【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第339話【否定できねぇ】

 フランベールの指示に従って【フォルス家】はそれぞれ散った。

 

 フランベールとカティアはバリスタのある城壁へ。

 グロリア・レミーベール・ローエ・ナイト・リィはチェーンかロープを探しに散開。

 

 その中の一人である俺はカーティスの元へ向かっていた。

 みんなには悪いがカーティスが心配だ。

 どうにも嫌な予感がする。

 

 こんな時は直感を信じて動く。

 取り越し苦労なら大いに結構だ。

 

 あんな苛烈な攻撃をいつまでも避け切れるはずはない。

 いくらタフなカーティスでも体力が持たないはずだ。

 ならば俺と交代制にすれば息を回復させる隙は作れる。

 

 自重してくださいと言ったでしょう! とカーティスに叱られるだろう。

 

 だが、俺の嫌な予感は当たるんだ。

 悪いが参戦させてもらうぞ。

 俺はお前を失いたくないんだカーティス。

 

 息子の愛剣【レクスオブルージュ】を煌めかせながらゼクードは【ハーティシオ王国】を走り抜けた。

 

※

 

 フランベールは焦げた城壁に登り、近くのバリスタを見つけて寄った。

 そのバリスタは焦げ切って炭と化しており、少し触っただけでも崩れてしまった。弦も何もない。

 

「これはダメね……次行くよカティアさん!」

 

「ああ!」

 

 城壁を走り、少し離れた先に見えるバリスタへ向かう。

 その途中で空を見ると、遠くでセレンが街中へ止めどなく爆撃をしている。

 

 あの下にはカーティスがいる。

 自分たちのために囮になってくれている。

 早く使えるバリスタを見つけないと!

 

「カーティス……」

 

 呟いたのは後ろのカティアだった。

 さっきから落ち着きのないカティアだが、それも仕方がない。

 フランベール自身もカーティスが心配でならなかった。

 

 自分の子供があんな苛烈な攻撃に晒されてるんだ。

 心配にならない方がおかしい。

 

 だけど現状……セレンがああやって攻撃を続けているということは少なくともカーティスはまだ無事であることの証明にもなる。

 

 だからまだ大丈夫だ。

 

 そう祈りつつ2つ目のバリスタの元へ着いた。

 フランベールはすぐに状態を確認した。

 かなり焦げて傷んでいるが、さっきのバリスタより損傷は酷くない。

 

 ブレスの範囲ギリギリだったのかもしれない。

 

「うん……これなら撃てそうね」

 

 フランベールが言うとカティアが怪訝な顔をする。

 

「確かに撃てそうだが……一発撃ったら壊れそうじゃないか?」

 

「一発撃てれば十分よ」

 

「かっこいいな」

 

「他のバリスタも見てみよう。まだ撃てるのがあるかもしれない」

 

「ああ。わかった」

 

※

 

 レミーベールは広大な【ハーティシオ王国】をひたすら走り抜けていた。

 

 焼け落ちた建物の内部を横目で見ながら、次へ次へと確認していく。

 しかしどこにもチェーンやロープなんて残ってない。

 

「はぁ……はぁ……どこにもない……」

 

 早くしないと……この瞬間にもカーティスがセレンの攻撃に耐えてるのに!

 

「! いや……待って?」

 

 キキィーッ! っとレミーベールは足でブレーキを掛けて止まった。

 

「ロープなんて燃える物が残ってるはずないわ。だとしたらチェーンだけど……そんなもの街中にあるわけない! あるとしたら城壁の門付近だわ!」

 

 気づいたレミーベールは踵を返してまたもダッシュした。

 すると建物の影からローエが!

 

「わっ!?」

「えっ!?」

 

 ゴンッ!

 

 見事に頭をぶつけたレミーベールとローエは額を手で押さえた。

 あまりの激痛に悲鳴を上げそうだったが、セレンに見つかってはマズイという意識がそれを抑えてくれた。

 

 涙目になりながらレミーベールとローエは向き合う。

 

「お、お義母さんごめん! 大丈夫?」

 

「だ、大丈夫ですわ! あなたこそ大丈夫ですの?」

 

「ワタシは大丈夫。それよりお義母さん聞いて! チェーンの有る場所が分かったわ!」

 

「え!? 本当!?」

 

「うん! ついてきて!」

 

「わかりましたわ!」

 

※

 

 グロリアはナイトとリィと共に城壁の門まで来ていた。

 城壁内部にある小部屋に入ってみると、そこには人の骸が多数あった。

 

「うわ……酷い……逃げたけどブレスからは逃げられなかったみたいね……」

 

 セレンの超広範囲ブレスの餌食になってしまったのだろう。

 小部屋でたむろする焼死体を尻目に、グロリアは小部屋を調査した。

 

 どこにもチェーンらしき物が見つからない。

 死体の中に埋まってるとか?

