【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第315話【複合パーティー】

 裂けた大地が谷となり、カーティスはそこへ落ちていった。

 

 姉グロリアを守ろうと、必死に彼女を抱き締めていたが、落下の最中なにかに当たって意識が途切れた。

 

 一瞬……オフィーリアの泣き顔が脳裏に浮かんで……

 

 それから…………──

 

 

 

 ──…………それから水の音がした。

 

 水の滴る心地良い音だ。

 

 ……オレは…………どうなったんだ……?

 

 地面が割れて……

 

 そこに落ちて……

 

 オレは…………生きてるのか?

 

 ……グロリアは?

 

 徐々に意識が覚醒し──

 

「──う……」

 

「カーティス!」

 

 聞き覚えのある声が聞こえてカーティスはゆっくりと鉛のように重い瞼を開いた。

 

 夢うつつな気分を漂ったカーティスは、ぼやける視界の先に黄色い何かが浮かんでいるのが見えた。

 

 それは徐々に形を成していき、グロリアのツインテールだと分かった。

 視線を少し落とすと、セレンと同じピンクの瞳がカーティスを覗き込んでいた。

 

「…………姉、さん?」

 

 掠れるような声で呟くと、グロリアはジワリと涙を浮かべて安堵したような顔をした。

 

「良かった……どこか痛んだりしない? 頭とか大丈夫?」

 

 息が当たるほど顔を近づけてくるグロリアから、女の甘い香りがしてカーティスは一瞬ボウッとした。

 

 そんな姉の優しい匂いを感じながら、カーティスはグロリアを見た。

 セレンに潰され重傷だったグロリアはもう何もかも回復している。

 

 まるで何事もなかったかのように。

 今この時だけはドラゴンの再生能力に感謝した。

 グロリアが無事に回復していて良かった。

 

「……問題ない」

 

 問題ないのだが、

 正直、全身が痛かった。

 特に頭が一番痛い。

 

 頭痛なのか、それとも何かをぶつけた痛みなのか。

 それは分からないが、頭が痛かった。

 だが……血などは出ていないし、激痛というほどでもない。

 

「なら良かった。アタシが目を覚ました時あんた倒れてたんだから」

 

「そうか……ここは?」

 

「地下洞窟みたい。大地が割れたのは地下にこんな空洞があったからみたいね」

 

 グロリアに言われてカーティスは周りを見渡した。

 水滴の音がする広い空間。

 空気は冷えており、デコボコした岩が連なっている。

 

 水滴が落ちる岩には苔が生えていて、どこか流水の音も聞こえてきた。

 

 人工的なものはなく、完全な自然洞窟に落ちたみたいだ。

 洞窟は迷路のようにあちこちに道が伸びている。

 そこには水が流れており、長い年月を掛けて出来た道だとわかった。

 

 カーティスは自分が落ちてきたであろう上を見上げた。

 

 裂けた絶壁の遥か遠くに月が見える。

 周りは何十メートルもある地層だ。

 

 なんて高さだ。

 軽く100メートルほどあるんじゃないだろうか?

 とんでもない高さから落ちてしまったようだ。

 

「……あの高さから落ちて、なんで生きてるんだオレは……」

 

 骨折ひとつ無い。

 あの高さなら人間は即死のはずだ。

 身体の頑丈さには自信があるが、さすがにこの高さから落下して生きていられるほどじゃないはず。

 

 さすがの母さん(カティア)もそこまでオレを頑丈に生んだ覚えはないだろう。

 どうなってるんだ?

 

「それはリィのおかげね」

 

「リィ?」

 

「ほら、あの子」

 

 グロリアが指し示す方角に小さなドラゴンが岩影から顔を出していた。

 その後ろには例の人型ドラゴンの姿もあった。

 

「人型!」

 

「ああ待ってカーティス! 気絶してたアタシとあんたを運んでくれたのアイツなのよ!」

 

「なんだと!?」

 

「アイツが運んでくれなかったら今ごろアタシとカーティスはセレンに殺されてたわ。身を隠してくれたの」

 

「身を……ヤツが?」

 

 グロリアが頷く。

 カーティスは人型ドラゴンを見た。

 ヤツと目が合って、人型ドラゴンはすぐに視線を逸らしてきた。

 そしてやはり殺気は感じない。

 

 敵意を持っていない。

 ドラゴンが人間の目の前でこんなに大人しいなんて、有り得ない。

 やはりグロリアがヤツの言葉を理解しているおかげなのか。

 

 オレとグロリアを助けたのも、本当だと言うのか……

 

