【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第300話【初期症状?】

 オレたちは拠点へは帰還せず、このままこの廃墟と化した街中でキャンプを設置することにした。

 場所はセレンが眠っていた大きな建物の前。

 

 どのみちレグナたちには3日間の探索期間を伝えてある。

 まだ心配されることはないだろう。

 

 ちょうど日が落ちてきた頃に焚き火を起こし、みんなで暖を取ることにした。

 

「セレンは眠ったか?」

 

 フォレッドに聞かれたカーティスは小さく頷く。

 当のセレンはすでに眠たかったらしいのですぐに寝かせた。

 

 どうやらグロリアたちに途中で起こされ寝不足だったらしい。

 カーティスはオフィーリアの隣に座り暖を取る。

 

「しかし驚いたな。セレンがあんなに落ち着いているのは久しぶりだ」

 

「普段はああではないんですか?」

 

 カーティスの問いにフォレッドは「ああ」と返し続けた。

 

「先ほど見たように、俺には敵対心を剥き出しでな。どうやらもう完全に俺の事は忘れているようだ」

 

「どういうことです?」

 

 カーティスが聞き返すが「待って」とレミーベールが口を挟んできた。

 

「その前にカーティス。ワタシたちにその人の事を説明してよ」

 

 その人の事……とはフォレッドか。

 確かにまだ詳しい説明をレミーベールたちにはしてなかった。

 

「彼は──」

「いい。俺が言おう」

 

 フォレッドはレミーベールたちの顔を見回した。

 

「俺の名はフォレッド・フォルス。君たちの父ゼクードの親だ」

 

「え、うそ!?」

「ホントですかそれ!?」

 

 何も知らなかったグロリアとオフィーリアが驚愕した。

 知っているレミーベールはまだ複雑そうな顔をしている。

 

「本当だ。だが………………俺には親を名乗る資格はない」

 

 親を名乗る資格がない、か。

 それを言うならオレたちの両親も似たようなものだ。

 

 だが双方、帰りたくても帰れなかった理由がある。

 子供の頃は帰ってこなかった両親が嫌いだったが、自分で騎士をやるようになってそれが和らいだ。

 

 騎士の仕事は常に死と隣り合わせ。

 何が起きても不思議ではない。

 仲間の死もたくさん見てきた。

 

 経験に勝るものはないと言うが、それは本当である。

 騎士の仕事での経験がオレを……いやオレたちを強くしてくれたんだと思う。

 父ゼクードや母親たちを許せるほどには。

 

「生きていたんだから、いいじゃないですか」

 

 思わずそう口にしたカーティスに、フォレッドは驚き、グロリアたちは意外そうな視線を向けた。

 

「こうして生きて会えたんです。親を名乗る資格とかそういうのは……父さんたちもきっと話せば分かってくれるはずです」

 

「……ゼクードか。話しても殴られそうで怖いな」

 

「まぁ、そこは甘んじて受け止めましょう」

 

 小さく笑うカーティスに、フォレッドも苦笑で返した。

 

「……そうか。ゼクードは生きていて、君たちはゼクードの子供か。凄いな本当に。今が信じられん。夢を見ている気分だ」

 

「そうでしょうね。その気持ちはオレにも分かります。……で、改めて自己紹介します。オレはカーティス・フォルスです」

 

「ワタシはレミーベール・フォルスです。よろしくお願いします」

 

「アタシはグロリア・フォルス。よろしく」

 

「わたしはオフィーリア・フォルスです。よろしくお願いいたしますお爺様」

 

 オフィーリアが言い終えると、フォレッドが首を傾げた。

 

「ん? みんなフォルスなのか? さっき二人って……」

 

「あ、すみません説明不足でした。彼女オフィーリアはオレの妻です。だから家名が同じなんですよ」

 

「なるほど。そういうことか。ということはその二人が残りの孫というわけか」

 

 納得したフォレッドはレミーベールたちの顔をまた見回す。

 

「その……なんだ…………何から話せばいいか……」

 

 三人の孫を前にして緊張しているのか、どこかギコちないフォレッド。

 そこへ切り込んできたのはレミーベールだった。

 

「あの……どうしてお父さんを残してエルガンディへ帰らなかったんですか?」

 

 姉はオレと同じ事をフォレッドに質問した。

 やはりみんな気になるところは同じということか。

 

 フォレッドはオレにした説明と同じ事をレミーベールたちに聞かせた。

 父ゼクードと同じく記憶喪失だったことを。

 リングレイスに何年もコキ使われたこと。

 記憶を取り戻し、一度はエルガンディへ帰ったことも。

 

「──そうだったんですか。お爺様も記憶を……」

 

 レミーベールが言い、グロリアも小さく息を吐いた。

 

「お父さんといいお爺ちゃんといい、よく生きてたよね」

 

  確かにな、とカーティスは内心でグロリアに同意する。

 雷をくらって生きているだけでも奇跡だ。

 普通なら即死だろう。

 

「【ブラックホール】のタイミングを誤ってしまってな。攻撃と防御を同時に行うのはやはり無理があった」

 

 苦笑するフォレッドにグロリアが口を開く。

 

「お爺ちゃんも【闇属性】なんだ。お父さんと同じなのね」

 

「うむ……ところで心配なんだが、そこのオフィーリアは大丈夫なのか?」

 

「え?」

 

 カーティスは隣のオフィーリアを見た。

 今にも倒れそうなほど身体をフラフラさせている。

 ひどい眠気に襲われているようだ。

 

「オフィーリア? 大丈夫か?」

 

「は…………はい。ちょっと、眠気が来て……急に……」

 

 オフィーリア……最近こんなことが多くなってきたな。

 何かの病の前兆ではないだろうか?

 心配である。

 

「オレの膝で寝るか?」

 

「はい……」

 

 あっさり承諾してオフィーリアは横になった。

 カーティスの膝枕で一瞬にして眠ってしまった。

 よほど眠気がキツかったようである。

 

 これでは任務に支障が出るな。

 明日オフィーリアだけ拠点へ帰そうか。

 

「ずいぶんと疲れていたようだな」

 

 フォレッドが言うとレミーベールが。

 

「いえ、彼女最近こんな調子が多いんです。いきなり眠気に襲われたり、妙な吐き気に襲われたりとか」

 

「それってさぁ……もしかして妊娠してんじゃないの?」

 

 グロリアのさりげない一言がカーティスとレミーベールをハッとさせた。

 

「オフィーリアが……妊娠!?」

 

「言われてみると確かに! これ妊娠の初期症状だわ! なんで気づかなかったのワタシ!?」

 

 レミーベールが頭を抱え自分に呆れる。

 妊娠させた張本人のカーティスは慌てた。

 

「ちょ、えと、ど、どうすればいいんだ!?」

 

「いや、なんでアンタが慌ててんのよ……」 

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