【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった 作:ミズノみすぎ
「限界突破・竜斬り……超大型ドラゴンに使ったアレか」
カティアの言葉にゼクードは頷く。
「ああ。俺の【真・竜斬り】を【限界突破付与】すれば、セレンの竜鱗を突破できるかもしれない」
あくまで可能性だが、これで突破できなければセレンに対する抵抗手段はない。
人間の負けだ。
「【限界突破付与】!? 父さんそれは……剣が壊れてしまうのでは?」
カーティスの不安はまさにその通りだった。
昔使っていた父の形見であるロングブレードを壊してしまったのも、この【限界突破付与】が原因だ。
だがあの時もそれしか打開策がなかったのだ。
剣一本で仲間の命を守れるなら安い代償だった。
「そうだ。このオリハルコン製の剣でも長くは持たないだろう。だがそれしか方法はない」
「でしたら父さん。せめて剣を取り替えませんか? オレの剣を使ってください。国王様から頂いた剣を壊すわけにはいきません」
【ブレイブエルガンディ】。
先代国王のために作られたらしい王国の剣。
その国王の息子たるアスレイ陛下から譲り受けた長剣。
それを国を守るために使うのなら、陛下は許してくださるだろう。
だがこれは【フォルス家】の問題であり、その解決のためにこの長剣を犠牲にするのは間違っている気がした。
「……そうだな。なら頼むよ」
ゼクードは【ブレイブエルガンディ】を鞘ごとカーティスに渡した。
カーティスも装備した長剣をゼクードへと渡す。
かなり前に一度だけ使ったことがあるカーティスの長剣。
やはり俺の調整と同じで重さや握り具合などに違和感がまったくない。
【ブレイブエルガンディ】と同じ感覚で使える。
「この剣……銘はあるのか?」
「あります。【レクスオブルージュ】です」
「【紅い王】か。カッコ良いじゃないか」
「ありがとうございます。その……父さんが昔つかっていた【ハーズヴァンドオブリージュ】。あの名前に近づけたかったので」
「なるほど」
俺はカーティスの憧れの対象だったんだなと、改めて自覚して嬉しかった。
あと名前を似たようなものにしようとする息子のカワイイ一面も見れて満足した。
「……悪いなカーティス。お前の相棒使わせてもらうよ」
「はい!」
カチンと同じタイミングで父と息子は納刀した。
そしてゼクードは前に並ぶ家族たちを見渡す。
「みんな……もうここまで来てしまった以上、セレン討伐に最後まで付き合ってもらうぞ。いいな?」
みんなは静かに頷いた。
ゼクードも頷き、ゆっくりと続ける。
「俺たちが今一番に考えなきゃならないのは……この事態をなんとかする事だ」
目標を確認するようにゼクードはみんなに告げる。
「みんな思うことはそれぞれあると思う。でも今は何より……セレンを……親父の不始末を片付けたい。フォレッド・フォルスの息子として……【フォルス家】の大黒柱として……その責任を果たしたい」
本来ならゼクード一人が背負うべき問題だが、一人では解決できない問題だ。
解決できなかった場合……その代償はおそろしく高くつくだろう。
俺の家族だけじゃない。
グリータや、リリーベールさんや、陛下や、レイゼ女王……みんなの命が危険に晒される。
人類最強の騎士である責任も兼ねて……この問題は何がなんでも解決せねばならない。
「こうしてみんな揃ったのなら、これも家族の縁だ。どうか俺に……みんなの力を貸してくれ」
みんなは……俺の家族たちは迷わず頷いてくれた。
★
話がまとまった後、ゼクードはローエと共に見張り役についた。
日は沈み、辺りは暗い。
月光だけが草原を照らす。
風もやや冷たい。
他のみんなは焚き火を囲み暖を取り、食事やテントなどで休息を取る。
さすがにカーティスは疲れがピークに来ていたらしく、テントで死んだように眠ってしまった。
セレンとの長期戦がさすがに堪えたようだ。
あれだけ疲れていたにもかかわらず顔色一つ変えないで立っていたのはさすがのタフネスと言っていいだろう。
みんながカーティスを頼るのも分かってしまう。
カーティスはなかなか休まないらしい。
だが、今は俺がここを受け待つと言ったら凄くあっさりと休んでくれた。
