【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第338話【反撃するために!】

「……死ぬなよ」

 

「もちろんです」

 

 カーティスは建物から飛び出し、セレンの前に姿を現した。

 

「セレン!」

 

 呼ばれたセレンの瞳がギョロっとカーティスを捉える。

 

「カーティス!」

 

「高所からの攻撃とは頭を使ったな」

 

「ついに見つけたわよ!」

 

「家族だなんだと支離滅裂なことを言っているから、ただの阿呆なのだと思っていた」

 

「ゼクードはどこなの!」

 

「さぁな。オレを捕まえて吐かせてみろ!」

 

「言ったわね!」

 

 挑発に乗ったセレンは急降下しカーティスを追い始めた。

 セレンの高度はまだその辺の建物より遥かに高い。

 だがさっきよりはかなり地上に近くなった。

 

 これならローエが回復すればゼクードを打ち上げて攻撃できるはず。

 みんなが回復するまではオレがセレンを引き付ける。

 家族をやらせはしない。

 

 カーティスも走り出し、建物の中へと駆け抜けていく。

 セレンの視界を一時的に遮断できるから追撃も多少は緩くなる。

 

「隠れても無駄よ!」

 

 セレンは口を開けた。

 息を大きく吸い始めている。

 あの超広範囲のブレスが来る!

 

「このブレスからは逃れられないわ。大人しくゼクードの居場所を教えなさいカーティス!」

 

「断る! オレはお前ほど家族に薄情じゃないんだ!」

 

 言い返したカーティスは【ブレイブエルガンディ】を抜刀し【真・竜めくり】の構えを取った。

 

「薄情なのはそっちでしょうが!」

 

 怒声を上げたセレンからブレスが発射され、それに合わせてカーティスも【真・竜めくり】を撃ち放つ。

 ぶつかり合う剣風とブレスは、瞬く間に剣風が押された。

 

「!」

 

「あーはっはっはっ! 一人で防げるとでも思った?」

 

 前回の時はゼクードの力添えが合ったから相殺できたが、やはりカーティス一人の力では相殺は不可能だった。

 

「思ってるわけないだろ」

 

 カーティスはそんなこと最初から分かっていた。

 相殺できなくてもいい。

 ほんの一瞬だけブレスを止められれば、そのブレス自体が目眩ましになる。

 

 濁流のごときブレスに風穴を開け、カーティスはそこ突破してセレンの真下へと逃げた。

 

 それに気づいたセレンがブレスを止めて翼を広げる。

 翼膜からピンクの光が発生し、それは光弾となってカーティスに飛ばされた。

 

「ちょこまかと!」

 

 音速で飛来するピンクの光弾をカーティスは走って避けていく。

 カーティスの凄まじい脚力に、さすがのセレンも簡単には当てられない。

 

「避けるな!」

 

「馬鹿者が。わざわざ当たる阿呆がいるか」

 

 クールに返したカーティス。

 ならばとセレンは口を開きブレスを小出しに連発。

 両腕からも蒼い火球が連射され始めた。

 ピンクの光弾・小出しブレス・蒼い火球と三種の弾幕を浴びせてくる。

 

「ちっ!」

 

 さすがのカーティスも激しい爆撃の連鎖に足を取られそうになる。

 少しでも速度を落とせば爆砕される。

 

「さっきから逃げてばかりじゃない。攻撃しないの?」

 

「だったら降りてこい。好きなだけ斬ってやる」

 

「冗談。あなたはわたしみたいに飛べないから攻撃したくても届かないのよね? 愉快だわぁ。一方的に蹂躪してあげる!」

 

 高らかに笑うセレンに、カーティスは舌打ちした。

 

 ドラゴンの強靭な肉体に人間の知能が加わるとこれほど厄介とはな。

 

 借りにセレンが降りてきたとしても、今のオレの攻撃力では傷1つ付けられない。

 今はこうしてセレンを釘付けにする。

 母さんたちの回復する時間を稼ぐ。

 それでいいんだ。

 

 カーティスはひたすら走り続け、ゼクードたちが隠れている民家から遠ざかっていく。

 

 カーティスはあちこちにある建物を利用して逃げ回る。 

 逃げ込んだ建物は一瞬で塵と化し、ここ【ハーティシオ王国】の大地をひたすらに揺らした。

 

 

 セレンが遠ざかっていく。

 上手くカーティスが囮になって誘導してくれているみたいだ。

 

 だがセレンの攻撃は苛烈だ。

 とんでもない弾幕でカーティスを追い詰めている。

 あれではいくらカーティスでも長くは持たない気がする。

 

 ローエたちの回復より先にカーティスがやられてしまったら……

 

 思い至ったゼクードは気絶している妻たちの頬を叩き始めた。

 

「おいローエ! 起きてくれ! しっかりしろ!」

 

