【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった 作:ミズノみすぎ
祖父フォレッドと共に街中を駆けた。
奇跡的に生きていた祖父と並走している今が信じられなかった。
なんとも言えない不思議な心地を感じながら、またさらに驚く出来事が起こった。
グロリアたちだ。
セレンに襲われているのかと思ったら、彼女はグロリアと手を繋いで歩いていた。
「──いったいこれは……どういう事だ?」
「いやいやそれアタシたちのセリフだし」
カーティスの呟きに対してグロリアが怪訝な顔で答えた。
「なんでいきなり仲良くなってんのよそっちが」
「いや仲良く、と言うか……」
オレたちの祖父なんだ、と伝えようとしたが。
「これは驚いた……セレン!」
当のフォレッドが前に出た。
「またあなたなの? いい加減しつこいわよ」
セレンと呼ばれた少女が明らかな敵意を持ってフォレッドを睨んだ。
睨まれたフォレッドはハッとなってその場に留まる。
「え、知り合いなの?」っとグロリア。
「私をずっと追い掛けてくる変態」
グロリアの後ろに隠れながらセレンが言う。
するとグロリア・レミーベール・オフィーリアの視線がフォレッドに集中した。
最悪なイメージを持たれたであろうフォレッドは、そんな女性陣の視線など構いもせずにセレンに問う。
「どうしたんだ今日は!? お前の身に何が起こった!? セレン!」
「近づかないで! 殺すわよ!」
それはセレンが敵意を殺意に変えた瞬間だった。
本気と分かる怒声を張り上げたセレンに、カーティスだけでなく周りのグロリアたちも驚いた。
「あなたゼクードの匂いがしないから不快なの!」
──?
今この子……ゼクードって言わなかったか?
「匂い、だと!?」
「あなた私の家族じゃない! 次近づいたら……食い殺す!」
さすがのカーティスもゾッとした。
幼い外見の少女にはあまりに不相応な殺気。
『彼女の気性は荒い』
今になってフォレッドが言っていた事を思い出した。
荒いなんてものじゃない。
今にも人を殺しそうな威圧感さえある。
いやそれよりも、
なぜ彼女が父ゼクードの名を?
……フォレッドはセレンを嫁の名だと言っていた。
ここにいるこのセレンは、まさか……そのセレンだと言うのか?
馬鹿な……いくらなんでも若すぎる!
決めつけるのは早計だが、この状況だとそれ以外は考えにくい。
『ゼクードの匂い』だの『私の家族』だのと言っている以上、疑う方が難しい。
くそ!
頭の整理が追いつかない。
ここはフォレッドに詳しく話を聞くしかないだろう。
「く、食い殺すって……なにドラゴンみたいなこと言ってんのよあんた!」
グロリアが叱るようにセレンに言う。
しかしセレンは先程の殺気を嘘のように欠き消して笑顔を見せた。
「ん? グロリアは食べないよ? 家族だから守ってあげる。あと……そこのあなたも」
グロリアに次いで言われたのはカーティス本人だった。
セレンは鼻をクンクンさせながらカーティスに近づいてくる。
思わず後退りしそうになったが。
「あなたからもゼクードの匂いがする。私の家族ね」
「は…………はぁ……」
優しさに満ちたその笑顔に殺気は微塵も残ってなかった。
何なんだ彼女は?
「あなた名前はゼクード?」
「いえ、カーティスです」
「そっか……ゼクードじゃないんだ……」
小さく笑うセレンは、それでもどこか寂しげな顔をして俯いてしまった。
ゼクードがいないと知って、心から悲しんでいるみたいだ。
やはり彼女はオレたちの祖母セレン・フォルスなのだろうか?
だとしたら何故こんな幼い姿で現れたのだろうか?
フォレッドに対して敵対している理由も知りたい。
原因が匂いだけとはどうしても思えないからだ。
やはりフォレッドに詳しく話を聞く他ない。
安全な場所を見つけてキャンプを設置し、ゆっくり話をする必要がある。
「ねぇカーティス」
隣に寄り添ってきたのは姉のレミーベールだった。
「あの仮面騎士とは何があったの?」
こっちとしてはセレンの事を聞きたかったが、おそらく望んでいる回答は得られないだろう。
まずこの状況を整理する必要がある。
カーティスはそっとレミーベールの耳元で囁いた。
「レミー……たぶん混乱すると思うが聞いてくれ。あの仮面騎士はオレたちの祖父フォレッド・フォルスだ」
「……ぇ、……え!?」
「生きていた。オレたちのお爺ちゃんは生きていたんだ」
「あの人が……ぉ、お爺ちゃん!?」
「そうだ。今はそれだけ分かってればいい。とにかく彼はもう味方だ。害はない」
ここでウダウダ話してるより、もっと落ち着ける場所で話すのが最善だ。
そう思ってカーティスはレミーベールへの説明を最小限にして打ち切った。
「嘘……どうなってるの?」
さすがのレミーベールも状況を飲み込めなくなってきていた。
やはりダメだ。
いったんみんなで落ち着いて話すしかない。
一呼吸入れねば。
「落ち着けレミー。もうみんな混乱状態だ。いったん情報を整理するために、どこか安全な場所を探そう。話はそれからだ」
「ぇ……ええ。じゃあ、あの二人を連れて拠点に戻る?」
「いや……」
カーティスはフォレッドを威嚇するセレンを見つめた。
「……父さんの匂いがしない相手にはやたら攻撃的だ。彼女を拠点に連れていくのはやめた方がいいだろう。何をするか分かったもんじゃない」
「じゃあ……」
「ああ。今日はこの街中でキャンプを設置し休息を取る。そして詳しい話をお爺ちゃんに聞いてみよう」
幸いここはドラゴンの気配がない。
もしかしたらセレンの覇気を恐れて近づいてこないのかもしれない。