【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった 作:ミズノみすぎ
雷がセレンを飲み込み、その周辺は爆発的な轟音と衝撃波が吹き荒れた。
辺りの建物や瓦礫をぶっ飛ばす衝撃波は、そのままカーティスに襲い掛かり、さらに吹き飛ばされ地面を転がる結果となった。
おまけに雷の轟音で耳の鼓膜がやられ、一気に音が遠くこもった。
フォレッドはそれをなんとか踏ん張り、耳を手で保護してそれらを凌いでいた。
雷が止み、吹き荒れた衝撃波も収まったのを見て祖父フォレッドがすぐに倒れたセレンの元へ走った。
「セレエエエエエエエエン!」
叫ぶフォレッドは白眼を向いているセレンを抱き起こす。
カーティスもなんとか立ち上がり、すぐに祖母セレンの元へ走ろうとした。
しかしそこで真っ二つになって倒れていた人型ドラゴンが起き上がってきた。
「な!」
カーティスは目を疑った。
腹から脳天まで切り裂かれているのに、立ち上がってきた。
「こいつ! まだ!」
カーティスは抜刀して構える。
人型ドラゴンはみるみる再生し、ついには真っ二つにされていた身体を元に戻した。
果たして腹の奥から絞り出すような咆哮。
次いでヤツの爪が異常なまでに発達し、その長さはナイフに匹敵する。
それには凄まじい執念と殺意と怒りを感じる。
まるでそれらの力で傷を無理矢理治したようなデタラメさだ。
人型ドラゴンのあまりの猛りにカーティスは思わず一歩引いてしまった。
当のカーティスはそのこと事態に驚愕する。
オレが退いた!?
無意識にだと!?
馬鹿な……恐怖してるとでも言うのか?
このドラゴンに?
その答えが出る間もなく、人型ドラゴンの猛攻がカーティスを襲った。
霧となって消えた人型ドラゴン。
しかしそれは目の錯覚。
ドラゴンはすでにカーティスの懐に!
「ちっ!」
カーティスの首を狙った大爪が薙ぎ払われた。
間一髪のとこで大爪の斬撃を長剣で受け止めたが、腕をかすった。
それはやや深く、血が吹き出る。
速い!
さっきとはまるで別だ!
殺意の塊と化した人型ドラゴンの猛攻はとどまることを知らず、休みなくカーティスを追い詰めていく。
一発一発の爪が速く、カーティスの技量を持ってしてもギリギリであった。
くそっ!
こいつ!
オレだけじゃ負ける!
お爺ちゃんに加勢を頼まないと!
押されている事実を受け入れ、すぐにフォレッドへ加勢を頼もうとしたその時だった。
当のフォレッドはセレンを抱き起こし、揺すっている最中だった。
「セレン! 目を開けてくれ! セレ──」
ドスッ!
肉を貫く生々しい音が聞こえた。
「──近づいたら殺すって……わたし言わなかった?」
次いで聞こえたのは冷酷なセレンの声。
「が、は……っ、セ、セレ……」
セレンの手がフォレッドの鎧を貫通して胸を抉っていた。
フォレッドは大きく吐血し、セレンに突き飛ばされる。
「ぉ、お婆ちゃん何を!? ぐあっ!」
よそ見してしまい隙を見せてしまったカーティスは人型ドラゴンの蹴りを直撃してしまう。
近くの建物に頭から激突し、意識が飛びそうになった。
それで切ったらしく、頭から流血して顔をつたう。
「ぁ、ああ……あああああ……フォレッド! いや! いやあああああああああ!」
今度はなんだ!? っとセレンを見ると倒れたフォレッドを見て絶叫していた。
自分でやったのにどういう…………という思考も一瞬あったが、フォレッドをやったあのセレンは竜の人格の方だと察した。
いま悲鳴を上げているセレンは祖母の人格だろう。
フォレッドの惨状を目の当たりにして意識を取り返したみたいだが。
刹那!
人型ドラゴンが狙いをカーティスからセレンに変えて、彼女の正面へ!
セレンは敵の速度に反応できず、そのまま発達した大爪に胸を貫かれた!
「ああああああああああああああ!」
「お婆ちゃん!」
カーティスは立ち上がり、ふらつきながらも懸命に走った。
セレンは胸を抉られ、激痛による悲鳴を上げた。
「ぐっ! こ、このぉおおおおおお!」
セレンの目が鋭くなり、人型ドラゴンの腕を掴んだ!
それに驚いた人型ドラゴンはセレンの肩に噛みつく。
「いっ! ああああああああああああああああ!」
胸を大爪で貫かれ、肩には牙が突き刺さる。
その痛みでセレンは断末魔にも似たような悲鳴を上げた。
すぐに助けねばとカーティスは駆ける!