 しかしローエは目を覚まさない。

 

「カティア! カーティスが大変なんだ! 起きてくれ!」

 

 カティアも目を覚まさない。

 

「フラン! 起きるんだ! 早く!」

 

 フランベールも駄目だった。

 

「……くそ!」

 

 このぶんではグロリアとレミーベールも同じだろう。

 妻と娘たちのダメージはゼクードが思っているより深刻なのかもしれない。

 

 だが悠長に回復を待ってはいられない。

 なんとかしてカーティスに加勢しないと。

 

 しかしあのセレンは随分と高度を維持している。

 このまま俺が参戦しても攻撃が届かない。

 それでは意味がない。ミイラ取りがミイラになるだけだ。

 

 せめてローエが回復してくれれば、打ち上げてもらうのだが……

 

 ……いや、打ち上げてもらったとしても今度は刃が通らない。

 

 みんなでなんとかしてセレンを地上へ落とし【限界突破・真・竜斬り】を心臓部に叩き込む。

 

 それしか俺たちの勝ち筋はない。

 

 やはりローエたちの回復は必須だ。

 なんとかならないのか。

 

 ゼクードは倒れているみんなを見回して悩んでいると、リィがグロリアの頬をペシペシと小さな手で叩いてるのが見えた。

 

 あの子もグロリアを起こそうとしてるのかもしれない。

 父親であるナイトは呆れたようにリィを見ている。

 

 するとリィはグロリアを叩くのをやめた。

 目を閉じて、すぅ〜っと息を吸った。

 

 なんだ?  

 まさか、グロリアにブレスかなんかを吐き出すんじゃ!

 

 一瞬そんな悪寒が走って止めようかと前屈みになったが、リィはブレスは吐かなかった。

 

 その代わり……

 

『〜♪ 〜♪ ♪♪ ♪〜♪』

 

 ドラゴンに不相応な優しい音色を奏で出した。

 それはまるで人間で言う歌のようだった。

 

 ナイトは驚愕したように目を大きく見開いていた。

 何をそんなに驚いているのか……

 

 ……え?

 なんだ?

 力が沸き上がってくる!?

 

『〜♪ 〜♪ ♪♪〜♪』

 

 リィの奏でるその歌はゼクードの身体を軽くした。

 錯覚ではない。

 ハッキリと疲れが消えていく。  

 

「これは……!?」

 

 リィの奏でるその歌には聞き覚えがあった。

 前に戦った【歌のドラゴン】のそれと同じだ。

 あのリィという子ドラゴン……まさか!  

 

「う……」

 

 何人かの呻き声が聞こえた。

 ゼクードはハッとなり、倒れているローエたちを見た。

 すると彼女たちはゆっくりと身体を起こしてきた。

 

「……痛っ! ……あれ、わたし」

 

 最初に起きたのはフランベールだった。

 リィの歌で回復したようだ。

 信じられない。

 

「フラン! 良かった!」

 

「あ……ゼクードくん……え!? だ、大丈夫!? すごい傷だらけだよ!?」

 

「いやフランの方が相当だぞ?」

 

「え!?」

 

 自分のダメージに気づいていないらしい。

 歌のおかげなのだろうか?

 傷が治ったわけではないが、激的に体力が回復している。

 

 ……いや、小さな傷くらいなら治ってる。

 凄いなリィの歌は。

 なんて力だ。

 

「ぅ、痛っ……クソ……気を失っていたのか……」

 

 今度はカティアが再起した。

 彼女に続いてローエ・グロリア・レミーベールも意識を取り戻し【フォルス家】の態勢が回復した。

 

 だがみんな最初の爆撃で満身創痍だ。

 

「みんな大丈夫か? 動けるか?」

 

 ゼクードが改めて仲間の状態を確認した。

 

「ええ、なんとか大丈夫。動けるわ」

 

 レミーベールが答え、隣のローエも鎧のホコリを払いながら。

 

「わたくしも問題ありませんわ。グロリアは?」

 

「アタシはもう治ったみたい。大丈夫よ」

 

「!?」

 

 ローエが驚き、カティアたちも驚愕した。

 グロリアだけの驚異的な回復力に。

 正直、俺もグロリアの回復力を直に見たのは今回が初めてだ。

 

 本当にもう治っている。

 カーティスとレミーベールから聞いてはいたが、人間では有り得ない回復速度だ。

 

 グロリアがもう人間ではないことを証明してしまう回復速度だが、今はそんなことを話している場合じゃない。

 

「みんな聞いてくれ。今の状況を話すぞ」

 

 言われたカティアたちはハッとなり、思い出したかの様にゼクードに視線を集中させた。

 

「この爆発音が聞こえるな?」

 

 遥か遠くでカーティスとセレンが戦っている戦闘音を聞かせ、ゼクードは話を続けた。

 

