【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第316話【ついに再会】

 朝を迎え、昼に差し掛かるところでゼクードはある一報を受けた。

 

 それは【レグナ隊】や【アルベール隊】などの精鋭たちが【エルガンディ王国】へ帰還したことだった。

 

 もうドラゴンセレンを討伐したのかと、ゼクードは妻ローエたちと娘オラージュたちを連れて城門へ向かう。

 

 街中を早足で進むフォルス家一行はカーティスたちの帰還を心から喜んでいた。

 

「思ったより早い帰還だったな」

 

 娘カレンティアを抱いた母カティアが言うと、隣のローエが嬉しそうに相槌を打つ。

 

「ええホントに。良かったですわねオラージュ。お姉ちゃんたちに会えますわよ~」

 

 キョトンと母ローエを見つめる娘オラージュ。

 

「これで家族みんな揃ったね。今日はお祝いだよリィン」

 

 娘のリィンベールを優しく抱きながらフランベールも心から嬉しそうに笑っていた。

 

 見ているゼクードも嬉しくなる家族の光景だった。

 

 早くカーティス・グロリア・レミーベールに妹たちを見せてやりたい。

 俺の記憶も戻ったことを伝えたい。

 フォルス家はもうしっかりと回復したぞ、と伝えたい。

 

 なにより……今まで苦労を掛けたことを謝りたい。

 

 カーティス……グロリア……レミー……

 

 早く顔を見たくて全身がウズウズしている。

 それはローエたちも同じようだった。

 

 家族みんなでカーティスたちを労(ねぎら)おう。

 そう決めて城門へ来たが──

 

 ──そこにカーティスとグロリアの姿だけなかった。

 

 帰ってきたのはレミーベールとオフィーリア。

【レグナ隊】や【アルベール隊】などの他の部隊の騎士たちのみ。

 

 なぜ【カーティス隊】の隊長であるカーティスがいないのか?

 グロリアもいないのは何故だ?

 

 城門前に集まっている騎士たちの雰囲気は暗い。

 せっかく帰還したのに、なんだこの重い空気は。

 

 まさか……グロリアとカーティスの身に何かが!?

 戦死じゃないだろうな!?

 

「レミー!」

 

 思わず駆け出した俺は、先頭にいた娘のレミーベールに声を掛けた。

 

「お父さん!」

 

 レミーベールが振り返り、それを期にオフィーリアやレグナたち全員がゼクードの方へ視線を集中させた。

 

「ゼクードさん……」

 

 あのレグナが暗い表情をしていた。

 何かを含んだその声音と表情は、事態の重さを暗に示しているように見えた。

 

「みんな……何があったんだ?」

 

 恐る恐るゼクードは聞いた。

 その時ちょうどローエたちもゼクードに追い付いてきた。

 

「おい。カーティスはどこだ?」

「グロリアはどうしたんですの?」

 

 カティアとローエの問いにレグナたちは言葉を詰まらせた。

 そんなみんなを代表するかのようにレミーベールが口を開く。

 

「カーティスとグロリアは【第1拠点】に残ったわ。ドラゴンセレンが追ってこないか見張るために」

 

 良かった。

 戦死じゃなかった。

 

「……たった二人だけでか?」

 

 俺の問いにレミーベールは頷いた。

 

 カーティスとグロリアだけを残し、他の部隊はみんな帰還?

 いったいどうなってるんだ?

 

「レミー。いったいどういうことだ? ちゃんと説明してくれ」

 

「……その前に、お父さんに見せなきゃならないのがあるの」

 

 レミーベールが目配せすると、後ろから大きな皮袋が運ばれてきた。

 これは死んだ仲間を運ぶための皮袋だ。

 

 膨らみから見て誰かが入っている。

 まさか……カーティス? グロリア?

 

 いやでもさっきレミーは、カーティスとグロリアは【第1拠点】に残ってると言っていた。

 つまり戦死してないってことだ。

 

 じゃあこの皮袋の中身は誰なのか?

