【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった 作:ミズノみすぎ
「行くぞカーティス。力を貸してくれ」
「! はいっ!」
カーティスの返事にゼクードは頷き、セレンに向き直る。
そして共に剣を構えた。
これが息子との初めての共闘か。
しかもその相手がセレンとは……
なんにせよカーティスの消耗を考えれば長期戦は避けたい。
だが、避けられる相手でもないだろう。
ここに来るまでグロリアから聞いたが、セレンの弱点は胸の奥にあるS級ドラゴンの心臓だ。
そこを潰せばセレンを倒せるかもしれない。
だが突破が難しいらしい。
あのカーティスがここまで苦戦しており、なおかつセレンが無傷でいる現状そのものがソレを物語っている。
カーティスの攻撃が通用しないとなると、俺の攻撃もきっと通らないはずだ。
【真・竜斬り】を超える攻撃力を得るには
だが……今はそれは使えない。
俺とカーティスにできる事はセレンの撃退。
おそらくそれが精一杯だろう。
カーティスとの連携で猛攻し、セレンを追い返す。
それしかない!
「おおおおっ!」
咆えたゼクードが踏み込み、そして消えた。
次の瞬間にはセレンの腹を斬り抜く!
しかしゼクードの斬撃は打撃へと変わり、セレンを怯ませる。
「あぐっ!?」
セレンが歯を食いしばるが、間もなく連携したカーティスの追撃を顔面にくらう。
「んあっ!」
鉄棒で殴られたかのようにセレンは吹き飛ぶ。
ゼクードは久しぶりに刃の通らない感覚を覚えた。
なんて硬度だ。
あのピンクの竜麟は今で戦ってきたどのドラゴンのよりも堅い。
まるで鋼鉄の人間を殴ってるような感覚だ。
吹き飛ばされたセレンは空中で何度か回転してから受け身を取る。
そしてキッとゼクードを睨んだ。
「どうしてよ! どうしてあなたまで!」
「うるさいっ!」
怒声を張り上げたゼクードの容赦ない一閃がセレンの首に直撃。
しかし火花を散らしただけで斬れなかった。
首に打撃をくらった形になったセレンは一瞬だけよろけてしまう。
そこをカーティスがまた追撃した。
【真・竜斬り・紅蓮虎】!
炎を纏った突き刺し!
放たれる炎は虎を形成し、セレンを襲う。
「こんのっ!」
バサァッとセレンは両手を翼に変えてカーティスの炎を掻き消した。
背中の翼と、翼と化した両手。
計4つの翼がセレンに生えた。
セレンは怒りを滾らせ、翼膜にピンクの光を溜めていく。
何をする気だ? とゼクードが目を凝らすとセレンは嗤った。
「避けられるかしら?」
4つの翼が羽ばたかれ、溜まったピンクの球光を発射してきた。
その弾幕の密度は決して安易に避けられるものではない。
隙間がほとんど見えない。
「父さん! あの光は触れると爆発します!」
「わかった! 突っ込むぞ!」
「はい!」
端から聞けば、この親子のたった今の会話は頭のおかしい会話にしか聞こえなかっただろう。
おぞましい密度の弾幕が迫ってきているのに、ゼクードは突っ込むぞとカーティスに言った。
カーティスも迷いなく了承した。
普通なら距離を取って回避に専念するだろう。
普通の騎士なら。
だがこの二人は違う。
あの爆弾の雨を突破するだけの能力がある。
「「おおおおおおおっ!」」
雄叫びを上げながらゼクードとカーティスは弾幕を突破した。
ひとつの被弾もなく親子は並走する。
もし一緒に戦っているのがグロリアやローエだったならば、ゼクードは突っ込む事などしなかった。
一緒に突破できるカーティスだからこそ突撃を選択した。
自分と実力がほぼ同じの息子がいる。
それのなんと心強いことか。
こんなにも安心して隣を任せられる仲間は他にいない。
カティアも、ローエも、フランベールも……あのネオでさえそうはならなかった。
ずっと求めていた俺について来れる味方騎士。
それがまさか自分の息子だとは。
こんなに嬉しいことはない。
「行くぞカーティス! 斬れなくていい! このまま攻め立てる!」
「了解!」
ゼクードの全力疾走にもカーティスは付いてくる。
限界速度が同じだとこうも合わせやすいのか。
カーティスと一緒に戦っていると妙な心地良ささえ覚えてしまう。
「こっちに来ないで!」
セレンが怒声と共に翼を振り回す。
ただ振り回してるのではなく、羽の切っ先から蒼い炎が発生し、それは遠心力で羽から放たれ蒼炎の刃と化して飛来!
その蒼炎の刃は音速にも等しい速度でゼクードとカーティスに何十発と向かっていく。
しかしゼクードとカーティスは止まらない。
普通の騎士なら避けるのでさえ困難であろう速度の蒼炎の刃を剣で弾きながら突き進んでくる。
蒼炎の刃群を突破して肉薄してきた二人に、セレンは恐怖し慌てて空へと浮上した。
空ならゼクードとカーティスは飛べない。
追撃はされないと思ったのだ。
ある程度の高さまで飛んだセレンは地上を見た。
そこには
「どこ見てやがる!」
「え!?」
セレンより上にゼクードが!
「【真・竜斬り・轟】!」
「【真・竜斬り・天空】!」
上からゼクード。
下からカーティスの声が弾けた。
上下挟み撃ちの剣戟をモロにくらったセレンは地面へと落下。
受け身を取り損ねて何度か地面をバウンドした。
すぐに起き上がったが、顔を上げた瞬間に!
「「【真・竜突き】!」」
すでに接近していたゼクードとカーティスの突きがセレンの両目を潰した。
「きゃあああああああ! 眼が、眼があああああ! また眼を! 眼をおおおおおおお!」
さすがに眼は脆かったらしいセレンはのたうち回った。
この機を逃すまいとゼクードとカーティスは追撃しようとするが。
「お父さん! カーティス! 避けて!」
グロリアの声が突如として弾けて、それにハッと反応したゼクードは「カーティス! 下がれ! 黒雲だ!」と指示を飛ばす。
空を見たカーティスは理解しすぐに下がった。
すると次の瞬間、雷が落ちた。
それはセレンに直撃する!
「いやぁあああああああああああああああああ!」
眼のダメージで苦しんでいたところへの更なる追撃だった。
遠くを見れば娘のグロリアが手を振っている。
その娘の隣にはナイトとリィの姿があった。
良いタイミングだ。
ちゃんと雷を当てるとはやるじゃないかアイツ。
片目が疼く因縁の相手にゼクードはそう思った。
雷は強力だが、かなり体力を使うらしい。
おまけに発動までにも時間が掛かるとかなんとか。
アイツの母親はバカスカ雷を撃ってた気がするが、どうもナイトにはそれができないみたいだ。
だから俺が先行し、カーティスと合流してセレンを追い詰める。
そこで動きが止まったところを雷でズドン。
最初からそういう作戦だった。
「ぐ……ゼクード……私を……怒らせないで!」
「……まだ立てるのか。あれだけやって立たれるのも初めての経験だよ。だが……」
ゼクードが剣を構え、カーティスも剣を構え、さらにナイトがゼクードの隣に着地し戦列に加わった。
それを見たセレンが顔を険しくする。
「これで3対1だ。どうする? 続けるか?」
「くっ!」
セレンは跳躍すると翼を広げて飛び去った。