「今カーティスがセレンを引き付けて囮になってくれている。だがセレンの攻撃は苛烈だ。いつカーティスがやられるか分からない危険な状態になってる」

 

「そんな……」

 

 カティアが冷や汗を流した。

 息子の危機とあらばそうなるのも無理はない。

 

「どうするのお父さん?」

 

 レミーベールに聞かれ、ゼクードは頷く。

 

「セレンは賢い。高さを維持して空から一方的に攻撃を仕掛けてくる。俺たちの攻撃範囲内には絶対に降りてこない。だからなんとかして奴を地上に叩き落とす必要がある」

 

「作戦はあるのか?」っと急かすカティア。

 

「ナイトの雷を当てるしか思いつかない。グロリア……ナイトに聞いてくれるか?」

 

「うん。ちょっと待って……」

 

 

「ねぇナイト。アンタの雷でセレンを――――」

 

『リィ。さっきの歌はどこで覚えた?』

 

『えっと……よく分かんないけど、ママが歌ってた気がするの』

 

『……ママはお前が生まれる前に死んだはずだぞ?』

 

「ねぇちょっと聞いてる?」

 

『ん〜……でもママの声だと思うんだけどなぁ』

 

『卵の中にいたときの記憶でもあるのか?』

 

『ん〜……わかんない。いろんな歌を聞かせてくれてた気がするの』

 

『そうか……』

 

「ねぇ! ナイトってば!」

 

『なんださっきから』

 

「間が悪いのは謝るけどこっちも急いでんのよ! アンタの雷でセレンを撃ち落とせる?」

 

『当てることはできるが、撃ち落とせるかは保証できん』

 

「なんで?」

 

『何度か奴に雷を当てたが、徐々に効果が薄れている。耐性がついてきたのかもしれん』

 

「嘘でしょ!?」

 

『本当だ。当てても怯むだけで落とせるかは分からん』

 

「……わかったわ」

 

 

「……わかったわ」

 

 どうやら話が終わったようで、グロリアはこちらに振り向いてきた。

 

「ナイトはなんて?」

 

「当てることはできるけど、地上に撃ち落とせる保証はできないって。セレンに雷の耐性が付き始めてるみたいなの」

 

「やっぱりか」

 

「え?」っとグロリアがゼクードの返答に驚く。

 

「グロリアも見てただろ? ナイトがセレンに雷を当てたところを」

 

「見てたけど……」

 

 ゼクードとカーティスが連携して戦ったあの時、最後の追撃にナイトの雷をセレンにお見舞いした。

 しかし思いのほかダメージは少なかった気がしていたのだ。

 

 なるほど耐性か。

 何度か雷を食らったことがあるってことか。

 

【真・竜斬り】を通さない竜鱗。

 雷を耐え切る強靭な肉体。

 鉄壁すぎる。反則だ。

 

 こんなのどうやって倒す?

 早くしないとカーティスが力尽きてしまう。

 くそ……どうする。

 

 何かいい方法を考えないと。

 

「……ねぇゼクードくん。みんなで探そう!」

 

「え?」

 

 フランベールの言葉にゼクードは目を丸くした。

 

「何機かのバリスタがあったよね? 使えるのが残ってるかも知れないわ。あれを使えばセレンを落とせるかもしれない」

 

「それは……そうかもだけど。あの高度にいるセレンにバリスタが届くか?」

 

「ナイトの雷を当てれば、いくら耐性が有っても高度を下げるはずよ。そこを狙ってみる」

 

 狙ってみるって……

 とんでもない難易度だとフランベールは分かってるのだろうか?

 

 ナイトの雷でセレンは確かに高度を下げるだろう。

 だが問題は次だ。

 その高度を下げた一瞬の間にフランベールはバリスタを当てなければいけない。

 

 身体に当てるだけなら簡単だろうが、それではバリスタは効かない。

 前にも言った目か口を狙う必要がある。

 

「できるのか?」

 

 ゼクードは思わず聞いていたが、これはフランベールにしかできないと内心では理解していた。

 他に作戦が無い以上、もうこれに賭けるしかないと。

 

「狙撃なら任せて。バリスタはわたしが見て回るわ。カティアさんも同行して」

 

「私がか?」

 

「うん。カティアさんの力が絶対に必要だから」

 

「わかった。ついていく」

 

「ありがとう。ゼクードくんたちはバリスタの矢と、ロープかチェーンを探してきて!」

 

「ロープかチェーンですの?」

 

「うん。バリスタ拘束弾を作るよ。口に撃ち込んだらグロリアとレミーで引きずり落として。さぁ急いで! みんなでカーティスを助けるよ!」

 

 フランベールの声に圧倒され、ゼクードを含めたみんなが思わず「おお!」っと声を揃えて動き出した。

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