 

「それは?」

 

 俺の問いに答えるようにレミーベールは皮袋を開く。

 遺体の顔だけを露出させ、それを俺に見せてきた。

 

「──っ!?」

 

 中身は年老いた男の顔だった。

 白髪混じりの銀髪で、目元は火傷の痕が酷く残っている。

 その顔立ちはどこか懐かしさを感じさせ、父であるフォレッドの思い出が重なった。

 

 まさか……この人……

 

 察して重くなる胸の奥を感じた。

 

「この……方は?」

 

 俺はレミーベールに答えを聞いた。

 レミーベールは小さく息を吸ってから、答えた。

 

「【フォレッド・フォルス】。ワタシたちの祖父であり、お父さんの父親です」

 

 衝撃のあまりに言葉を無くしてしまった。

 後ろで妻達が息を呑む気配を見せる。

 

「……オヤジ?」

 

 予想はしていたが、どこか信じられない俺はもう一度フォレッドの顔を見た。

 

 痩せこけた老人の顔がそこにあった。

 記憶にある父の顔なんて若いときの顔しかない。

 しかもギリギリに覚えてるだけでハッキリとした顔はもう忘れている。

 

「どうして…………このオヤジは、どこに居たんだレミー?」

 

「……お父さん……記憶は?」

 

「もう回復してる。いいから教えてくれ」

 

「う、うん。お爺ちゃんは【ハーティシオ王国】に居たの」

 

「ハーティシオ?」

 

「例の新王国の名前よ。ワタシたちが着いたときにはもうその王国はドラゴンセレンによって滅ぼされてた」

 

「な……」

 

「でもそこで生き残ってたのがお爺ちゃんなの」

 

「生き残ってた? なんでオヤジは【ハーティシオ王国】に居たんだ?」

 

「それは──」

 

 レミーベールが答える前にオフィーリアがフラつき始めて倒れそうになった。

 それを見て慌てて支えるレミーベール。

 

「オフィーリア!」

 

「す、すみません……ちょっと、立ちくらみが……」

 

「いいの。家に送るわ。ごめんお父さんお母さん。オフィーリアを先に送るわ。話はそのあと必ず」

 

「ぁ、ああ。俺も行くか?」

 

「大丈夫よ。……お父さんはお爺ちゃんを見てあげて」

 

 それだけ言い残してレミーベールはオフィーリアを連れて去って行った。

 他の騎士たちも各々で動き始める。

 

「アルベール。オレは国王とオヤジに報告へ行ってくる」

 

 レグナが言うとアルベールは頷く。

 

「了解だ。ここは任せておけ」

 

 レグナの部隊も街中へ消えていく。

 残ったのは【アルベール隊】とフォルス家。

 そして皮袋に眠るフォレッド・フォルス。

 

 俺は父フォレッドの顔を見た。

 

 ……信じられない。

 いま、この目の前で眠っている老人は、俺の父親フォレッド・フォルス本人だと言うことが。

 

 だがレミーベールが嘘をつくとは思えないし、嘘をつくメリットもない。

 

 なにより……

 

『フォレッドはこっちにはいないぞ。この大嘘つき者め』

 

 あのロゼの言葉がずっと気になっていたから、この事態を目の当たりにしてようやく理解できた。

 まさか本当に……

 

「オヤジ……」

 

「ゼクードくん……大丈夫?」

 

 フランベールに言われて、俺は小さく頷く。

 

「ああ……今のところは……」

 

 どこかまだ事態を把握しきれていないせいもあり、涙が出てこなかった。

 

 生きてたんなら、なんで帰ってこなかったんだこの野郎……

 

 そんな感情があるせいかもしれない。

 

 いや、分からないことだらけで、どうにもできないんだ。

 

 カーティスとグロリアの事も気になるが、無事のようなので今はいい。

 

 それよりなぜフォレッドが【ハーティシオ王国】に居たのか、だ。

 

 早急に答えが知りたい。

 俺はアルベールを見た。

 アルベールと言えばガイスとリリーベールの息子さんだったはず。

 

「……アルベールくん」

 

「はっ!」

 

「レミーを待ってられない。詳しく説明してくれないか? なぜフォレッド・フォルスは【ハーティシオ王国】に居たんだ?」

 

「は……カーティスから聞いた話では、フォレッド・フォルスもまた雷を受けて記憶を失っていたそうです」

 

「!」

 俺は思わず目を見開いた。

 後ろの妻達も同じく。

 

「記憶を失い、流れに流れついた場所が【ハーティシオ王国】だったそうです」

 

「そう、か……」

 

 そうか……オヤジも俺と同じで記憶を。

 やっぱり元凶はディザスタードラゴンだったのか。

 

 帰りたくても帰れなかったってことか……

 

 それが分かった途端、なんだかホッしている自分がいた。

 

 やっと冷静になれて、俺はオヤジの死に顔を見た。

 理由は分からないが、どこか幸せそうな顔で眠っている。

 

 こっちは泣きそうなのに、なんて幸せそうな顔してるんだ。

 まったく……

 

「オヤジ……」

 

 生きて会いたかったな……

 

 父親の死という実感が、ようやく身に染みて沸いてきた。

 

 目から出た雫が口に入り、ちょっとだけしょっぱかった。

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