【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第333話【セレンの元へ】

 あと数時間の移動で【ハーティシオ王国】に着くというところで夜になってしまった。

 

 ゼクードたちは馬を降りてキャンプを設置し、食事と休息を取る。

 

 ゼクードとカーティスは見張り役になり、女性陣の安息を守る。

 

 ドラゴンの気配がないか目配せしていると、暗い草原の奥からカーティスがやってきた。

 

「父さん。異常はありません」

 

「そうか。こっちもドラゴンの気配は無しだ」

 

「了解です。……あの、実は父さんに伝えねばならないことがありまして」

 

「ん? ハーレムのコツか?」

 

「違います。オレはオフィーリア一筋です。実はお爺ちゃんからの遺言を預かっているんですよ」

 

「オヤジからの遺言!?」

 

「はい。言うタイミングがなかったので遅れましたが……」

 

「オヤジはなんて?」

 

「『帰って来れなくて。一人にしてしまって。本当にすまなかった』と言っていました」

 

「……そうか。遺言って、オヤジの謝罪だったのか」

 

「はい」

 

 ……もういいよオヤジ。

 事の顛末はレミーベールから聞いたよ。

 一度は全てを失ったもんな。

 母さん(セレン)義母さん(ロゼ)も。

 

 それで心が弱ってる時に母さんを取り戻せる手段を見つけてしまったんだ。

 その手段がS級ドラゴンの心臓の移植。

 

 そんなものをよくも母さんにやってくれたなバカ野郎って言いたいけれど、俺もオヤジと同じ状況になったら……きっと同じことをしてたかもしれない。

 

 ローエが死んで、

 カティアが死んで、

 フランベールが死んで、

 カーティスが死んで、

 グロリアが死んで、

 レミーベールが死んで、

 オラージュ・カレンティア・リィンベールも死んで、俺だけが生き残ってしまったら……

 

 オヤジの状況は、まさにそんな状況だったんだろう。

 

 なんの希望もなかったに違いない。

 

 英雄の末路としては、あまりにも惨めだ。

 

 孫のカーティスに看取られたのが、せめてもの救いだった。

 それだけは本当に良かったと思う。

 本当は生きていて欲しかったが。

 

「お爺ちゃんは父さんの生存を知ったとき、これ以上にないほど歓喜していました」

 

「本当に?」

 

「はい。大の男が鼻水を垂らしながら号泣していました」

 

「はは、なんだそれ。すごく見てみたいな」 

 

「お爺ちゃんは、本当に父さんの事を想っていたんだと思います」

 

 俺が生きていたことを知って号泣か……

 

 愛してくれてたんだな。俺の事……

 

 そりゃそうか。

 

 あんなに優しいセレンとロゼが愛した男なんだから。

 

「……それを知れて良かったよ。ありがとなカーティス」

 

「いえ」

 

「オヤジには俺の家族を自慢したかったんだけどなぁ……」

 

「はは……その前に父さんの若さに驚いてひっくり返ると思いますよ」

 

「確かに! ははっ! それはそれで見てみたいかな!」

 

 一家の最年少が大黒柱のゼクードだと知ったらオヤジはどんな顔をするのだろう?

 本当にひっくり返りそうで、想像したらなんか笑えてきた。

 

 

【フォルス家】の旅も順調に進み、ようやく【ハーティシオ王国】へと辿り着いた。

 

 焼けた城壁と黒焦げの屋根が見え隠れしている。

 

「ここが【ハーティシオ王国】か……」

 

 ゼクードが言うと隣でグロリアが頷く。

 

「そうよ。ナイトの匂いはやっぱりここに続いてるわ」

 

「凄い……本当にこんなところに別の文明があったなんて……」

 

 感動しているのはフランベールだった。

 元教師なだけあって思うところがあったのだろう。

 

「世界にはまだ我々の知らない文明がたくさんありそうだな」

 

 カティアが言うとフランベールは頷く。

 

「きっとあるよ。わたしたちはもっと生活範囲を広げるべきなんだわ」

 

「落ち着けよフラン。今はセレンに集中だ」っとゼクード。

 

「あ、うん。ごめんなさい。ちょっと興奮しちゃって……」

 

「あ! あそこ! ナイトとリィがいるわ!」

 

 グロリアが指差した場所は城門前。

 腕を組んで立っている人型の黒竜がいた。

 彼の肩には小さな翼を持つ小柄の竜も。

 

 本当にナイトとリィだ。

 どうやら待っていてくれたらしい。

 律儀な奴だ。

 

「あれは!」

「人型!」

 

 カティアやフランベール・レミーベールが身構えるが、グロリアが言葉で止めた。

 

「アイツらは味方よ。このまえ言ったでしょ?」

 

 そう言いながらグロリアはナイトに近づいていき、何かを話し始めた。

 

 ナイトは相変わらず何を言っているのか分からない。

 グロリアが頷きながらナイトの話を聞いている。

 その成り行きをゼクードたちは見守るしかできない。

 

 ナイトを見ると片目の傷が疼くが、今は味方だ。

 黙っているしかない。

 

「お父さん。やっぱりセレンはここに戻ってるらしいわ」

 

 グロリアが戻ってくるなりそう言った。

 

「そうか。どこに潜んでいるかは分かるか?」

 

「ううん……ここ腐臭や焼けた臭いがキツくてセレンの匂いが分からなくなってるの。だから匂いを辿るのは無理だわ」

 

「ナイトもか?」

 

「あいつなんか鼻が利かないらしいわ。お父さんのせいだって言ってる」

 

 俺のせい?

 よく分からんがザマァみろ。

 こっちもお前のせいで片目が潰れたんだよ。

 

「……そうか。潜んでそうな場所に心当たりはあるか?」

 

「そうね……やっぱりあそこかな?」

 

 グロリアはカーティスとレミーベールを見た。

 見られたカーティスとレミーベールは察したように頷く。

 

「セレンが眠っていたあの大きな建物か」っとカーティス。

「まずはそこを探って見ましょう」っとレミーベール。

 

 ナイトとリィを加えた【フォルス家一行】はいよいよ【ハーティシオ王国】の城門を潜った。

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