【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第327話【偽物】※後書きにDセレンのイラストあり!

 遠い過去で見た記憶が蘇る。

 

 紫色の長髪。

 

 桃色の丸い瞳。

 

 それは間違いなく死ぬ前に見た母セレンのそれだった。

 

 しかし身体が竜鱗に覆われている。

 翼も生えており、爪もある。

 

 顔こそ人間だが、どう見ても人外だ。

 

 あれがS級ドラゴンの心臓で蘇ったという俺の母親セレン・フォルスか。

 

 レミーには聞いていたが、本当に若いな。

 どう見ても少女じゃないか。

 胸もあんなにあったっけ?

 

「あ……あなたは……」

 

 鼻をクンクンとしたセレンが目を限界まで見開いた。

 どうやら俺の匂いに気づいたらしい。

 

「ゼクード……あなたなの?」

 

 震える声。

 全身をも震わせてセレンは舞い降りてきた。

 

「この匂い……間違いない……あぁゼクード! あなたなのね! 私よ! あなたの母親セレンよ!」

 

 セレンは目に涙を浮かべながら俺の元へと走ってくる。

 そんな母を俺は【ブレイブエルガンディ】を突き付けて出迎えた。

 

「え……ゼクード?」

 

「お前がドラゴンセレンか。ずいぶんと俺の家族をメチャクチャにしてくれたじゃないか。お前……覚悟は出来てるんだろうな?」

 

 怒り。

 ゼクードは本気で怒って、睨み付けていた。

 その怒りが本物であることを察したセレンは慌てて反論した。

 

「ち、違うのよゼクード!」

 

「何が違う? たった今カーティスを焼き殺そうとしていたな?」

 

「それは……」

 

「グロリアもかなり痛めつけたと聞いた」

 

「違うのよ! グロリアもカーティスも私に逆らうから!」

 

「俺のオヤジを……フォレッド・フォルスを殺したのもお前だと聞いた。ローエを襲ったのだって……全部お前が!」

 

「やめてよゼクード! せっかく会えたのに何よ! なんでそんなに怒ってるのよ!」

 

 セレンの叫びにゼクードはギリッと歯が欠けるほど食い縛り、塚が軋むほどロングブレードを握り締めた。

 

「本物の母さんはそんなことしない!」

 

 ゼクードの本気の怒声が空に響いた。

 それはセレンどころかカーティスさえも畏怖するほどの威圧感があった。

 

 こんなにも怒りを露わにした父を初めてみたカーティスはゼクードを凝視する。

 セレンも竦み上がり一歩下がった。

 

「ほ、本物の母さんって……なにを、言ってるの?」

 

 セレンの怯えた上目遣いが(何故?)と問うている。

 なぜゼクードがここまで怒っているのか本気で分からない様子だった。

 

 セレン・フォルス。

 彼女がゼクードにとってかげがえのない存在だったのは言うまでもない。

 

『ごめんね……ゼクード……お母さんは…………もぅ……』

 

 過去の記憶が蘇り、掠れていく母の声を思い出した。

 優しい母のぬくもりが消えていく感覚。

 それは今でもハッキリ覚えている。

 

 セレンは……お母さんは心配性だったから、ゼクードはいつだって強がっていた。

 心配させたくないから。

 

『大丈夫だよお母さん! お婆ちゃんもいるし! 俺、父さんより強い騎士になるから! だから大丈夫だよ! 本当だよ!』

 

 自分が泣いてることにすら気づいてない少年が言った。

 母の手をしっかりと握り、安心させようと必死だった。

 

『強くなったら女の子にモテるって父さんが言ってたから、俺、強くなるよ! そしていっぱい家族を作るから! だから……大丈夫だよ!』

 

『そぅ…………見てみたかったな……ゼクードの…………家族……――――』

 

 その言葉を最後にセレンはこの世を去った。

 あの日ほど泣いた日はないだろう。

 あの日ほど本音をぶつけたかった日はなかった。

 

 死なないでお母さん!

 置いてかないで!

 もっと一緒に居たいよ!

 

 お母さんが大好きだ!  

 もっとお母さんと遊びたい!

 抱きしめてほしい!

 

 キスしてほしい!

 撫でてほしい!

 愛してほしい!

 

 ずっと側にいてよ!

 

 ……それらが叶わぬと、童心ながらに分かっていたんだろう。

 死にゆく母を困らせたくなかったから。

 安心して眠ってほしかったから。

 

 それが……今はどうだ?

 S級ドラゴンの心臓で蘇ったセレンは、俺の家族をメチャクチャにしている。

 

 俺の家族を見てみたかったと、そう言って死んでしまった母がだ。

 その心臓に身体を弄ばれて、自分の手で息子の家族を手に掛けている。

 

 こんな地獄があるか?

 いったいなんの拷問だ?

 俺の母さんが何をしたと言うんだ?

 

 父さん……あんた……本当にとんでもないことをしてくれたな。

 母さんを待たせるだけ待たせて、あげくこんな姿にしてしまうなんてさ。

 

 ……だけど、もういいよ。

 これは身内の不始末だ。

 俺がきっちりカタをつける。

 そのために来たんだ。

 

「もう家族面はやめろ」

 

「なっ!?」

 

 セレンが驚愕するがゼクードは構わず続けた。

 

「肉だけの母なんているものか。お前はセレン・フォルスじゃない!」

 

「な、なんですって!? ゼクード……あなた!」

 

「行くぞカーティス。力を貸してくれ」

 

「了解!」




DセレンのAIイラスト

【挿絵表示】

意外と胸がある。
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