

 あれから発見された新王国を調査するため、中継地点の建設が始まった。

 場所は【リングレイス】とその更に北東へ進んだ先の2ヶ所。

 

 距離があるため進行にはかなりの時間を要し、最初の拠点が完成したのは3ヶ月経った後だった。

 

 二つ目の拠点も4ヶ月ほど掛かり、計7ヶ月もの時を費やした。

 

 その間に妊娠していたローエ・カティア・フランベールのお腹は大きくなり、もういつ出産してもおかしくないくらいになっていた。

 

 病院暮らしになっている母親たちだが、肝心の父親は──

 

「父さん! なぜ逃げるんですか!」

 

「もう鍛練やだ! カーティスのいちいちキツイんだよ!」

 

 よく晴れた空の下。

 実家の門前で父ゼクードが嘆いて逃走し、息子カーティスが追いかける。

 

「何言ってるんです! こんなの序の口の序ですよ! 本来はもっと──」

 

「あ、カーティス! 母さんが全裸で外を歩いてるぞ!」

 

「え!?」

 

「じゃあな!」

 

「あ! 父さん! 逃がしませんよ!」

 

 あんなに強くてカッコよかった父ゼクードの面影は未だに回復していない。

 もちろん記憶も。

 

 あれからもう7ヶ月も経つのに、父ゼクードの記憶喪失は回復の兆しすら見せない。

 本当にこのままなのだろうか?

 

「お父さん凄いね。あのカーティスから逃げてる」

 

 隣のグロリアが割と本気で感心した。

 レミーベールは苦笑しながら腕を組む。

 

「記憶が無くても身体能力は変わってないもんね~」

 

「そうね。そういえばアスレイ陛下とはどうなの最近?」

 

 いきなりの話題に虚を突かれ、レミーベールは言葉に困った。

 

「どうって……何も」

 

「し、進展ないんだ……」

 

 割と本気で驚く妹グロリアに、レミーベールは慌てて付け足す。

 

「食事にはよく誘われるわ」

 

「行ってるの?」

 

「うん。なんかワタシと一緒に食事をするのが唯一の癒しだって、半泣きで語る陛下が可愛くて」

 

 これは本当である。

 国王の生活はもっと優雅だと思っていたがそうでもないらしく、日々周りの小言を聞く毎日だとか。

 

「半泣きって……」

 

「ふふ、城の生活もいろいろストレスがあって大変みたいね。ああやって言われると必要とされてるみたいで嬉しいわ」

 

 また会いたいと言ってくれるアスレイ陛下のあの笑顔を思い出す。

 すると胸の奥が熱くなって、何とも言えない幸福感を覚えるのだ。

 

 誰かに必要とされるのって、やっぱりとても嬉しいものである。

 

「そう思うならもう結婚したあげたら? ずっと側に居てあげればいいじゃん。あんたフォロー上手なんだし」

 

 割と本気でそう言うグロリアにレミーベールは露骨に溜め息を吐いた。

 これはもう母親たちにも言われた言葉だ。

 

「んもう……あんたまでそんなこと言う。みんな他人事だと思って簡単に言い過ぎよ結婚結婚って」

 

「嫌なの?」

 

「そうじゃなくて。相手は国王様よ? 国のトップっと結婚するってことはワタシは王妃になるのよ?」

 

「うん。そりゃあね」

 

「ワタシに務まると思う? 王妃なんて」

 

「え……王妃って何か仕事あるの?」

 

「いや知らないけど……」

 

 知らないけど、何もしないでいい立場とは思えないのだ。実際はどうなのだろう?

 

「知らないで不安がってたの!? 聞けば良いじゃない陛下に直接」

 

「そ、そうだけど。それを聞くってことは、つまり、そういうことになっちゃうから、その……」

 

 王妃の質問をするということは、結婚する意思があることにもなる。

 そんなのいくらなんでも恥ずかしいし、自分に務まらないような職業だったらどうしようと考えてしまう。

 

 王妃を職業と呼んでいいのかは謎だが。

 今は無視する。

 

「鈍感なのにそんなこと気にするんだ」

 

「え、なに?」

 

「なんでもない。恥ずかしいならアタシが聞いといてあげるわよ」

 

「どうやって?」

 

「簡単よ。『姉が王妃になるかもしれないから、王妃の役割と仕事内容を教えて下さい。身内として姉をしっかりフォローしてあげたいんです』って言えば陛下なら余裕で答えてくれるわよ」

 

 なるほど。

 

「普段ゴリラなのに妙なところで頭回るのね」

 

「あ?」

 

「な、なんでもない!」

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