【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった 作:ミズノみすぎ
『――――ぃ……ぉぃ……ぉい……ろ! 目を覚ませ! おい!』
「ハッ!?」
グロリアは目を覚ました。
ボヤける視界の先には青空が広がっている。
そこにグロリアを覗き込む2匹のドラゴンが。
「わあっ!」
グロリアは反射的に驚いて飛び起きた。
食われると思って焦ってしまった。
しかしよく見ると……
「あ……ナイト? リィ?」
『やっと起きたか』
『よかった〜』
ナイトが呆れ、リィが安堵の声をもらす。
グロリアは少し痛む頭を撫でて、自分の全身が濡れている事に気がついた。
そうだ。
アタシ確かセレンに投げ飛ばされて湖に。
そして頭を打ってそれから……気絶してた?
そこから先の記憶がないから恐らくそうなのだろう。
現状を把握したグロリアは辺りを見渡す。
湖と草原が広がっている。
点々と木が生えてるが、森ほどの密度はない。
そしてなにより、そこにカーティスとローエの姿がなかった。
「あれ? お母さんとカーティスは?」
『知らん』っと素っ気ないナイト。
「いや知らんってアンタ……」
『投げ飛ばされたお前を追い掛けたからな。あの赤い奴と緑の奴ならまだ戦ってるんじゃないか?』
「な! なんでアタシを優先したのよ! アンタとカーティスが組んでもギリギリな相手なのに!」
『奴とは言葉が通じないんだ。お前無しで連携など出来るか』
「それは、そうだけど、でも……」
『パパが追いかけてなかったらグロリア沈んでたよ?』
リィに言われてグロリアはハッとなった。
湖のド真ん中で気絶して生きていた自分。
鎧を装備しているグロリアに浮く力はないはず。
だから気絶したまま沈んで死んでいた可能性がある。
でも生きていた。
湖から引き上げられて。
ナイトが助けてくれたらしい。
驚いた顔をナイトに向けると、彼はフンとそっぽ向いた。
よく見れば彼も全身濡れている。
「あ……ありがとう」
『礼なんていい。それよりこれからどうするつもりだ?』
「そりゃ戻ってカーティスたちを助けないとマズイわよ。アンタとカーティスだけが頼りなんだから」
『俺たちが戻る前に死んでなきゃいいがな』
「バカ言わないの! カーティスはそんな簡単にやられないわよ! お父さんと同じくらい強いんだから!」
『お父さん?』
ナイトが首を傾げた時、彼は来た。
「グロリアアアアアアアアアアッ!」
「え……」
こ、の……この声は!
間違いない!
でも、なんで!?
「この声は、お父さんなの!?」
馬に跨って走ってくる漆黒の騎士がそこにいた。
どう見てもグロリアの父ゼクード・フォルスだ。
記憶が回復したのだろうか!?
『ヤツは……まさか!』
『パパ?』
ゼクードに気づいたナイトが顔を怒りに染める。
「グロリア! そいつから離れろ! 危険だ! 離れろ!」
「え!? あ! ま、待ってお父さんやめて!」
『また……またお前か! 今度こそ殺してやる!』
「ちょ! ナイトもやめて! あれは味方よ! お父さんも止まってよ!」
しかしゼクードもナイトも止まらない。
ゼクードは馬から飛び降りロングブレードを抜刀!
対するナイトも爪を光らせる。
瞬く間に二人は肉薄し壮絶な死闘が始まった。
「しつこいんだよお前は! いい加減くたばれ!」
『忌々しい! 今度こそ終わらせてやる!』
凄まじい殺気のぶつかり合いだった。
お互い本気で殺す気で掛かっている。
ゼクードの剣に、ナイトの爪に、一切の容赦がない。
それを見たグロリアは焦るが、同時にゼクードが記憶を回復させたことも確信した。
あのナイトと互角にやり合えるゼクードの動き。
あのキレッキレの挙動はお父さん以外には有り得ない。
まさに達人の動き。
良かった。
お父さん記憶が戻ったんだ。
本当に良かった。
「って! ホッとしてる場合か! お父さん! ナイト! やめて! 戦わないで!」
「おおおお!」
『オオオオ!』
グロリアの声は届かず、二人は戦いをやめない。
激しさを増していく二人の死闘。
もはやいつどちらかの首が飛ぶか分からない。
このままではマズイ!
せっかくお父さんが来てくれたのに!
お父さんとナイト。
そしてカーティスが組めば、あのセレンを倒すことだって夢じゃないはずなのに!
なんとかしないと!
『ど、どうしようグロリア……パパが……!』
隣でリィが困り果てている。
「アンタも頭を使いなさいよ!」
『ふえぇ……』
頼りにならないリィは放っておいて、グロリアは辺りをまた見回す。
しかし何度見ても点々と木が生えてるだけの草原が広がっているだけ。
脇目には湖。
あの二人を湖に叩き落とすか?
いや、どうやって?
あんな速すぎる戦いの間に割り込んだらこっちが死ぬわ!
でも殴り倒すぐらいの事はしないと二人とも止まりそうにない。
一瞬でも動きを止められれば。
「! そうだ! 一瞬だけなら!」
閃いたグロリアは近くの木を両手で掴んだ。
「これで! オラアアアアアアアアアッ!」
根っ子ごと木を地面から引き抜いた!
『わああああ! グロリアすごい!』
リィの歓声を聞き流し、グロリアは引き抜いた木をゼクードとナイトの戦場のド真ん中へブン投げた!
「やめろっつってんでしょうがあああああああああああああああああああああああああ!」
グロリアの2倍以上もある長い木が投げられた!
それに気づいたゼクードとナイトは驚愕する!
「うお!?」
『なん!?』
真っ直ぐ投げられた木は見事にゼクードとナイトが交差する戦場を割った!
地面に突き刺さり土煙が巻き起こる。
予想外の横槍に思わず後退したゼクードとナイトは間合いを空ける形になる。
今だ!
っとグロリアは全力で駆けた!
まずはゼクードへ!
「何するんだグロリア! 援護ならもっと丁寧に――」
「うるさい!」
ゴンッ!
「おぶうっ!?」
グロリアのゲンコツでゼクードの顔が地面に埋まった。
『邪魔をするなグロリア! これ以上邪魔するならお前も――』
「うっさい!」
ゴンッ!
『うごおっ!?』
グロリアのゲンコツでナイトの顔が地面に埋まった。
「……よし。止まった」
ふぃ〜っとグロリアが息を吐く。
『ひ、ひどい……』
あまりにも力技すぎるグロリアに、リィはドン引きした。