【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった 作:ミズノみすぎ
狩りという極限状態を何度も経験すると、騎士はみな超感覚ともいうべきプレッシャーを感じるようになる。
カーティスの身体の奥からザワつき、警告を発している。
あの少女は危険だ、と。
人間相手にこんな感覚を覚えたのは初めてだ。
バカな……
あんな少女からなんだこの覇気は?
有り得ない。
この覇気はオレより上……下手をすれば
しかもこの覇気……ドラゴンに感じるそれと似ている。
オレの目はおかしくなってしまったのか?
この家の奥で無防備に眠っているあの少女はどう見ても人間だ。ドラゴンじゃない。
だが、このプレッシャーはどう説明する?
「え、女の子!?」
「生存者?」
レミーベールとグロリアがカーティスの脇から窓を覗き、中で眠る少女を見つけ言った。
その二人の言葉にオフィーリアも窓を覗く。
「わ、本当ですね! こんなところで一人で?」
「寝てるみたいだけど、どうするのカーティス?」
レミーベールに聞かれ、答えようとしたその時。
一陣の風がレミーベールに向かって吹き荒れた。
その風の正体は人間で、疾風怒濤の如くロングブレードの切っ先がレミーベールの首を狙っていた。
それに対するレミーベールの反応はあまりにも遅すぎた。
いや、相手があまりにも速すぎた。
奇襲を掛けてきたその人間の攻撃。
それにまともに反応できたのはカーティスだけだった。
寸でのところでレミーベールの首を狙った刃をカーティスは弾き飛ばした。
奇襲してきた相手は自分の攻撃が弾かれたことに驚き、宙返りをしてカーティスから距離を取った。
「な、なにあいつ!」
不意を突かれ腰を抜かしそうになったレミーベールが言った。
当のカーティスは剣を構えたまま、現れたその奇襲相手を見やる。
顔を仮面で隠した黒い鎧の騎士だ。
髪は白髪と銀髪が混じっており、それは相手が老齢であることを示している。
身長はカーティスと同じほどで高い。
身体付きからみて男性だろう。
こいつがレグナ達が言っていた例の騎士か。
味方どころか奇襲とはな。
あと少し遅かったらレミーベールの首が貫かれていた。
この仮面の騎士は敵だ。協力どころじゃない。
「……今のを弾くとはな」
仮面の騎士がやや感心したようにカーティスを見る。
「きさま! いったいなんの真似だ!」
カーティスが言うも相手は答えず、次の瞬間には目前から消えていた。
逃げた? っと思ったのは一瞬。
仮面の騎士は刹那にカーティスの懐へ!
「ちっ!」
仮面の騎士は速かった。
ギリギリ反応したカーティスはロングブレードで攻撃を受け止め、そのまま鍔迫り合いになった。
バチンと火花がスパークする。
グロリアやレミーベールたちも武器を構えるが、あまりに凄まじいぶつかり合いで割り込めない。
しかしそれが正解だ。
下手に首を突っ込めば死ぬ。
この仮面の騎士はタダ者じゃない。
オレが抑えねばならない相手だ。
「彼女をやらせはせん」
「なんだと?」
仮面の騎士が告げた『彼女』とは、あの家の奥で眠る少女の事か?
そうとしか思えないが『やらせはせん』とはどういう事か?
なぜオレたちが彼女を殺さねばならない?
「勘違いするな! オレたちはあの子に危害は加えない! 剣を納めろ!」
「無理な相談だ。彼女の正体を知れば、お前たちは必ず彼女を殺す」
「どういうことだ?」
「悪いが説明するつもりはない。理解してもらう気もない。ただ大人しく……ここで死ね!」
「きさま!」
言葉を切ると同時に互いに間合いを空けた。
カーティスと仮面騎士が大地を同時に蹴ると、どちらの身体もぶれて残像が生まれる。
二人の斬撃はまさに風の如し。
二人の踏み込みは地面を穿ち、激しい剣戟は余波を生み、その余波は近くの建築物を破砕した。
グロリアたちの近くでもそれが起き、彼女たちは「きゃあっ!」っと悲鳴を上げる。
それを見たカーティスはグロリアたちから離れねばと仮面騎士に猛攻で押す。
ここで戦っていたらグロリアたちが少女を保護できない。
猛攻に転じるカーティスは剣を振り下ろすが、仮面騎士は歩をズラすだけという最小動作でそれを回避。
「なに!」っとカーティスが驚愕。
避けざまに仮面騎士の烈風めいた薙ぎがカーティスに飛来した。
それを受けては弾き、互いに突きを放った。
二つのロングブレードが触れ合い、斜めに逸れた。
「やるな」っと仮面騎士もカーティスの反応に驚く。
そこから何十と重なる剣の乱舞になった。
仮面騎士がその乱舞の内に必殺を狙った一閃を混じえ、カーティスの首を狙った。
カーティスは避ける。
が、タイミングがズレた。
カーティスが思い描く仮面騎士の突きよりもわずかに遅く、コンマ1秒遅れて届いた刃は、カーティスの肩当てを掠めて裂いた。
「くっ!」
こいつ……強い!
何者なんだ!?
この太刀筋も、どこかオレのと似ている?
「良い腕だ。だがお前さえ倒せば、残りの三人は容易いだろう」
残りの三人……グロリアたちの事か。
確かにこいつが相手ではグロリアたちは三人掛かりでも勝てないだろう。
オレがこいつを倒すしかない。
「やらせると思うか!」
「ふん……ならば守ってみせろ!」