【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった 作:ミズノみすぎ
翌日を迎え、太陽がエルガンディを照らし始めた頃。
「レミ~。迎えに来たわよ~。レミ~」
グロリアが姉の自宅の玄関を叩いていた。
しかし返事がない。
あの生真面目な姉が寝坊とは思えないが。
「レミー? ねぇレミーってば。まだ寝てるの? 遅刻したらカーティスがうるさいわよ~?」
あれ?
ホントに返事がない。
まさかあのしっかりしてるだけが取り柄の姉が本当に寝坊でもしたのだろうか?
玄関にはしっかり鍵が掛かっているから開かないし、誰かが侵入した痕跡はない。
「……姉さん? ねぇ……」
そういえば……以前にもこんなことがあった。
「まさか!」
レミーベールはむかし頭をぶつけて気絶してた事がある。
今回もその可能性がある!
過去の経験からそんな発想に行き着いてしまった。
慌てたグロリアはドアノブを握り、それを回した。
バキャンと変な音が鳴った。
「あ」
あきらかな破損音だったが、グロリアはとにかく先に玄関の扉を開く。
家の中へ入り、レミーベールが寝ていると思われる寝室へ向かった。
「姉さん!?」
しかし床には誰も倒れていない。
ベッドにも誰も寝ていない。
「あれ?」
本当に留守?
「あああああああああああああ!」
本当に留守だと発覚した瞬間にレミーベールの悲鳴のような叫びが玄関から聞こえてきた。
「あ、帰って来た」
グロリアは玄関の方へ戻ると、そこには顔をプンプンさせた姉レミーベールがいた。
姉はグロリアを見つけるなり威圧感全開で詰め寄ってきた。
「あんたまたドアノブ壊したわね! これから任務なのになんてことしてくれてんの!」
「ち、ちがっ! 違うのよ! アンタが返事しないからこんなことに!」
ゴンッ!
「痛い!」
問答無用でゲンコツされた。
グロリアの頭に見事なタンコブができた。
「留守だって見りゃ分かるでしょうが! なんで壊してまで入るかな!」
「な、殴らなくたっていいでしょうが! 心配しただけじゃないのよ! アンタむかし頭打って気絶してたじゃん!」
「いつの話してんのよまったく! ここ最近は頭なんて打ってないわよ!」
「あっそ! なによ! 人が心配すりゃ大きく出て! だいたいどこ行ってたのよこんな朝から!」
「別にどこでもいいでしょう? ワタシの勝手じゃない」
「あ~ハイハイそうですね~。朝帰りなんて男と遊んできた証拠だもんね~。陛下に告げ口しちゃおうかしら?」
この一言できっとレミーベールは慌て出すと思ったのだが、当の姉は慌てるどころか平然としていた。
「どうぞご自由に。ワタシと陛下はもう夫婦みたいなものだから告げてもナンてことないわよ~」
「え?」
夫婦みたいなものだから?
え、どういうこと?
「今……なんて?」
再確認するようにグロリアが言うと、レミーベールは一息吐いてから頬を少し赤くして口を開いた。
「昨日、陛下から告白されたの。この任務が終わったら結婚してほしいって」
「え!?」
こ、告白された!?
レミーが陛下に!?
陛下そんな度胸あったの!?
「それでその告白を受けたわ。だからもうワタシと陛下は夫婦みたいなものなの」
受けたんかい!
あっさりし過ぎでしょう!
普段は鈍感な癖にこんな時だけ判断速すぎでしょ!
「いや! いやいや! みたいなものじゃなくて夫婦じゃんそれ!」
「そうね」
ふふっと嬉しそうにレミーベールは肯定した。
どこか幸せそうな姉の笑顔になぜか安堵したグロリアは、ふと朝帰りだった今回の件が気になった。
「え……なに? で、いきなり朝帰りとか、まさか……いきなり子作りしちゃったの!?」
「率直に聞きすぎでしょあんた……」
「だ、だって……」
心なしか、なんだか昨日のレミーベールより大人っぽく見えるのだ。
なんか妙に肌もツヤツヤしてるし。
するとレミーベールはまたも頬を赤くして、どこか愛しそうにヘソの下を撫で始め、そして呟いた。
「……まぁ、陛下はずっと我慢してたみたいだから、ね?」
「え?」
レミーベールが何かを呟いたが、あまりに小声で聞き取れなかった。
「まぁ、陛下は……」しか聞こえなかった。
まぁ、陛下は……って何!?
スッゲェ気になる!
しかも何かを呟いてる時、ヘソの下を愛しそうに撫でていた。
あの仕草は何!?
いや、あんなところ普通は撫でないでしょ!
普通愛しそうに撫でないでしょ!
「まぁ、陛下は……なに?」
「……なんでもない。そろそろ行かないと遅刻しちゃうわ。行くわよ」
「ちょ、ちょっと待ってよ! 聞き取れなかったんだけど!」
「早く」
「ねぇ教えてよ!」
「しつこい」
ドアノブは壊れたまま、レミーベールとグロリアは自宅を後にした。