【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第34話【メンバー選択】

 戻って来たのは人気の少ない中央広場。

 そこでドラゴンの集まる場所について話すつもりだった。

 だがその前に、俺はローエさんに伝える。

 

「お金はいらない?」

 

「そう言ってましたよ。代わりに身の安全を保証してくれって」

 

「……そうですの」

 

 ローエさんはなんとも複雑そうな顔をした。

 理由は分からない。

 ただ俺も俺で、隊長と信じてもらえなかったことは非情に複雑である。

 みんなに聞いてもらいたいけど、そんな空気じゃないから言わない。

 

「ま、それはともかく。ドラゴンがやたら集まる場所を探さなきゃなりませんね。誰か心当たりがある人はいますか?」

 

 俺が言うと、やはりフランベール先生が手を上げてくれた。

 さすが先生。

 博識である。

 

「ちょっと遠いんだけど、確実にありそうなところなら一つだけ心当たりがあるわ」

 

「本当ですの先生!」

 

「うん。【竜軍の谷】って言うんだけど【エルガンディ王国】からひたすら南へ進むとあるの。名前の通りドラゴンが集まる場所で、なぜかそこのドラゴンたちはやたら好戦的なの。ドラゴン同士がケンカしていることもかなりあるそうよ」

 

 そんな場所があったとは知らなかった。

 基本的に群れを成さないドラゴンが集まる場所なら【アンブロシア】がある可能性は高いだろう。

 

 何より好戦的なドラゴンばかりなのはきっと【アンブロシア】をめぐってケンカしているとも説明できる。

 これは本当に確実そうな場所だ。

 

「そんな場所があったんですね」

 

 カティアの言葉に頷いたフランベールは続ける。

 

「うん。馬なら往復で2日掛かるわ。急いで準備して、早めに向かった方がいいわね」

 

 あ、思ったより遠かった。 

 

「わかりましたわ先生。情報をありがとうございます。【竜軍の谷】へはわたくし一人で向かいますわ」

 

「いやいや何言ってんですかローエさん! みんなで行きますよ!」

 

 俺は思わずそう言った。

 しかしローエさんは首を振る。

 

「いいえ! いつS級が襲ってくるか分からないこの状況で【ドラゴンキラー隊】が全員王国を離れるのはダメですわ!」

 

「それは、そうですけど……」

 

 どうしよう、正論過ぎて言い返せない。

 

「隊長。お前は残った方が良い」

 

「え?」

 

 カティアさんの発言に俺はそんな間の抜けた声を発してしまった。

 

「私とフランベール先生がローエに同行する」

 

「な、何を言ってますのカティアさん!? わたくし一人で十分ですわ!」

 

「ダメだ。今のお前はまるで冷静さを欠いている。それにドラゴンの大群と戦うことになるかもしれないんだ。一人で行かせられるか」

 

 カティアさんがそう言って、フランベール先生が続けた。

 

「カティアさんの言うとおりよローエさん。ローエさんはいま妹さんの事で頭がいっぱいになってる。でもそれは仕方のないことだから、せめてわたしたちにフォローさせて?」

 

 ……なんだろう。

 勝手に話が進んでいくが、カティアさんもフランベール先生も当たり前のようにローエさんに力を貸そうとしている。

 

 この空気はとても素晴らしいことだと思う。

 優しい人間が集まっているからこそだ。

 

「で、ですが……4人中3人も国を離れるのは陛下が御許しくださるか……」

 

 ローエさんの言うことは最もだった。

 言われたカティアさんとフランベール先生もグッと口を閉じてしまう。

 

 この国の非常時にS級騎士が三人も国を離れるのはまず間違いなく許されないはずだ。

 人命が掛かってるとはいえ、それがお互い様な今の状況ではフルメンバーでの出撃はまず許可が下りないだろう。

 3人でも難しい。

 

 でもとりあえず。

 

「ちょっとみなさん待っててください。俺、国王さまに聞いてみます」

 

「ぁ、お願いしますわ隊長!」

 

 隊長として、部下の問題もなんとか解決せねば。

 そんな意思を胸に、俺は城へと向かった。

 

 

 国王さまとの謁見は案外とすぐに叶った。

 そこでローエさんの妹さんが余命1週間なことを告げる。

 彼女を救うには【アンブロシア】というキノコが必要だと説明し、そしてそれは【竜軍の谷】という危険な場所にあることも説明した。

 

 すると。

 

「【竜軍の谷】へ向かうことはなんとか許可を頂きました」

 

「ああ! ありがとうございますわ隊長!」

 

 中央広場にてローエさんが心底嬉しそうな表情を浮かべた。

 あまりに可愛く、あまりに綺麗な笑顔だった。

 おかげでこれから伝える情報が苦しくなった。

 でも言わねば。

 

「ただ、やはり向かっていいのは二人まででした。俺は絶対に残ることを条件にされましたのであと一人。誰かに残ってもらいます」

 

「なら、私がローエと行く。フランベール先生隊長と残ってください」

 

 即答したのはカティアさんだった。

 なんとなく予想はしていたが、速かった。

 

 確かにカティアさんとローエさんのコンビなら連携も卓越しているし、安定感はある。

 でもそれはローエさんが普通の状態ならばの話。

 

 今のローエさんはどうにも焦っている。

 連携が乱れないとも限らないし、ここはしっかりとしたストッパーの役割を担える人間にするべきだろう。

 

「いや、待ってくださいカティアさん。ここはフランベール先生にローエさんの同行をお願いします」

 

「なに?」

 

「カティアさんとローエさんじゃ無茶しそうだし、なんか途中でケンカに発展したら大変ですしね」

 

「な!」っとカティア。

 

「確かに……」っとフランベール。

 

「先生!?」っとローエ&カティア。

 

「それじゃフランベール先生。ローエさんと一緒に【竜軍の谷】へ同行お願いします」

 

「了解よ。それじゃローエさん。さっそく準備しましょう。明日の朝には出発するからね」

 

「わかりましたわ。よろしくお願い致します先生」

 

 

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