 

「ねぇナイトとリィも探すの手伝ってよ」

 

 言って振り向くとナイトとリィは。

 

『パパ見て! 変な蛇を見つけたよ!』

 

『それは蛇じゃない』

 

『え? じゃあなに?』

 

『それは――――』

 

「ちょっと! アンタたちもチェーン探すの手伝いなさいよ!」

 

『チェーンってなに?』

 

「そっから!? チェーンってのは……えーっと……」

 

『これだろ?』

 

 ナイトに手渡されたチェーン。

 

「そうそうコレコレ」

 

『それ蛇じゃないんだ……』

 

「蛇なわけないでしょ。アタシたちはこれを探して……ってコレじゃん!」

 

★

 

 出来るだけ父さんたちから離れようとカーティスは走り続けていた。

 

 度重なるセレンの爆撃は激しさを緩めない。

 

 少しでも速度を緩めればあの爆撃に飲まれて即死するだろう。

 

「カーティス! いつまで逃げるつもりなの!」

 

「聞きたきゃ降りてこい! そしたら教えてやる!」

 

「その手には乗るもんですか!」

 

 セレンの爆撃はまたも激しさを増した。

 カーティスは全力で逃亡を続ける。

 

 半壊した建物に逃げ込めばすぐに爆砕され、スライディングで飛び込んだ建物も即爆破される。

 

 隠れる間もない。

 すぐさま姿をさらけ出しにされる。

 

「隠れても無駄よ! わたしからは逃げられないわ!」

 

「そうやってこの街も破壊し尽くしたんだな! お前に心はないのか!」

 

「心?」

 

 セレンが疑問の声を漏らし、それのおかげてほんの一瞬だけ弾幕が緩んだ。

 今だ! っと少しでも距離を稼ごうと走った。

 しかしその先は崖だった。

 

「なっ!?」

 

【ハーティシオ王国】の奥部は大地がパックリと裂けており、底が見えないほどの崖となっていた。

 

 まさかこんなところに崖が……

 この周辺の大地は妙に地盤が弱いらしい。

 運に見放されたか……

 

 カーティスが振り向き、上を見上げると……セレンが翼を羽ばたかせニヤリと嗤っていた。

 

「あら? どうしたの? もう逃げないの?」

 

 こいつ……

 

 セレンは忌々しいほど余裕の笑みを浮かべていた。

 

「ああ! そっかぁ! カーティス飛べないもんね〜」

 

 くそ……

 背後には崖。

 前には高速移動してくる爆撃ドラゴン。

 奴の真下を無事に突破できるとは思えない。

 これまでか……

 

「さぁカーティス。ゼクードの居場所を言いなさい。そしたら――――」 

 

「何度も言わせるな。オレはお前みたく家族に薄情じゃないんだ。馬鹿者が」

 

「だから! 薄情なのはアンタでしょうが!」

 

 激昂するセレンは翼膜に溜まったピンクの閃光を撃ち放とうと翼を広げた。

 だが次の瞬間!

 

「俺はここだ! ドラゴン野郎!」

 

「!?」

 

 それは間違いなく父ゼクードの声だった。

 セレンがバッと勢いよく振り返り、漆黒の鎧を着たゼクードを捉える。

 

「見つけたわよゼクード!」

 

「父さん!? なぜ来たんですか! 自重してくださいと言ったでしょう!」

 

「怒るなよ。追い詰められてたから助けに来ただけだ」

 

「そんな! オレなんか見捨てればいいじゃないですか! 父さんがやられたらそれこそ希望が!」

 

「見捨てられるか! 簡単に言うなそんなこと! おいドラゴン野郎! こっちだ!」

 

 ゼクードが駆け出すとセレンは食いついた。

 

「逃さないわよゼクード! わたしに謝りなさい!」

 

「は? 何をだよ」

 

「あなたわたしになんて言った!? 家族面はやめろって! そう言ったわよね!」

 

「覚えてないね。被害妄想なら余所でやってくれ」

 

「バカにして! あの言葉でわたしがどれだけ傷ついたか! あなたに分かる!?」

 

「知るかバーカ」

 

「こんのぉおおおおお! 親に向かってえええええ!」

 

 ピンクの閃光を撃ち放ち、ゼクードに弾幕の雨をお見舞いする。

 しかしゼクードは舞い上がった黒煙の中から颯爽と現れて何事もなく走り続けている。

 

「逃さない!」

 

 セレンは口から小出しブレスと、両手から蒼い火球を乱射。

 だがすばしっこいゼクードには当たらない。

 ゼクードといいカーティスといい、この二人は本当に足が速い。

 

 他の人間なら簡単に仕留められるのに。

 

 街中をちょこまかと逃げ回るゼクードに、セレンはイラつきの声を上げた。

 

「いい加減にしなさい! 親に向かってなんなのその言葉遣いは! 親をなんだと思ってるのよ!」

 

「まだ言うか? 本当に俺の母親なら俺の好きな食べ物を知ってるはずだ。それを答えてみろ」

 

「なんですって!?」

 

「当てたら母親だと認めてやるよ」

 

 咄嗟の思いつきでゼクードが言った。

 当のセレンは目を丸くした。

 

「……」

 

「答えられないのか?」

 

「女よ」

 

「は?」

 

「あなたの好きな食べ物は女よ!」

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