【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第319話【母親】

【第1拠点】に着いたローエは馬から降りてすぐに走り出した。

 

「グロリア!」

 

 近くのテントを捲(めく)って娘の名を叫ぶも居ない。

 

「カーティス!?」

 

 別のテントを確認するも人影はない。

 

「グロリア!?」

 

 全てのテントを確認したが娘も息子も姿がなかった。

 

「グロリアー! カーティスー! どこですのー!?」

 

 大声を張り上げて娘らを呼ぶが、ローエの声が空に響くだけで終わった。

 

 まるで人の気配がありませんわ。

 どうなってますの?

 レミーは確かに【第1拠点】にグロリアとカーティスが残ったと言っていたのに。

 

 まさかもうグロリアはどこかへ旅立ってしまったのだろうか?

 でも、だとしたらカーティスが居ないのはなぜ?

 

 カーティスまでグロリアと一緒に行ってしまったのだろうか?

 無くはないかもしれないが、あのカーティスならばまずグロリアを止めるような気がする。

 

 !

 

 まさか、わたくしが来たからどこかに隠れて!?

 ドラゴン化した自分を見せたくないから、どこかに隠れた可能性があるかもしれない!

 

「グロリア! お願い! 返事をして! わたくしですわ! ローエですわ! お願いですから姿を見せて!」

 

 しかし、やはりグロリアは現れなかった。

 ローエは泣きそうになりながら娘の名前を叫び続ける。

 

「グロリア! グロリアアアアアアアアアアア!」

 

 ローエの涙がポタポタと地面を濡らす。

 隠れていないのなら、やはりもう旅に出てしまったのだろうか?

 そう思うと二度と会えなくなった損失感が込み上がってきて涙の量が一気に増えた。

 

【第1拠点】に居ないのなら、いったいどこを探せばいい?

 

 お願い……戻ってきてグロリア……もう一度だけ……せめて、もう一度だけ、あなたに会いたい…………

 

 ……違う。

 

 グロリア……あなたを、一人にしたくないですわ。

 

 どうしてあなたがこんな目に遭わなければいけないの?

 

 娘が不幸になることを願う母親なんていない。

 ローエもそんな母親の一人だ。

 グロリアの現状そのものを全て代わってあげたい。

 

 代わってやれぬなら、せめてグロリアの側に居てあげたい。

 

 グロリアが……

 たとえどんな化け物になってしまったとしても、

 それでどれだけの敵を作ろうとも、

 

 わたくしは……あなたの母親(みかた)ですわ。

 誰になんと言われようとも……

 

 だから……

 

「お願いグロリア……姿を……姿を見せて……」

 

 膝を着き、ローエは泣き崩れた。

 

 嗚咽を撒き散らしていると、何者かが近づいてくる足音が聞こえた。

 ローエはハッとなり、涙をぬぐってすぐさま立ち上がった。

 

 凄まじい気配が迫ってくる!

 なんなんですのこの圧力は!?

 

 ローエはもはや無意識にマグナムハンマーを取り出して構えていた。

 妊娠でブランクのある身体だが、相手の圧力には反応してすぐに動いてくれた。

 

 いったいどんな奴が現れるのか?

 足音から見て人間のようなのだが、だとしたらこの人間離れした圧力はなんだ?

 

 ローエは身構えて先を見据えていると、テントの影から一人の少女が現れた。

 

 それはグロリアではないと一目でわかった。

 紫色の長髪にピンク色の瞳。

 小柄な身体は血色が悪く白すぎる。

 

 紫色の長髪に、ピンクの瞳!?

 まさか、あれがレミーが言っていた【セレン・フォルス】!?

 

 レミーベールから聞いていたセレンの特徴と一致する。

 

 見た目は完全に少女だと聞いてはいたが、まさかこれほど幼い見た目とは。

 彼女が夫ゼクードの母親セレン・フォルス。

 

 

 

【ハーティシオ王国】を焼き尽くし、

 夫ゼクードの父親フォレッド・フォルスを殺し、

 グロリアに血を分け与え、ドラゴン化させた張本人。

 

 怒りを感じないわけではない。

 だが、セレンがグロリアに血を分け与えなかったらグロリアが死んでいたのは知っている。

 

 だから、セレンを恨むことはできない。

 それでもやはり……心の奥でどこか怒りを感じてしまっているのも事実で……

 

 夫ゼクードの祖母セレン……

 もっと、普通の形で出会いたかったですわ。

 この方とは。

 

「グロリアを探しているの?」

 

「え……」

 

 不意にセレンに言われてローエは間の抜けた声を上げてしまった。

 セレンは不敵に笑いながらローエに近づいてくる。

 が、その途中で顔を真顔に戻して鼻をヒクヒクさせた。

 

「ん? あなた……グロリアの匂いがする」

 

「!」

 

「あなたの匂い……グロリアそのものだわ。どうなってるの? ゼクードの匂いがしないのに」

 

 グロリアの匂い?

 なんて嗅覚なんですの。

 人間じゃないっていうのは本当のようですわね。

 

「ぁ、あの……あなたは?」

 

「私? 私はセレンよ。あなた何? グロリア? なんか似てるけど」

 

「……わたくしはローエ・フォルスですわ。そのグロリアの母ですの」

 

「母?」

 

「ええ」

 

「? ……あなた何言ってるの? グロリアの母親は私よ?」

 

「はい?」

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