 ……まさか、ドラゴンに助けられる日が来るとは。

 

 ──だが礼を言う気にはなれない。

 グロリアを殺した張本人なんかに。

 

 カーティスも人型ドラゴンから視線を離してグロリアに戻した。

 

「…………あの化け物はどこへ消えたんだ?」

 

「化け物?」

 

「セレンの事だ」

 

 あいつはグロリアにあんなことをした。

 あれはもうオレたちの家族なんかじゃない。

 血も涙もないただの化け物だ。

 

 おかげで吹っ切れた。

 次会ったときは必ず倒す。

 

「セレンなら飛んで行ってしまったわ」

 

「ここにはもういないということか?」

 

「ええ。アタシたちが見つからないから諦めたのかもしれないわ」

 

 匂いを辿って来なかったのか?

 それとも、この洞窟はセレンにとって狭かった?

 どちらにせよ、ヤツがオレたちを見過ごすはずがない。

 

「ヤツがオレたちを諦めるとは思えん。上で待ち伏せている可能性もある」

 

「そうね……でも、アタシたちもここを脱出しないと」

 

 確かにここに居てはいつか力尽きる。

 なんとかして地上に戻る方法を探さねば。

 

「……そうだな。せっかく助かったのに餓死では笑えん」

 

「決まりね。まずはここを脱出すること。ナイトとリィも聞いてたわよね? 行くわよ」

 

「ナイト?」

 

「あの人型ドラゴンの名前。ナイトって言うんだって」

 

 エルガンディの強き騎士に与えられる称号【ナイト】。

黒騎士(ダークナイト)】や【紅騎士(クリムゾンナイト)】などがあるが、まさか名誉ある称号の名称と同じとは。

 ドラゴンのくせに。

 

「気に食わん名だ」

 

「そう言わないで。今は味方なんだから」

 

「味方って……本気でそいつらと一緒に行くのか!? ドラゴンだぞ!」

 

「ドラゴンだけどアタシが通訳できるし。カーティスもナイトの強さは知ってるでしょ? あのセレンを倒すなら強い味方は多い方がいいわ」

 

「いや、騎士がドラゴンと共闘など……」

 

 ましてやコイツは父さんの左目を奪い、姉のグロリアを殺したドラゴンだ。

 なんの因果でこんなヤツと共闘なんか。

 

「ナイトもセレンを倒したいみたいなの。大切な人を殺されたから仇を取りたいって。共通の敵を持ってるの。アタシたちの利害は一致してるわ」

 

「……お前はそれでいいのか?」

 

「なにが?」

 

「アイツは父さんの左目を奪ったヤツで、お前を殺したヤツでもあるんだ。そんなヤツと一緒に戦うことを、お前は我慢できるのか?」

 

 言われたグロリアは少し顔を曇らせたがそれも一瞬だけ。

 すぐに肩を竦めて返してきた。

 

「今さらどうしようもない事でしょ? そんな変えられない過去に拘ってたらセレンは倒せないわ」

 

「……」

 

「セレンの強さは本当に化け物よ。だからカーティスやお父さんレベルの騎士じゃないと話にならない。でも……それでも単騎じゃムリ。だからカーティスとナイトが組めば、もしかしたらセレンを倒せるかもしれない。少しでも勝てる可能性を上げないと」

 

 確かにナイトは強い。

 それは認める。

 だが……くそ!

 

 父さんが記憶を回復してくれればこんな奴と組まなくて済むのに!

 

「それに……セレンをちゃんと倒しておかないとレミーやオフィーリアが安心して子育て出来ないでしょ?」

 

「!」

 

「そっちの方が優先で大事だと思うけど?」

 

 レミーとオフィーリアの子育て……か。

 それなら母さんたちにも言えることだな。

 オレたちの弟か妹がもうすぐ生まれる。

 

 その子たちがしっかり育つためにも、セレンの討伐は最優先事項だとグロリアは言いたいのだろう。

 

「……わかった。そこまで言うなら組んでやる。だがナイトに伝えておけ。少しでも変な動きを見せたらすぐに殺すとな」

 

「はいはい。気が向いたら伝えておくわ」

 

「いや今言えよ」

 

「言ったらすぐに殺し合いしそうで怖いのよアンタとナイトは。セレンを倒すまでは仲良くして」

 

「出来るか馬鹿者」

 

「いいからほら。みんな行くわよ」

 

 グロリアが先を歩き出すとリィが彼女にトコトコ続いた。

 座っていたナイトも立ち上がり、カーティスを睨む。

 

 カーティスもナイトを睨み返し、お互いに信用していないことを目で訴え合った。

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