【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった 作:ミズノみすぎ
レミーベールを追い掛けながらグロリアは仲間たちの集まる城門前に来た。
そこには何十人の騎士仲間たちが馬や馬車などの準備に勤しんでいた。
装備の確認や荷物の確認。
長期間任務ゆえに確認事項は多く、準備する物も多い。
忙しい声や息遣いが聞こえる中、グロリアとレミーベールはカーティスを見つけて合流する。
そしてフォルス家三人は近くにいたグリータ団長へ挨拶を共にする。
「グリータ団長。父さんと母さんたちの事をどうかお願い致します」
カーティスが頭を下げて言うと、隣のレミーベールも習って頭を下げ「レィナさんとリイドの事でも大変なのに、ご迷惑を御掛けします」っと付け足した。
「それはいいから。お前たちも無事に帰って来るんだぞ? 何があっても生き残ることを優先するんだ。いいな?」
グリータ団長の貫禄ある声でそう言われ、妙な説得力を感じた。
「「はっ!」」っとカーティスとレミーベールは敬礼する。
するとそのグリータ団長の傍らから父ゼクードの姿が現れた。
まさか来ていたとは、とグロリアは内心で驚く。
「父さん! 来てくれたんですね!」っとカーティスが心底嬉しそうに言った。
「うん。
「え、なになに?」
グロリアが前に出てゼクードに寄る。
ゼクードは頬を掻きながら、思い出しを口にしてきく。
「えーと、カティアさんは『みんな無事に帰って来い。それだけだ』」
「はは。母さんらしいですね」っとカーティス。
「え~、ローエさんは『みんな生きて帰って来てください。それだけですわ』って」
「言ってること
「フランベールさんも『みんな無事に帰って来て。またみんなでご飯食べよう』って」
「みんな思ってることは同じなんだね」っとレミーベール。
「そうだね」っとゼクードが同意するとカーティスが腕を組んで頷いた。
「生きて帰る。それが一番大切なことだと騎士ならみんな知っているからな。母さんたち程の騎士なら答えが同じになるのも無理はない」
「その通りだ」っとグリータ団長まで同意してきた。
「まして相手が息子と娘なら贈る言葉はなおさら他にないさ」
レグナとリイドを子供に持つ親の心情。
グリータ団長がそう言うのならそうなのだろう。
グロリアが納得していると、当のグリータ団長はカーティスの方へ視線をやった。
「カーティス。今回の任務だが、目標のドラゴンを倒せそうになければ無理せず撤退を視野に入れておいてくれ。あまりに敵が強大なら【シエルグリス】にも応援を頼むつもりだ」
【シエルグリス】にも応援……ということは、ネオとカーティスという最高戦力を揃えてドラゴンを討伐するということか。
S級ドラゴンはいつだって未知数の能力を持っている。
今回も相当ヤバそうなドラゴンだから、覚悟して行かねばならない。
グロリアはそう気を引き締め直していると、カーティスは再び敬礼してグリータ団長に告げた。
「了解です。【カーティス隊】出撃します」
「頼んだぞ」
グリータ団長が話を締めると、カーティスはすぐさま部隊の準備確認へと戻った。
まだ出撃まで時間があるみたいだなと思っていると、別の影が城門前に現れた。
その影の主に気づいたグロリアは目を限界まで見開いてしまう。
「レミーさん!」
現れたのはアスレイ陛下だった。
昨日の今日……というより、先ほどレミーベールから聞いた話のせいで驚かざるを得ない。
「陛下!」
気づいたレミーベールも嬉しそうに彼のもとへ駆け寄った。
「間に合った……お見送りに来ました!」
「ありがとうございます。嬉しいです」
凄まじい近さで会話をするアスレイ陛下とレミーベールを見て、グロリアは思わず見入ってしまう。
この二人が昨日の夜、あんなことやこんなことをしていたのかと思うと……グロリアはつい頬を赤くしてしまった。
「どうかご無事で。レミーさん」
「はい。それはもちろんですが陛下」
「?」
「ワタシばかりではなく、今から発つみんなにも御言葉を上げてください。王様なんですから」
「あ……そ、そうでした!」
自分の視野の狭さを指摘されたアスレイ陛下は我に返った。
コホンと咳払いをして、カーティスやレグナたちの視線を集める。
「……みんな! 厳しい任務になると思うが、どうか一人も欠けずに無事生還してほしい。生き残ることを最優先にしてくれ。頼むぞ」
その陛下の声音はレミーベールに言われたから言った、という色ではなかった。
冗談ではない本気の声音であった。
そんなアスレイ陛下の御言葉に、カーティスを初めとしたレグナやアルベールたちも顔を引き締め「はっ!」っと敬礼した。
もちろんグロリアも。
アスレイ陛下の御言葉を頂いた仲間たちは士気を高めて準備を進め出した。
本気の言葉というのは案外と相手に伝わるものだなと、グロリアは得心する。
「では陛下。ワタシも行って参ります」
「どうか無事で。レミーさん」
そう言葉を交わしたレミーベールとアスレイ陛下はそっと口づけをした。
さすがにギョッとなったグロリアは辺りを見渡し、カーティスやレグナたちが気づいていないのを確認して安堵する。
しかし。
「はわわ! グロリアさん! レ、レミーさんが! レミーさんが陛下とキスしてますよ!」
オフィーリアが気づいていた。
しかし彼女も彼女なりに周りに気を使っているらしく、その声は小さかった。
「見りゃ分かるわよ。あんなあっさりキスするなんて、やっぱ本当に結婚するんだレミーと陛下……」
「え? 結婚?」
オフィーリアが首を傾げる。
グロリアは答えた。
「昨日、陛下に告白されたんだって」
「あ~……ついに」
思ったより驚かなかったオフィーリアが言うと、今度は背後からカーティスの怒声が。
「おいお前たち何やってる! 早く準備しろ!」
「あ~はいはいすぐ行くってば。……そういえばオフィーリア。あんた体調は大丈夫なの?」
「え? 隊長はカーティスさんですよ?」
「バカ! 身体の調子を聞いてんのよ! あんた最近調子悪そうだったじゃない」
「あ、それなら大丈夫ですよ~。よく食べてしっかり寝て、調子はバッチリです!」
「ならいいけど」
言いながら乗馬し、いよいよ出発した。
父ゼクード・グリータ団長・アスレイ陛下やガイス団長などに見送られながら城門を潜って【エルガンディ王国】の外へと駆け抜けていく。
遠くなっていく故郷を見つめ、これでしばらく帰れないのだなと再確認すると、どこか寂しい気持ちが沸いてきた。