【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第326話【対面した二人】

「私たちも……旅に出るか?」

 

「え?」

 

「グロリアと一緒に……カレン達も連れて……【フォルス家】のみんなで世界を回るんだ。もしかしたらグロリアを救う方法があるかもしれない」

 

 カティアの言葉にフランベールは目を丸くした。

 

 世界を回るなんて考えたこともなかった。

 

 でも、そうだ。

 世界はまだ知らないことばかりだ。

【ハーティシオ王国】だって今まで知らなかった。

 

 この大陸のすべてを知っているわけではない。

 海の向こうさえ知らない。

 もしその先にグロリアを救う方法があるのなら……

 

「なに泣いてんのよフラン」

 

 聞き覚えのある声に叩かれて、フランベールはカティアの胸から顔を離した。

 声の主を見やれば、そこには姉のリリーベールと娘のレミーベールが入ってきていた。

 

「姉さん!? レミー!?」

 

「……話はレミーから聞いたわ。グロリアがドラゴン化したそうね」

 

 リリーベールがそう言い、フランベールとカティアはレミーベールを見た。

 彼女がリリーベールに全てを話したらしい。

 

 なんと返せば良いか分からずフランベールは俯く。

 カティアも表情を濁して口を閉ざす。

 重い沈黙が始まると、リリーベールは口を開いた。

 

「子供たちは私が見ていてあげるから……早く行ってあげなさい」

 

「え?」っとフランベールは顔を上げた。

 思わぬ返しに虚を突かれカティアとレミーベールもリリーベールを見る。

 

「あの子……グロリアは一人で旅に出るつもりなんでしょう? もう二度とエルガンディへは帰らないって」

 

「それは……」

 

「あんた達はそれでいいの?」

 

 リリーベールに問われ、フランベールは即答した。

 

「良いわけないよ! でも、どうすればいいか分からないのよ……」

 

「なら……やっぱり早く行ってあげなさい。それしかないわ」

 

「行って……どうすればいいの?」

 

 救う方法が分からないのに、グロリアと会って何をどうすればいいのか。

 やはりみんなで世界を回るしか……

 

「話しなさい」

 

「え?」

 

「ちゃんと話すのよグロリアと。それだけでいいから」

 

「それじゃ……なんの解決にも……」

 

「フラン……この件はきっと……解決できないわ」

 

 リリーベールのその言葉は場を凍りつかせた。

 あまりに残酷な現実を突きつけられたようだった。

 解決できないと断言され、フランベールもカティアもレミーベールも息を呑む。

 

「……だからグロリアと会って、家族みんなで話し合って、ちゃんと決めてきなさい」

 

「何を決めればいいのよ……グロリアを救えないんじゃ、なんにも……」

 

「そうやってグズってたって何も進まないわよ。このままじゃ後悔していつまでもズルズルといくわ。もしみんなそうなったら【フォルス家】は崩壊する」

 

【フォルス家】が崩壊!?

 内心で驚いたが、大袈裟にも聞こえなかった。

 この『後悔』はきっと後(のち)に大きくなって、みんなを病ませる。

 

 だから姉リリーベールは後腐れないように話を付けて来いと言っているのだろう。

 

「だから後悔しないように話をつけて来なさい。子供の事は心配しなくていいから」

 

「姉さん…………」

 

「私がしてやれる事はこれだけよ。あとはアンタたちが何とかしなさい。無理矢理連れ戻すも良し。そのまま別れるのも良し。……グロリアと一緒に旅に出るなら……せめて子供は引き取りに来なさいよね」

 

「……ありがとう……姉さん」

 

「ふふ、たまには姉らしいでしょ? ほら、急いで準備して行きなさい。カティアもレミーも」

 

「はい。ありがとうございますリリーさん」

「伯母さん。本当にありがとう」

 

 カティアとレミーも頭を下げて、そして準備を急いだ。

 

 フランベールとカティアとレミーベールは馬を駆けさせ【エルガンディ】を後にする。

 

 

「【真・竜突き】!」

 

 持てる気を振り絞った全力の突きをカーティスは放った。

 その一撃はまっすぐセレンの鼻先に当たる。

 

「くあっ!」

 

 衝撃で顔を大きくのけぞらせ、セレン本体も地面をスライドする。

 

 バサッと背中の羽を広げて勢いを殺し、態勢を整えたセレンは――――

 

「【真・竜斬り……」

「はっ!?」

 

 すでに肉薄していたカーティスの剣が首に!

