【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第336話【フォルス家、全滅】

 地下の調査を終えて上へと戻ってきた。

 階段を登り切ると、そこにはカーティスが望遠鏡を覗いて辺りを調べているのが見えた。

 

 何を調べてるんだろう?

 気になったがその前にレミーベールがこちら寄ってきた。

 

「お父さん! どうだった?」

 

「セレンはいなかったよ。でも重要な場所だった」

 

「重要な場所?」

 

「ああ。この地下はドラゴンの心臓を移植する実験場だった」

 

「こんな場所でか!?」っとカティアが驚いた。

 ゼクードは頷いて続ける。

 

「こんな場所だからだよ。ドラゴンの心臓移植なんて表立ってやれるわけがない」

 

「……確かにな」

 

 カティアが納得すると、この半壊した建物の奥からフランベールがやってきた。

 

「ゼクードくん。これ見て」

 

 渡されたのは騎士の鎧……なのだが素材がおかしい。

 その鎧は明らかにドラゴンの鱗で覆われているのだ。

 

「なんだこれ? 鎧にドラゴンの鱗が付いてる?」

 

 ゼクードの疑問にフランベールが頷く。

 

「この国の防具みたいなの。ドラゴンの鱗や牙なんかも随所に使われてるね」

 

「気持ち悪いな……ドラゴンから剥ぎ取って、それを防具に使うなんて……」

 

「まぁ今のわたし達だと信じられない事だけど、ミスリルやオリハルコンが見つかる前の大昔の人たちはドラゴンから剥ぎ取った素材を使って防具とか武器とかを作ってたらしいの」

 

「じゃあここ【ハーティシオ】って王国は時代遅れな国だったってことか?」

 

「どうだろう? ミスリル製の破片とか落ちてるし、ちょっと分からない。観賞用だったのかも」

 

「観賞用……ねぇ」

 

 だとすると悪趣味だな。

 

「父さん」

 

「ん?」

 

 カーティスに呼ばれてゼクードは振り向く。

 

「望遠鏡で辺りを確認してたんですが、やはりセレンの姿は確認できませんでした。ナイトが戦闘を始めた様子もありません」

 

 なるほど。

 周囲の警戒をしていてくれたのか。

 ありがたい。

 

「そうか。ちょっとカーティスその望遠鏡を貸してくれないか?」

 

「どうぞ」

 

 望遠鏡を受け取ったゼクードは遠くに見える城壁の上を見回した。

 

 見える範囲内だけだが、城壁の上に何機かのバリスタを確認した。

 だがどれも焼けており、損傷が激しい。

 運用するのは難しそうだ。

 

「くそ……使えるバリスタ残ってないか」

 

「バリスタ? 何故ですの?」

 

 ローエの疑問にゼクードは望遠鏡を覗きながら答える。

 

「拘束用バリスタを使えたらなって思ったんだ。ほんの少しでも動きを止められれば【限界突破・真・竜斬り】で仕留められるからな」

 

「でもあのセレンの身体にバリスタが刺さるとは思えませんわ。撃てて当てても拘束できないのでは?」

 

「いや、竜鱗の無い目か口を狙えばブッ刺さるはずだ」

 

「目と口って……そんな小さい的を狙って当てるなんて無理ですわよ。相手も凄い速さで動きますのに……」

 

「まぁ俺たちじゃ無理だな。でもフランなら当てられるだろ。な?」

 

 視線を送った先にはフランベールが苦笑する。

 

「うん。撃てるバリスタがあれば、ね」

 

 

 ゼクードたちはセレン発見のため【ハーティシオ】の探索を続行した。

 

 空は灰色の雲に覆われており、街中の雰囲気は暗い。

 

 燃え尽きた建物が多いが、隠れる場所がないわけではない。

 セレンは人間形態とドラゴン形態の2つの姿を持っている。

 

 人間形態だとゼクードたちとほぼ変わらないどころかかなり小柄なので隠れられる場所は多い。

 奇襲をくらってブレスで一掃されてはたまらない。 

 

 なんとか先手を取りたいところだが、セレンの気配がまったくしないのだ。

 

 街のあちこちを探し回った。

 しかしセレンの影さえない。

 セレンが見つからず戦闘にさえならなかった。

 

 おかしい……いくらなんでもこれは……

 こんなに探して見つからないなんて。

 

 ゼクードたちは街の中央で足を止めた。

 

「どこにもいないな……」

 

 ゼクードが言うとカティアが小さく頷く。

 

「ああ。潜んでいる気配すらない」

 

「ねぇグロリア。セレンは本当にココにいるの?」

 

 フランベールが聞いた。

 グロリアは困ったように頭を掻く。

 

「ナイトがそう言ってたから間違いないと思うけど……」

 

「そのナイトもどこへ行ったのかしら?」

 

 レミーベールがそう言い、ローエが口を開く。

 

「まさかナイトは嘘をついたんじゃありませんの?」

 

「いやいやいや、あいつそんな器用な事できないって。嘘つくメリットもないし」

 

 グロリアがローエの言葉を否定した。

 そんな妻や娘たちのやりとりを聞きながら、ゼクードはあることを考えていた。

 

 グロリアの言うとおり。

 確かにナイトが嘘を付くメリットはない。

 セレンを一人で倒せないのはよく分かってるはずだ。

 

 ならばこの状況はどうだろう?

 ナイトはここにセレンが居ると言っていた。

 しかし当のセレンは見つからない。

 

 ナイトは鼻が利かないと言っていたから、目視でセレンを追っていたはずだ。

 

 だがずっと目をつけていられたわけではないだろう。

 

 その間にセレンが移動してしまった可能性は十分にある。

 

 もしかしたら本当にセレンは【ハーティシオ】から別の場所へ移動してしまったのかもしれない。

 

 それなら街をこれだけ探しても見つからないのも納得だ。

 

 セレンは【ハーティシオ】にはもういなくて、別の場所に飛んで行ってしまったのかも――――

 

 ゼクードが空を見上げると、頭上にある灰色の雲が静かに光った。

 

 それは……閃光!

 

「――――っ! 空だ! みんな逃げろおおおお!」 

 

 ゼクードが叫んだ時にはすでに遅かった。

 ピンクの閃光は矢の如き弾速で【フォルス家】に降り注いだ。

 

 それらは地上に着弾すると大爆発を起こし、爆音に爆音が立て続けに重なった。

 

 鼓膜がやられ、みんなの悲鳴が一気に遠くなっていく。

 

 逃げる間もなくゼクードたちは爆発に飲み込まれた。

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