【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第323話【竜人形態】

 グロリアがセレンに投げ飛ばされた。

 それも遥か彼方へ。

 

 一瞬だった。

 なんてパワーだ。

 

「グ、グロリア……」

 

 義母ローエがあまりの非現実的な光景に立ち尽くしている。

 カーティスはそんな義母を言葉で叩いた。

 

「お母様! 急いで行ってください!」

 

「っ!? え、カーティス!?」

 

 ローエがこちらに向いて焦るも、カーティスはすでにセレンに視線を固定して剣を構えていた。

 

「こいつはオレが止めます! お母様はグロリアを探して合流してください! 今のあいつならアレくらいでは死にません!」

 

「で、ですが」

 

「オレなら大丈夫です! 急いで!」

 

「わ、わかりましたわ! ゼクードを連れてきますから!」

 

 父さんを?

 記憶が回復したのか?

 だとしたらありがたい。

 

 これ以上にない頼もしい味方だ。

 父さんがいればこのセレンの姿をした化け物を倒せるはず。

 

「ゼクードですって?」

 

 セレンがローエの言葉を聞き逃さなかった。

 が、カーティスが剣を振って一閃。

 セレンは寸でのところでそれを回避しカーティスを睨む。

 

「カーティス……!」

 

「お前には関係ない。ここでオレの相手をしてもらうぞ」

 

 剣を構え直して、そして気づいた。

 ナイトがいなくなっていた。

 奴の娘のリィも見当たらない。

 

 あの野郎……どこ行きやがったこんな時に。

 

 カーティスは内心で舌打ちした。

 戦力的にはアテにできるヤツだったが、肝心な時にこれか。

 まぁいい。

 グロリア無しで奴と連携など取れるはずもない。

 

「カーティス……あなた……家族だから我慢してたけどもう許さない! いつまでも私に歯向かって!」

 

 怒りに打ち震えるセレンが両翼を広げて膜を煌めかせた。

 しかしそのセレンの怒りは逆にカーティスに火をつけた。

 

「許さない……だと? 勘違いするなよドラゴン風情が」

 

「なんですって?」

 

「祖母の身体で好き放題やりやがって。頭にキテいるのはオレ方だ!」

 

 カーティスは吼えた。

 そして怒りの踏み込み!

 消える真紅の騎士!

 

 気づいたセレンは慌てて眼を守る。

 が、カーティスの斬撃はその守りに使った両腕を微塵に斬り裂いた。

 それも一瞬で。

 

 並外れた速度の斬撃はセレンの眼をも一閃し視界を奪う。

 

「眼がまた! やめ……」

 

 刹那に足が斬り落とされセレンは倒れる。

 

「きゃあ!」

 

 腕がないから受け身が取れず、あげくに立ち上がれない。

 それでもカーティスの攻撃は怒涛の如く続いた。

 

 セレンの胸を狙った鋭い突き。

 狙いは弱点の心臓。

 狙いを定めて穿つ!

 

 しかしセレンはドラゴン形態から元の人間形態に戻り、カーティスの刺突をかわした。

 

「ちっ!」

 

 舌打ちしたカーティスだが、そのわずかな時間にセレンの再生が終わってしまっていた。

 眼が回復し、斬り落とした両腕も再生した。

 

 ドラゴン形態よりも再生が速い。

 人間形態は小型な分だけ回避速度が速いのかもしれない。

 実に厄介だ。

 

「ふぅ……あの身体じゃあなたの速さについていけないみたいね……」

 

 ドラゴン形態の事を言っているらしいセレンだが、カーティスは構わず剣を構えて告げる。

 

「降参するなら心臓は置いていけ。そうすれば見逃してやる」

 

「ふふ、笑わせてくれるわね。まだ私より強いつもりでいるの? 言っておくけど私、まだ本気出してないからね?」

 

「ならさっさと見せてみろ!」

 

 駆け出したカーティスが一瞬でセレンに詰め寄り一閃!

 セレンの首を狙った一撃は……セレンの片腕で止められた。

 

「な……!?」

 

 刃を掴まれたわけじゃない。

 腕そのもので防御したのだ。

 

 ドラゴンの竜鱗を容易く貫通する【真・竜斬り】を。

 

 カーティスは目を疑った。

 セレンの皮膚がこちらの斬撃を受け止めている。

 斬り落とせない。どうなっているんだ!?