「お婆ちゃん! 今!」
「来ないでカーティス!」
「え!?」
「フォレッドを連れて逃げて!」
激痛で泣き顔のセレンがそう叫んだ。
「な、何を言ってるんです! あなたを見捨てるわけには!」
「ダメ! わたしはもう一緒に居られない! いつかあなたさえも襲うドラゴンになる!」
「!」
「こいつの狙いはわたしなの! 抑えるから、フォレッドをお願い! 致命傷よ!」
「しかし!」
「急いで! フォレッドが死んじゃう!」
「くっ!」
カーティスは長剣を納め、倒れているフォレッドの元へ走った。
フォレッドはすでにかなりの量の血を流している。
地面に血溜まりが広がるほどに。
これでは長く持たない。
姉グロリアどころか祖父フォレッドまで死んでしまう。
あの人型ドラゴンめ!
悪夢のようなヤツだ!
「セ…………レ……」
「お爺ちゃんしっかり!」
「カ……ティス」
「ここを離れて、すぐに手当てします!」
カーティスはフォレッドを担ぎ、その場を急いで離れた。
フォレッドの胸からは血がとめどなく流れ、それは痕跡のように地面へと滲んだ。
※
残ったセレンは人型ドラゴンに刺された大爪を引き抜かれないよう必死に腕にしがみついていた。
カーティスたちの撤退が完了するまで、こいつを自由にはさせない!
『お前がリイスを! リイスを殺したあああああああああああ!』
人型ドラゴンの怒号と共に突き刺された大爪で胸を抉られる。
「ああああああああああああああ!」
気絶してしまいそうな激痛に、セレンは涙を流しながら絶叫した。
それでもヤツの腕は離さない。
これが自分に出来る、最後の家族への行為だから。
『リイスの痛みを思いしれええええええええええええええええええ!』
突き刺された大爪から電気が発生し、セレンの身体を一気に焼いた!
「いやああああああああああああああああ!」
感電により全身を震えさせ、セレンは意識が飛び掛けた。
むしろ飛んでくれた方が楽だったろう。
しかし寸でのところで意識は保たれたが、体に力が入らなくなり、セレンは人型ドラゴンにもたれ掛かる形になった。
そこを蹴り飛ばされ、セレンの胸を貫いていた大爪が抜けた。
セレンは地面に倒れ、胸から血を飛散させる。
「は……は……が、ごふっ!」
何度がムセて、しかしすぐに胸の傷が回復した。
人間では有り得ない回復速度。
もう自分は本当に人間ではないことを再確認し、血を分けてしまったグロリアを一瞬思う。
が、人型ドラゴンがゆっくりと迫ってきており、セレンはすぐに立ち上がった。
『なぜリイスを殺した』
「殺したかったわけじゃないわ」
リイスなんて知らない。
だがおそらく竜の人格である自分が殺したのだろう。
竜の人格は何匹もドラゴンを殺している。
理由も知っている。
お腹が空いたからだ。
あとは暇だから。
そんな他愛のない理由で、奴は同族を殺す。
家族を欲しがるくせに、他の家族には無慈悲。
『お前はリイスを殺すだけじゃ飽きたらず、リイスの卵まで潰した。俺とリイスの卵だったんだぞ!』
「……ごめんなさい」
謝って済む問題じゃない。
それは分かっていた。
しかし彼は家族を殺された。
そんな彼に自分の人格の話をしても信じてもらえるはずもない。
だからせめて、一言謝るしかなかった。
すると人型ドラゴンは一気に肉薄し、セレンの顔を掴んだ。
「あ!」
『謝らなくていい。死ね』
そのまま投げ飛ばされ、建物を何件も貫通した。
骨が砕けるような痛みが走り、悲鳴さえ上げられない。
瓦礫に埋まりかけたセレンはなんとか立ち上がろうとするが、人型ドラゴンの蹴りがセレンの腹部を直撃した。
「あああああああああああ!」
オスもメスも関係ない。手加減無用の蹴り。
瓦礫に叩きつけられたセレンは追撃してきた人型ドラゴンに腹を大爪で貫かれる。
そこから注がれる電流。
「ああああああああああああああああああ!」
『燃え尽きろおおおおおおおおおおおおお!』
最大の威力で電気を流した人型ドラゴン。
セレンは全身から煙を上げて痙攣し、白眼を剥いて倒れた。
人型ドラゴンはトドメを刺そうと大爪を引き抜き、セレンの顔に狙いをつけた。
『仇は取るぞ。リイス』
言って大爪を突き出した!
しかしセレンの手が動き、その大爪の先端を掴んで止めた。
「ねぇ……さっきから痛いんだけど?」
覇気を発したセレンが覚醒し、鋭くなった瞳がニヤリと人型ドラゴンを捉える。