【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった 作:ミズノみすぎ
二つの剣閃が瞬きより速く交差している。
それは常人よりも優れた反応を持つSS級騎士のグロリアたちでも刹那の世界に見えていた。
「なんなのアイツ……カーティスと互角にやり合うなんて……」
思わぬ強敵にグロリアはそう呟かずにはいられなかった。
カーティスの剣を受け止められる人間なんて、知ってるだけでも父ゼクードかネオしかいない。
この仮面騎士は、グロリアが知っている四人目の強者ということになる。
とんでもない化け物騎士が現れてしまった。
カーティスの援護に回りたいが、あんな速い世界に飛び込んだら一瞬で首が飛ぶ。
「ど、どうしましょう……なんとかして加勢しないと」
大鎌を握りながらオフィーリアが言うと、隣のレミーベールが彼女を片手で制した。
「ダメよ。ワタシたちじゃ足を引っ張るだけだわ。それよりカーティスが引き付けてる間にあの子を保護しましょう」
「そうね」とグロリアが即座に同意し、扉のドアノブを握った。
「あれ? 鍵掛かってる」
「じゃあ壁を壊して──」
「ふんっ!」
バキャッ!
レミーベールが言う前にグロリアがドアノブを捻って破壊した。
「よし。開いた」
グロリアは中へと入っていく。
当のレミーベールは大剣の柄を握ったままグロリアを見送る形になっていた。
それを真横で見ていたオフィーリアは苦笑する。
「いやぁ~こういう時は頼りになりますねグロリアさんって」
「……そうね」
※
グロリアたちが大きな建物へと侵入したのを確認した。
どうやら中で眠っている少女を保護するつもりだろう。
それでいい。賢明だ。
この仮面騎士は速い。
グロリアたちでは手も足も出ないのは明白だ。
激しい剣舞のぶつかり合いを果たすこと数秒、仮面騎士もグロリアたちが建物に侵入したことには気づいているはずなのに、妙に落ち着いている。
「いいのか? あの小娘ども……全員死ぬぞ?」
「なに?」
どちらともなく下がり、間合いをとった。
互いに構えは解かないが、話は続ける。
「彼女は気性が荒い。迂闊に起こせば機嫌を損ねるだろう」
「あんな子供がなんだって言うんだ」
「お前ほどの騎士が気づかぬはずがない。彼女の圧倒的な覇気を感じなかったとは言わせんぞ」
「!」
「彼女を刺激すればここはまた炎の海と化すだろうな」
「なんだと!?」
炎の海?
また?
どういう事だ?
まるであの少女が、この王国を焼き払った張本人みたいな言い草だ。
「あの少女がドラゴンセレンとでも言うつもりか?」
「ドラゴン……セレン?」
「オレたちはそう呼んでいる。そう呼ぶ原因になったのはキサマのせいだがな。キサマがここを焼き払ったドラゴンの事をセレンと呼んでいたと、仲間たちから聞いている」
「……」
「オレにとってセレンとは祖母の名でもある。その名をドラゴンに付けるなど! 聞いていて不愉快だ!」
「お前の事情など知るか! 何がドラゴンセレンだ! セレンは俺の妻の名だ! その名にドラゴンを付け足しやがって! 不愉快なのは俺の方だ!!」
カーティスが吼え、仮面騎士が吼え、互いに眼にも止まらぬ速さでロングブレードを振り抜いた。
「【真・竜斬り・真紅の舞】」
「【極・竜斬り・竜獄斬】!」
互いに殺す気で放った大技のぶつかり合い。
一瞬百連の斬撃が縦と横とで展開され、対して無数の斬撃が嵐となって吹き荒れ迎え撃つ。
そんな最中、カーティスは仮面騎士が使った技に驚愕していた。
今のは……竜斬り!?
しかも竜獄斬だと!?
あの技は父さんが使っていた大技だ。
バカな!
なぜこの男がこの技を使えるんだ!?
「キサマ! 今の技は!」
「小僧! 今の技は!」
互いの言葉が重なってしまい、どちらともなく言葉を失ってしまう。
※
グロリアは建物の中へと入り、中央のベッドで眠る少女の元へ走った。
中はややホコリっぽく、割れたテーブルや壊れたイス。焼け落ちた天井の破片などが床に転がっている。
とても人が住む場所には見えない。
そう思いながらグロリアは先行して少女の元へ。
レミーベールとオフィーリアも入ってきて、グロリアに続いた。
グロリアは眠る少女を見た。
紫色の長い髪と黒衣を身に纏っている。
気持ち良さそうにスースー寝ている彼女の身体をグロリアは見回した。
「外傷は見当たらないわね。ただ本当に寝てるだけみたい」
「なら良かったわ。早く起こしてここを離れましょう」っとレミーベール。
「起こすより担いだ方が早くない? ここはアタシに任せて」
言って眠る少女に手を伸ばすと、少女は鼻をクンクンとさせてから目をパッチリと開いた。
少女の美しい桃色の目にグロリアが映った。
「あ、起きた」
グロリアは伸ばしていた手を引っ込めようとしたが、少女はいきなりその手を掴んで引き寄せてきた
「わっ! ちょっ!?」
「ゼクード!」
少女はそう叫び、グロリアをそのまま抱き締めてきた。