【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった 作:ミズノみすぎ
あれから発見された新王国を調査するため、中継地点の建設が始まった。
場所は【リングレイス】とその更に北東へ進んだ先の2ヶ所。
距離があるため進行にはかなりの時間を要し、最初の拠点が完成したのは3ヶ月経った後だった。
二つ目の拠点も4ヶ月ほど掛かり、計7ヶ月もの時を費やした。
その間に妊娠していたローエ・カティア・フランベールのお腹は大きくなり、もういつ出産してもおかしくないくらいになっていた。
病院暮らしになっている母親たちだが、肝心の父親は──
「父さん! なぜ逃げるんですか!」
「もう鍛練やだ! カーティスのいちいちキツイんだよ!」
よく晴れた空の下。
実家の門前で父ゼクードが嘆いて逃走し、息子カーティスが追いかける。
「何言ってるんです! こんなの序の口の序ですよ! 本来はもっと──」
「あ、カーティス! 母さんが全裸で外を歩いてるぞ!」
「え!?」
「じゃあな!」
「あ! 父さん! 逃がしませんよ!」
あんなに強くてカッコよかった父ゼクードの面影は未だに回復していない。
もちろん記憶も。
あれからもう7ヶ月も経つのに、父ゼクードの記憶喪失は回復の兆しすら見せない。
本当にこのままなのだろうか?
「お父さん凄いね。あのカーティスから逃げてる」
隣のグロリアが割と本気で感心した。
レミーベールは苦笑しながら腕を組む。
「記憶が無くても身体能力は変わってないもんね~」
「そうね。そういえばアスレイ陛下とはどうなの最近?」
いきなりの話題に虚を突かれ、レミーベールは言葉に困った。
「どうって……何も」
「し、進展ないんだ……」
割と本気で驚く妹グロリアに、レミーベールは慌てて付け足す。
「食事にはよく誘われるわ」
「行ってるの?」
「うん。なんかワタシと一緒に食事をするのが唯一の癒しだって、半泣きで語る陛下が可愛くて」
これは本当である。
国王の生活はもっと優雅だと思っていたがそうでもないらしく、日々周りの小言を聞く毎日だとか。
「半泣きって……」
「ふふ、城の生活もいろいろストレスがあって大変みたいね。ああやって言われると必要とされてるみたいで嬉しいわ」
また会いたいと言ってくれるアスレイ陛下のあの笑顔を思い出す。
すると胸の奥が熱くなって、何とも言えない幸福感を覚えるのだ。
誰かに必要とされるのって、やっぱりとても嬉しいものである。
「そう思うならもう結婚したあげたら? ずっと側に居てあげればいいじゃん。あんたフォロー上手なんだし」
割と本気でそう言うグロリアにレミーベールは露骨に溜め息を吐いた。
これはもう母親たちにも言われた言葉だ。
「んもう……あんたまでそんなこと言う。みんな他人事だと思って簡単に言い過ぎよ結婚結婚って」
「嫌なの?」
「そうじゃなくて。相手は国王様よ? 国のトップっと結婚するってことはワタシは王妃になるのよ?」
「うん。そりゃあね」
「ワタシに務まると思う? 王妃なんて」
「え……王妃って何か仕事あるの?」
「いや知らないけど……」
知らないけど、何もしないでいい立場とは思えないのだ。実際はどうなのだろう?
「知らないで不安がってたの!? 聞けば良いじゃない陛下に直接」
「そ、そうだけど。それを聞くってことは、つまり、そういうことになっちゃうから、その……」
王妃の質問をするということは、結婚する意思があることにもなる。
そんなのいくらなんでも恥ずかしいし、自分に務まらないような職業だったらどうしようと考えてしまう。
王妃を職業と呼んでいいのかは謎だが。
今は無視する。
「鈍感なのにそんなこと気にするんだ」
「え、なに?」
「なんでもない。恥ずかしいならアタシが聞いといてあげるわよ」
「どうやって?」
「簡単よ。『姉が王妃になるかもしれないから、王妃の役割と仕事内容を教えて下さい。身内として姉をしっかりフォローしてあげたいんです』って言えば陛下なら余裕で答えてくれるわよ」
なるほど。
「普段ゴリラなのに妙なところで頭回るのね」
「あ?」
「な、なんでもない!」