理由は……やはり俺なんだろう。
俺がこの場を守るなら安心できる。
そうカーティスは感じてすぐに眠ることができたんだ。
あんなに安心して眠るカーティスはなかなか見ないとレミーベールも言っていた。
なら良かった。
ゆっくり休んで疲れを癒やしてくれカーティス。
俺は……――――
『どうか、お母様と仲直りしてくださいね? オラージュたちのためにも』
ちょっと前に言われたカーティスの言葉を思い出し、ゼクードは意を決してローエの元へ歩み寄った。
「ローエ」
呼ばれたローエはゼクードに振り向くと、やや気まずそうな顔になった。
おそらく俺も同じ顔をしているだろう。
「あなた……」
「その……さっきは、怒鳴ってごめん」
ゼクードはまっすぐ妻に頭を下げた。
ローエは驚き目を丸くする。
「ローエの気持ちは分かってたんだ。俺も同じ立場なら、きっとローエと同じことをしてた」
「ゼクード……」
「だから、ごめん」
もう一度だけ言葉を力強く発して謝った。
自分もローエと同じ行動を取ると分かっていながら、娘を想う気持ちは同じだと分かっていながら……あの時、怒鳴ってしまった。
妻にバカ野郎と罵声まで浴びせてしまった。
カーティスにも怒り過ぎと指摘され、自分の器の小ささを再確認させられた。
どんなに大きな家族を持っていても、所詮はまだ17歳の若造ということか。
「ううん。わたくしこそ勝手に飛び出してごめんなさい。わたくしも……あなたと同じ立場なら同じことを言っていましたわ」
さすが2歳年上の妻ローエだ。
自分の非を認めて謝る。
それができるのは昔からある彼女の魅力の一つだ。
俺の目線にも立って謝ってくれるのは個人的に心が救われる。
「そうか……でも良かった。許してもらえないかもって不安だったよ」
「正直……わたくしもですわ。いつ謝ろうかって、悩んでましたの」
「ローエも?」
「あなたに先を越されましたわ」
小さく笑うローエに釣られてゼクードも笑った。
同じ事を考えていたという嬉しい事実に、心が暖かくなってきた。
もう許し合えただろうと分かった二人は、締めにそっと仲直りのキスを交わした。
何度かローエの頭を撫でてから、ゼクードは身体を離して口を開く。
「なぁローエ……グロリアの事で話があるんだ」
「!」
とろんとしていたローエの顔が真剣なものになった。
「……グロリアとは、どんな話を?」
「はは……今までのツケが回ってきたみたいに心をボコボコにされたよ。変な話……母さんを亡くした時よりキツかったな……」
「やっぱり……そうでしたのね……」
「でもグロリアは約束してくれたよ。セレンの件が片付いてもすぐには旅に出ないって。アイツもそう言ってただろう? すぐには居なくなったりしないって」
「あれ本当にそういう意味だったんですの!? じゃあ【エルガンディ】には帰ってきますのね!」
「ああ。グロリアだって本心は【エルガンディ】に帰りたいんだ。だから……この件を片付けたらあの子を救う方法を探そう」
「あぁ良かった……ゼクード……ありがとう……本当にありがとう……」
抱きついて泣いてくるローエを優しく抱き止め、ゼクードは苦笑しながら妻の頭を撫でた。
「はは、なんでお礼を言うんだよ。まだ何も出来てないのに」
「だってわたくし……あの子を引き止める方法が思い付かなくて……もう一緒に旅に出るしかないって、思ってましたもの……」
「そっか……」
苦しかったんだなローエも。
俺と同じで何も思い付かなくて藻掻いてたんだ。
「でもゼクード。あの子を救う方法はどこで探すんですの?」
「もちろん【ハーティシオ王国】さ」
「え? でもあそこはもうセレンに全部燃やされたって……」
「いや、あんな頭のおかしい実験を表立ってやるわけない。【オルブレイブ】と同じく地下があるはずだ。地下ならセレンのブレスは届かない。資料も残ってる可能性がある。そこに賭けてみよう」
何か手掛かりが残っていればいいが。
「……やっぱりあなたって、本当に頼りになりますわね」
「惚れ直した?」
「うん。とっても……ありがとうゼクード」
「礼を言うのはまだ早いよローエ。まずはセレンをなんとかしてからだ。絶対に死ぬなよ?」
「ええ……あなたこそ」
「俺は死なないよ。まだまだローエたちと寝たいしな」
「バカ……」