【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった 作:ミズノみすぎ
その日に狩られたドラゴンの数は217頭にも及(およ)んだ。
内一頭はS級ドラゴン。
被害状況=騎士・市民含む
軽傷者113名。
重傷者74名。
死亡者39名。
街への被害=甚大。
第二城壁=ゲート大破。
城への被害=軽度。
※
「本来ならS級ドラゴンを討ち取った君を盛大に賞したいところだが、すまんなゼクード」
それは翌日の朝。
壁に穴が空いた城の【謁見の間】にて、国王さまが申し訳なさそうにそう言った。
「いえ、これだけの被害が出ては仕方ありませんよ」
玉座に座る国王さまに俺は答えた。
実際、本当に仕方ないと思う。
あのS級ドラゴンの氷塊のせいで街にかなりの被害が出ている。
防ぎようがなかったとは言え、これだけの被害を食らわされたのは正直に悔しい。
今はみんな街の修復や瓦礫に埋まった人達などを救出するのに出回っている。
俺を賞している場合じゃないのは本当にそのとおりなのだ。
むしろこんな状況でも何が優先かちゃんと判断してくれる国王さまで良かった。
「うむ。だが、お前のおかげでこれだけの被害で済んだとも言える。S級ドラゴンの討伐。誠にご苦労だった」
「ありがとうございます。ですが国王さま」
「ん?」
「一つ、嫌な予感がするんです」
「嫌な予感だと?」
「はい」
「なんだ? 申してみよ」
「はい。あのS級ドラゴンは、本当にS級だったのでしょうか?」
「……どういうことだ?」
「俺の父はS級ドラゴンと相討ちになったと聞いています。ですが、いざそのS級ドラゴンと戦ってみればあのとおり。思った以上にあっさり倒すことができました。あの程度のドラゴンがS級なら、父が相討ちになるなんて思えないのです」
やつ一体のためにどれだけの被害が出たか知った上で俺は言った。
ローエさんやカティアさん。
フランベール先生も歯が立たなかったのは知っている。
それでも、だ。
「ふむ……お前自身が父を超えたとは考えないのか?」
「はい。それはまだ考えられません。俺はまだ【竜(ドラゴン)斬り】を完全に会得していませんから」
「なに?」
「父は【竜斬り】の説明をこう言っていました。ドラゴンをバターのように斬れる剣技だと。しかし俺の【竜斬り】はまだ柔らかいパンを無理やりナイフで斬っているような感覚なんです」
「変わった例えだな。要するにまだ未完成だと言うのか?」
「はい。【闇魔法】のおかげで誤魔化(ごまか)せてはいるんですが、それでもやっぱり、俺が父を超えているとは考えられないです。少なくとも、今はまだ……」
「なるほどな。つまりお前が言いたいことは『まだ父を超えていないそんな自分が父を相討ちにしたS級ドラゴンをあっさり倒してしまった』。このことに不安を覚えたのだな?」
「はい! あのS級ドラゴンは、S級の中でも最弱だったか、それとも──」
──やつは実はA級ドラゴンで、本当のS級ドラゴンがまだ上にいる可能性もある。
A級だのS級だのは俺たち人間が勝手につけているランクだし。
すると突如、ガコン! といきなり【謁見の間】の扉が開いた。
入ってきたのは血相を変えた一人の王国騎士。
彼は息を乱しながらも「失礼します!」と大声を上げて、俺の隣で国王さまにひざまづいた。
「ほ、報告致します! たった今! 他国からの難民がゲート前にて入国の許可を申し出ています!」
「難民?」
国王さまが聞き返す。
「はっ!【アークルム王国】【リングレイス王国】【オルブレイブ王国】からの難民です! みなS級ドラゴンの襲撃を受け、ここ【エルガンディ王国】へ逃げてきたとのこと!」
S級ドラゴンの襲撃!
他国も受けていたのか!
まさか、同じタイミングで!?
「S級ドラゴンの襲撃だと! 他国にもか!?」
「はっ! 難民からの話では【リングレイス王国】【オルブレイブ王国】は壊滅。唯一、撃退に成功したのは【アークルム王国】だけだそうです!」
「か、壊滅って……」
俺は思わず声を漏らした。
二つの王国が、ドラゴンの餌場と化したということなのか!?
「我々と同じタイミングで他国も襲撃を受けていたというのか?」
「はっ! どうやらそのようです! みなS級ドラゴンの襲撃は昨日受けたと言っています!」
言われて国王さまは「なんという事だ」と片手で顔を覆った。
しかしすぐに王国騎士に命令する。
「難民の受け入れを許可する。【第一城壁】と【第二城壁】の間に難民用のキャンプを設置せよ。今は街も人も疲弊して荒れている。余計な諍(いさか)いを起こさぬよう分断しておけ」
「了解しました!」
「難民の人数は?」
「30人ほどです!」
え?
「三国の難民を合わせてか?」
「はい。みな馬に乗った難民ばかりです。徒歩で逃げている難民もまだいると言っていましたが、かなりの人数が途中でドラゴンたちにやられたのを見たとも言っています」
そうか。
国と国の距離はかなりある。
馬に乗った難民だけなのは当然だ。
昨日のうちに避難したのなら、徒歩で逃げている難民はまだここへは辿り着けるはずがない。
ドラゴンに襲われたら逃げられる確率もかなり低い。
王国の外を徒歩で行くというのはそれだけ危険なのだから。
「わかった。急ぎ難民の受け入れを。キャンプで文句を言うようなら国から放り出すと伝えておけ」
「了解しました!」
指示を受けた王国騎士は急ぎ足でこの場を去った。
「ゼクード」
国王さまに呼ばれ、俺は視線を向けた。
「お前の言った嫌な予感が当たっていそうだな」
やはり国王さまもそう思ったようだ。
「はい。同じタイミングでドラゴンが人間を襲撃してきた。こんな統率の取れたドラゴンの行動は、まだ上にリーダーがいる証拠になります」
「うむ。最悪な事だが、更なる脅威が存在している。……これは想像以上に深刻なことになってきた。撃退に成功した【アークルム王国】と連携を強める必要があるな」
「そうですね」
「ゼクード。今後もお前が頼りだ。しっかり頼むぞ。部下たちの強化も視野に入れておくのだ」
「了解しました」
敬礼し、俺は【謁見の間】を去った。