【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第293話【滅びの王国】

 

 そこは遥かに遠くの森の奥。

 小鳥の囀さえずりが聞こえる心地良い場所……のはずだが、今は惨状と化していた。

 

 狩りから戻ってきたナイトは目を疑った。

 

 地面には割れた卵が二個。

 

 さらに奥には傷つき倒れたリイスが一匹。

 

『リイス!』

 

『ナイ……ト……』

 

『誰にやられた!?』

 

『ピンクの眼をした、青い毛並みの人間に……』

 

『人間!? 奴らこんなところまで!』

 

『でも……あの人間……私たちと同じ匂いがした……』

 

『なんだと!?』

 

『おかげで、不意打ちされたわ……ゴホッ! カハッ!』

 

『おいリイス! 大丈夫か! くそ! その人間はどこへ行ったんだ! 殺してやる!』

 

『人間は……東の方角…………ごめんなさいナイト……あなたと私の卵……一個しか守れなかった……』

 

 リイスは今まで庇っていたらしい卵を身体をどかしてナイトに見せた。

 その卵は見事に傷ひとつない。

 

 だが肝心のリイスの身体はボロボロだった。

 

 あちこちを食い破られ、羽も千切られ、翼膜も引き裂かれている。

 これではもう二度と飛べない。

 

 尻尾も先端が無くなっている。

 食い千切られた痕跡がある。

 

 あまりにも痛々しいリイスの姿だが、彼女は満身創痍の自分より卵の無事を見せてきた。

 ナイトにとってはリイスの方が大切だと言うのに。

 

『一個しかなんて! 俺はお前が無事ならそれでいい! 肝心なときに側にいなくてすまなかった! だから頼む! 死なないでくれリイス!』

 

『ダメ……もう、私は長くない…………この卵をお願い。あなたと私の……最後の卵だから……』

 

 食い千切られた箇所から血は止めどなく流れ出ている。

 リイスほどのドラゴンでも耐えられない傷の深さ。

 彼女が助からないのはナイトでも一目で分かっていたのだ。

 

 だが……それでもナイトはすがった。

 

『そんな……リイス! 俺を一人にしないでくれ! また一人になるのは嫌だ!』

 

『…………ごめんね……──』

 

 小さく儚く笑ったリイスは、そのまま目を閉じて動かなくなった。

 

『リイス? リイス!? そんな…………』

 

 胸の奥が抉られるという初めての感覚を覚えた。

 これは母が死んだとき感じた気持ちとは違った。

 

 痛い。

 

 かけがえのないものを失った。

 

 目の奥が熱くなり、涙が溢れた。

 

 泣いたのはこれが……二度目。

 

 悲しい気持ちが蔓延する心の中では、同時に殺意も滾っていた。

 

 ピンクの眼をした青い毛並みの人間は、東の方角へ逃げたと言っていた。

 

 殺してやる。

 

 絶対に殺してやるぞ!

 

 涙と共に殺意をも溢れさせるナイト。

 

 そんな彼の目前で、残った最後の卵が小さく蠢いた。

 

 

【第一拠点】で休みを挟み、長い旅路の果てに【第二拠点】へとたどり着いた。

 

 荒れ果てた【第二拠点】はすぐに拠点再興隊が回復に勤め、それを補佐するためレグナ隊やアルベール隊なども動き出す。

 

 その間のカーティス隊は一日の休みを取ってからすぐに新王国への調査へ乗り込む。

 

 メンバーはカーティスを隊長にグロリア・レミーベール・オフィーリアの四人。

 

 カーティスを先頭に進み、新王国の城壁がようやっと見えてきた。

 

 その城壁はどこもかしこも黒ずんでおり、それが例のドラゴンのブレスの威力を物語っていた。

 

「うわぁ……真っ黒……」

「ヤバいですねこれ……」

 

 グロリアとオフィーリアがゾッとしたように言う。

 

「これ、中に入れるの?」

 

 そう言ったのはレミーベールで、彼女は城門の前に立っていた。

 

 軽く四メートルはある巨大な城門だが、こちらも例に漏れず黒ずんでいた。

 

 木製なら良かったのだが、城門とは基本的に対ドラゴンの火力に耐えられるよう鉄で出来ている。

 

 この巨大な城門も鉄製であり、そう簡単には開かない重量になっているだろう。

 だいたいは城壁内部で操作して開くようになっている。

 

 こちら側から開けようと思うと普通は不可能なのだが。

 

「入れるさ。扉の専門家がウチにはいるだろう?」

 

 当然のようにカーティスが言うとレミーベールが「専門家?」っと首を傾げた。

 

「グロリア」

 

「なに?」

 

「この城門を開けてくれ」

 

「はぁ!?」

 

「できないのか?」

 

「できるわけないでしょ! こんなバカデカい城門を一人で! あんたアタシをなんだと思ってんのよ!」

 

 そうか……さすがにできないのか。

 

「……仕方ないな。みんな下がってろ」

 

 溜め息混じりにそう言うと、カーティスはロングブレードを抜刀した。

 

 グロリアたちが下がったのを確認したカーティスはフッと息を吸い込む。

 

 次の瞬間【気】を極限まで高めた銀の一閃が、城門に走った。

 鉄製の分厚い城門があっさり斬り倒され、新王国の侵入経路と化した。

 

「行くぞ」

 

 カチンとロングブレードを納刀したカーティスは城門を潜っていく。

 

「ちょ、ちょっと待ってよカーティス! これ斬っちゃって良かったの!?」

 

 グロリアの問いにカーティスは「問題ない」と即答した。

 

「使われた痕跡がなかった」

 

 そのカーティスの一言が、新王国の生き残りがいないことを暗に示していた。

 

「それって、生き残りは……いないってことですか?」

 

「分からん。別の入り口があるのかもしれん。とにかく油断はするなよ」

 

 カーティスが念を押すようにオフィーリアに言うと、また先頭を歩き出す。

 四人はそのまま燃え尽きて滅んだ新王国へ足を踏み入れた。

 

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