 

「……天空】!」

 

【真・竜斬り・天空】

 それは跳躍による気を纏った斬り上げ。

 セレンの顎にロングブレードの刃が打ち付けられる。

 

「うぐっ!」

 

 天へ打ち上げられたセレンは、その刹那の瞬間に何十にも及ぶ斬撃を叩き込まれた。

 これがこの【天空】という斬り上げ技の真骨頂。

 

 斬り上げ、天へ打ち上げられた瞬間に無防備な全身を斬り刻む大技。

 

 しかしそれだけでは終わらない。

 

 カーティスは飛び、打ち上げたセレンに追撃する。

 

「【真・竜斬り・轟】!」

 

 グロリアが得意とする力技。

 それをセレンに叩き込み地面へと落下させた。

 落ちた衝撃で土煙が舞い、セレンが見えなくなった。

 

 カーティスは地面に着地し、見えなくなったセレンを気で把握した。

 

 ……恐ろしいことに、これだけ手応えを感じたのに、セレンの気が弱まる気配がない。

 

 まるで無尽蔵だ。

 奴の体力はどうなっている。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 かなりの時間を全力で戦っていたカーティスは、さすがに息が上がりつつあった。

 斬っても斬っても通じないセレンを相手に、スタミナが持たなくなってきている。

 

 このままでは消耗戦で負ける。

 

 しかし当のセレンはケロッとした表情で土煙の中から現れた。

 もちろんダメージらしいダメージはない。

 なんてことだ。

 あの肌を覆う竜鱗には【真・竜斬り】が通用しない。

 これだけやっても傷一つ付かないとは。

 

「無駄よカーティス。もう諦めなさい」

 

「これだけやって無傷とは……さすがにショックだな」

 

「息も上がってきてるみたいね。私はまだまだイケるけど、続ける?」

 

 そう言いながら、余裕の笑みを浮かべてセレンはゆっくり近づいてくる。

 カーティスは息を整え剣を構えて睨んだ。

 

「あ、そういえば」

 

「?」

 

「あのローエってヤツがゼクードの事を知ってる風だったわね。あなたは知ってるの? ゼクードの居場所」

 

「さぁな」

 

 知っていても教える気はない。

 コイツに【エルガンディ】の場所を教えるわけにはいかない。

 

「……ねぇカーティス。ゼクードの居場所を教えてくれたら、あなたの命は助けてあげるわ。今までの事も許してあげる」

 

「なんだと?」

 

「また私の家族にしてあげるってことよ。ね? ゼクードの居場所を教えて? 私……どうしてもゼクードに会いたいの」

 

 何が家族だ。

 コロコロコロコロと手のひらを返しやがってドラゴン風情が。

 

「悪いがゼクードの居場所は知らん。仮に知っていたとしてもお前みたいな危険な奴に教えるわけないだろう」

 

「あっそ。ならもういいわ。あのローエを追いかければゼクードに会えそうだし」

 

「オレが黙って行かせると思うなよ」

 

「もう飽きたわ」

 

「なに?」

 

 次の瞬間!

 セレンは翼を広げて大きく羽ばたいた。

 一気に飛翔し、遥か空へ。

 

「待てセレン! 逃げる気か!」

 

「ふふ……すばしっこいあなたには、この方が楽だと思って」

 

 嗤うセレンは大きく息を吸い込んだ。

 その仕草を見て直感する。

 

 ブレスが来る!

 

「燃え尽きろおおおおおおおおおあ!」

 

 蒼炎のブレスが天から降り注ぐ。

 そのブレス範囲は広大で今から回避しても間に合わないほどだった。

 

 これがレィナさんやリイドをやったブレスか!

 避け切れない広さだ!

 どうする!

 

 迫りくるブレス。

 立ち尽くすカーティスは全身を強張らせて剣を構え直した。

 

 避けられないなら捌くしかない!

 あの質量のブレスを相手に捌き切れるか?

【真・竜めくり】で。

 

 いや、迷ってる場合じゃない。

 捌き切れなかったら焼け死ぬだけだ。

 覚悟を決めろ!

 

 ロングブレードを握る手に力を込めて、カーティスは姿勢を整える。

 ブレスはもう目の前。

 しくじれば死ぬ!

 

 そう思うと不意にオフィーリアの顔が浮かんだ。

 

 ……すまないオフィーリア。

 約束は守れないかもしれん。

 オレたちの子供を……頼んだぞ!

 

 意を決してロングブレードを振りかざそうとしたその時!

 

「カーティス! 合わせろ!」

「え!?」

 

 突如として聞こえてきた父ゼクードの声!

 

 気がつけば彼はカーティスの隣に立っていた!

 

 同じ【真・竜めくり】の構えを取っている。

 

「と、父さん!」

「行くぞ! せーのっ!」

「っ!」

 

【真・双竜《ツインドラゴン》めくり】

 

 2つの剣圧がブレスに打ち放たれ、巨大だ突風と化す。

 それはセレンのブレスを見事に相殺した。

 

「ふぅ! 間に合ったな!」

 

「父さん! 記憶が回復したんですね!」

 

 あまりの嬉しさにカーティスは声を弾ませた。

 憧れだった父が回復して助けに来てくれた。

 夢のようだ。

 

「ああ! 心配かけてごめんなカーティス。でももう大丈夫だ」

 

「父さん……」

 

 良かった……本当に良かった……

 

 歓喜のあまりカーティスはセレンを忘れて泣きそうになってしまった。

 

「無事で良かったよ。さすが俺の息子だ」

「父さん……」

 

 ……こんなに嬉しい言葉はない。

 自分を誇ってもらえるとは。

 

「さて……」っとゼクードは空にいるセレンを見上げた。 

 

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