【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった 作:ミズノみすぎ
オレたちは拠点へは帰還せず、このままこの廃墟と化した街中でキャンプを設置することにした。
場所はセレンが眠っていた大きな建物の前。
どのみちレグナたちには3日間の探索期間を伝えてある。
まだ心配されることはないだろう。
ちょうど日が落ちてきた頃に焚き火を起こし、みんなで暖を取ることにした。
「セレンは眠ったか?」
フォレッドに聞かれたカーティスは小さく頷く。
当のセレンはすでに眠たかったらしいのですぐに寝かせた。
どうやらグロリアたちに途中で起こされ寝不足だったらしい。
カーティスはオフィーリアの隣に座り暖を取る。
「しかし驚いたな。セレンがあんなに落ち着いているのは久しぶりだ」
「普段はああではないんですか?」
カーティスの問いにフォレッドは「ああ」と返し続けた。
「先ほど見たように、俺には敵対心を剥き出しでな。どうやらもう完全に俺の事は忘れているようだ」
「どういうことです?」
カーティスが聞き返すが「待って」とレミーベールが口を挟んできた。
「その前にカーティス。ワタシたちにその人の事を説明してよ」
その人の事……とはフォレッドか。
確かにまだ詳しい説明をレミーベールたちにはしてなかった。
「彼は──」
「いい。俺が言おう」
フォレッドはレミーベールたちの顔を見回した。
「俺の名はフォレッド・フォルス。君たちの父ゼクードの親だ」
「え、うそ!?」
「ホントですかそれ!?」
何も知らなかったグロリアとオフィーリアが驚愕した。
知っているレミーベールはまだ複雑そうな顔をしている。
「本当だ。だが………………俺には親を名乗る資格はない」
親を名乗る資格がない、か。
それを言うならオレたちの両親も似たようなものだ。
だが双方、帰りたくても帰れなかった理由がある。
子供の頃は帰ってこなかった両親が嫌いだったが、自分で騎士をやるようになってそれが和らいだ。
騎士の仕事は常に死と隣り合わせ。
何が起きても不思議ではない。
仲間の死もたくさん見てきた。
経験に勝るものはないと言うが、それは本当である。
騎士の仕事での経験がオレを……いやオレたちを強くしてくれたんだと思う。
父ゼクードや母親たちを許せるほどには。
「生きていたんだから、いいじゃないですか」
思わずそう口にしたカーティスに、フォレッドは驚き、グロリアたちは意外そうな視線を向けた。
「こうして生きて会えたんです。親を名乗る資格とかそういうのは……父さんたちもきっと話せば分かってくれるはずです」
「……ゼクードか。話しても殴られそうで怖いな」
「まぁ、そこは甘んじて受け止めましょう」
小さく笑うカーティスに、フォレッドも苦笑で返した。
「……そうか。ゼクードは生きていて、君たちはゼクードの子供か。凄いな本当に。今が信じられん。夢を見ている気分だ」
「そうでしょうね。その気持ちはオレにも分かります。……で、改めて自己紹介します。オレはカーティス・フォルスです」
「ワタシはレミーベール・フォルスです。よろしくお願いします」
「アタシはグロリア・フォルス。よろしく」
「わたしはオフィーリア・フォルスです。よろしくお願いいたしますお爺様」
オフィーリアが言い終えると、フォレッドが首を傾げた。
「ん? みんなフォルスなのか? さっき二人って……」
「あ、すみません説明不足でした。彼女オフィーリアはオレの妻です。だから家名が同じなんですよ」
「なるほど。そういうことか。ということはその二人が残りの孫というわけか」
納得したフォレッドはレミーベールたちの顔をまた見回す。
「その……なんだ…………何から話せばいいか……」
三人の孫を前にして緊張しているのか、どこかギコちないフォレッド。
そこへ切り込んできたのはレミーベールだった。
「あの……どうしてお父さんを残してエルガンディへ帰らなかったんですか?」
姉はオレと同じ事をフォレッドに質問した。
やはりみんな気になるところは同じということか。
フォレッドはオレにした説明と同じ事をレミーベールたちに聞かせた。
父ゼクードと同じく記憶喪失だったことを。
リングレイスに何年もコキ使われたこと。
記憶を取り戻し、一度はエルガンディへ帰ったことも。
「──そうだったんですか。お爺様も記憶を……」
レミーベールが言い、グロリアも小さく息を吐いた。
「お父さんといいお爺ちゃんといい、よく生きてたよね」
確かにな、とカーティスは内心でグロリアに同意する。
雷をくらって生きているだけでも奇跡だ。
普通なら即死だろう。
「【ブラックホール】のタイミングを誤ってしまってな。攻撃と防御を同時に行うのはやはり無理があった」
苦笑するフォレッドにグロリアが口を開く。
「お爺ちゃんも【闇属性】なんだ。お父さんと同じなのね」
「うむ……ところで心配なんだが、そこのオフィーリアは大丈夫なのか?」
「え?」
カーティスは隣のオフィーリアを見た。
今にも倒れそうなほど身体をフラフラさせている。
ひどい眠気に襲われているようだ。
「オフィーリア? 大丈夫か?」
「は…………はい。ちょっと、眠気が来て……急に……」
オフィーリア……最近こんなことが多くなってきたな。
何かの病の前兆ではないだろうか?
心配である。
「オレの膝で寝るか?」
「はい……」
あっさり承諾してオフィーリアは横になった。
カーティスの膝枕で一瞬にして眠ってしまった。
よほど眠気がキツかったようである。
これでは任務に支障が出るな。
明日オフィーリアだけ拠点へ帰そうか。
「ずいぶんと疲れていたようだな」
フォレッドが言うとレミーベールが。
「いえ、彼女最近こんな調子が多いんです。いきなり眠気に襲われたり、妙な吐き気に襲われたりとか」
「それってさぁ……もしかして妊娠してんじゃないの?」
グロリアのさりげない一言がカーティスとレミーベールをハッとさせた。
「オフィーリアが……妊娠!?」
「言われてみると確かに! これ妊娠の初期症状だわ! なんで気づかなかったのワタシ!?」
レミーベールが頭を抱え自分に呆れる。
妊娠させた張本人のカーティスは慌てた。
「ちょ、えと、ど、どうすればいいんだ!?」
「いや、なんでアンタが慌ててんのよ……」