【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった 作:ミズノみすぎ
カーティスは祖父フォレッドと共闘し、人型ドラゴンを追い詰めていた。
先陣を切って駆けるのは他でもなくカーティス。
姉グロリアをやられた怒りに燃え、一切のブレーキを知らずに突き進む。
しかしカーティスは決して怒りに飲まれてはいなかった。
あくまで冷静に燃え上がり、目前の人型ドラゴンを攻め立てる。
グロリアの仇を取るという絶対的な殺意は【気】を極限まで引き出し【真・竜斬り】の切れ味を鋭利にした。
薙ぎ払われたカーティスの一閃は人型ドラゴンに避けられ、それでも近くの建物を一刀両断した。
半壊していた建物が倒壊し、土煙が舞う。
その土煙を目眩ましに使い、人型ドラゴンの懐へ飛び込んだカーティスはロングブレードの連続剣!
だが人型ドラゴンもその強靭な爪で器用にカーティスの斬撃を捌いてくる。
しかもその爪の攻撃には【真・竜斬り】にも似た銀の光が纏われている。
当たれば鎧さえも簡単に切断されそうだ。
ドラゴンの癖に芸達者な奴だ。
距離を詰めれば爪や蹴りでの猛襲。
距離を取れば蒼い炎を超高速で飛ばしてくる。
それも凄まじい精度で。
この強さ……この形状……まさか父さんの目を奪い、記憶も奪った【人型ドラゴン】とはこいつの事なのか?
そして今回はグロリアが。
ギリッと歯を食い縛るカーティスは地面を割るほどの踏み込みを見せた。
刹那に肉薄するカーティスと人型ドラゴンだが、先に攻撃したのは人型ドラゴンだった。
突っ込んでくるカーティスの顔面を狙った爪の一撃。それは常人では軌道さえ見ることのできない速度。
それをカーティスは先読みで避け、伸び切った敵の腕を切り上げで切断する!
片腕が吹っ飛んだ人型ドラゴンは怯み、その隙に背中からフォレッドのロングブレードが突き刺された。
ガフッと血を吐いた人型ドラゴンは、腹から突き出たロングブレードの切っ先を睨む。
睨んだ瞬間、フォレッドは腕に力を込めてロングブレードを腹から脳天へと切り上げ一刀両断。
人型ドラゴンは上半身が真っ二つに裂け、左右にだらりと垂れた。
何度かフラフラした人型ドラゴンは、ついに力尽きて地面に倒れた。
裂けた上半身から大量の血を流しながら、身体を痙攣させ、そして動かなくなった。
「終わったか。しかし……」
フォレッドはロングブレードにこびりついた血を払い、虚しそうに鞘に納める。
カーティスもまた虚しさに襲われた一人だった。
こいつを倒せても、もうグロリアは助からない。
ハッキリ見てしまったんだ。
グロリアが腹部を貫かれる様を。
あれではどうあっても助からない。
涙が出てきた。
大切な人間を失う恐怖。
こうなる予感があったからカーティスはグロリアとレミーベールが騎士になることを反対していたんだ。
ずっと生きて、女として幸せになってほしかったのに……
グロリア……
これから戻るのが怖い。
グロリアの死に様を見なければいけない。
おそらくもうグロリアは死んでいるだろう。
最後の言葉も何もなく。
「グロリア……」
うつむき、カーティスは大切な姉の名を呟いた。
子供のころ、泣き虫だったカーティスをいつもいじめっ子から守ってくれたのはグロリアだった。
あの時から腕っぷしだけは強かった。
いつか逆に守れるようになりたいと……だから強くなったのに。
肝心の姉を守れなかった。
くそ……くそ……っ!
「……敵は仕留めた。戻ろうカーティス」
静かにフォレッドに言われ、カーティスは小さく「はい」と答えた。
「フォレッド!」
遠くから聞こえてきたのは祖母セレンの声。
カーティスとフォレッドは彼女が走ってこちらに来るのを確認した。
「良かった! 二人とも無事なのね!」
まだあの優しい祖母セレンの人格だった。
必死に手を振って走ってくる彼女にフォレッドは口を開く。
「セレン! グ、グロリアは……」
「グロリアなら大丈夫よ。生きてるわ」
「!?」
カーティスとフォレッドの目が驚愕に染まった。
あの傷で助かったのか!?
「ほ、本当ですか!?」
カーティスは近くまできたセレンの両肩を掴んだ。
一気に詰め寄られて驚いたセレンだが、すぐに優しく微笑んで孫のカーティスに頷く。
「うん。あとで詳しく説明するけど、グロリアはもう大丈夫だから」
「良かった……」
安堵した次の瞬間!
空を覆う黒雲から雷が轟き、それはセレンとカーティス目掛けて落ちてきた。
「っ! カーティス危ない!」
セレンはカーティスを突き飛ばし、そして雷に撃たれた。