 

「私の本気……見せてあげるわ」

 

 嗤うセレンの顔が桃色の竜鱗に覆われていく。

 顔だけじゃない。

 全身の至るところに竜鱗が生えてくる。

 

 尻尾が生えて、翼も生えて、爪も鋭く、肘も鋭利に、額からは角が生えた。

 

 それはまさしく人型ドラゴンそのものだった。

 桃色の竜鱗に覆われた雌の人型ドラゴン。

 女性の流麗な身体つきはそのままに、セレンの身体は竜鱗に覆われた。

 

 それと同時に生じる覇気。

 さすがのカーティスでさえ戦慄する濃度だった。

 

「怖い?」

 

「……っ!」

 

 セレンの問いにカーティスはただ睨む。

 覇気で震える身体を隠し、カーティスは剣を構えた。

 それを見て嗤ったセレンは翼を広げ、次の瞬間には膜をピンクに光らせる。

 

 そして翼をはばたかせ、そのピンクに発光した物をカーティスに向けて打ち飛ばした。

 

 その速度はまさに弓矢の如く!

 

「っ!」

 

 何百と発射されたピンクの発光体がカーティスに飛来する。

 持ち前の反応でそれを避けるが、避けきれない一発を剣で受けた。

 

 刹那!

 大爆発!

 

「ぐああああ!」

 

 ほんの少し受けただけでとんでもない爆発力を秘めていた。

 カーティスは吹っ飛び、しかしすぐに受け身を取った。

 それを狙ったかのようにセレンが肉薄し、爪による一撃を放ってきた。

 

「【ドラゴンクロー】!」

「くっ!」

 

 カーティスはそれを剣で受け止める。

【ドラゴンクロー】は凄まじい威力で、体重差で有利なはずのカーティスが押しのけられそうになるほど。

 

 なにより【ドラゴンクロー】を受け止めたカーティスの背後周辺が斬れた。

 

 近くにあった大岩や、焼けた地面などが綺麗に一閃されている。

 

【ドラゴンクロー】の威力を後ろへ受け流した結果だが、そのあまりの威力にカーティスは冷や汗を流す。

 

「ふふ、私の本気……怖いでしょ?」

 

 またも嗤うセレンだが、それがカーティスの反撃を許す隙になった。

 カーティスはセレンの腹を蹴り、彼女の態勢を崩した。

 

「【真・竜斬り・轟】!」

 

 セレンの胸を狙った一撃!

 それに直撃したセレンは吹き飛び、地面に落ちる前にカーティスはさらに繋げる。

 

「【真・竜斬り・銀雷】!」

 

 ジグザグの剣閃が飛び、吹き飛ぶセレンを追撃する。

 セレンはそんな攻撃を食らいながらも受け身を取った。

 刹那!

 セレンの首にカーティスのロングブレードがすでに!

 

「!」

 

「【真・竜斬り】!」

 

 反応が遅れたセレンの首を見事に捉えた一撃だった。

 怯んだセレンにカーティスは攻撃の手を休めない。

 

「【真・竜斬り・紅蓮虎】!」

 

 セレンの心臓を狙った炎の刺突。

 もろに食らったセレンは吹き飛んだ。

 これ以上にないほどの手応えを感じた。

 

 全ての攻撃を綺麗に直撃させた。

 

 だがセレンは何事もなかったかのように立ち上がってきた。

 

「無駄よ。もう私を傷つけることはできないわ」

 

 信じられない。

【真・竜(ドラゴン)斬り】が通用しないなんて。

 セレンのあの竜人形態の竜鱗は、とんでもない硬度を有している。

 あれだけ叩き込んだのに傷一つ負わせられていない。

 

「再生能力があって……その上その防御力か。希望を削がれた気分だ」

 

「あなたが悪いのよ? 私を怒らせるからこうなる」

 

「そうか。だが謝る気はない。ましてや子供を物のように扱うお前にはな」

 

「何が悪いの?」

 

「なに?」

 

「あなたもグロリアも私が生んであけたから、この世に命を得て生まれてこれたのよ?」

 

「……」

 

 確かに祖母のセレンが父ゼクードを生んだから、その息子や娘であるオレとグロリアが生まれた。

 その繋がりはその通りである。

 

「ぜんぶ私のおかげでしょう? だから子供は私の好きにしていいばすよ?」

 

 ……

 

「もういい。喋るな」

 

「え?」

 

 本物のセレンの人格は、今どんな気持ちでこれを聞いているのだろう。

 どんな気持ちでこの現状を見ているだろう。

 

 おそらくオレと同じで心底呆れているに違いない。

 それか泣いているか。

 

 ……待っていてくださいお婆ちゃん。

 こんな悪夢、すぐに終わらせてみせます!

 

「お前はここでオレが倒す。意地でもな」

 

「ふふ、そう。まだ力の差が分からないみたいね」

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