【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった 作:ミズノみすぎ
「女よ」
「は?」
「あなたの好きな食べ物は女よ!」
セレンのとんでも発言に俺は目が点になった。
顔が一気に赤くなってしまう。
「ひ、人聞きの悪いこと言うな!」
「よく覚えてないけど、昔のあなたはなんか女ばかりを食べてた気がするのよ!」
いやまて!
それ俺じゃなくて俺の親父(フォレッド)の事じゃないのか!?
ごっちゃになってるだろ絶対!
しかも食べるって普通の意味で言ってそうだ。
きっと性的じゃないな。間違いない。
でも誤解しかされない言い方はやめてくれ。
「よく覚えてないなら適当なこと言うなよ! やっぱりお前は俺の母親じゃない! 血も涙もないただの化け物だ!」
「……っ! このっ! どこまでわたしを怒らせれば気が済むのよ!」
「お前がくたばるまでだよ! ほらどうした! ついてこい!」
「待ちなさい!」
またも爆撃が始まった。
これだけ怒らせてもセレンはやはり高度を落とさない。
絶対に俺たちの攻撃範囲には降りてこないようだ。
ドラゴンという強靭な肉体に人間の知性が加わるとこうも厄介とは。
空から一方的に攻撃とは、やり方が汚いが理に適ってるから腹ただしい。
高度を意地でも下げないセレンに舌打ちし、俺はひたすら街中を駆け抜けた。
もはや殺す気満々の爆撃だ。
激しい爆音が鼓膜を破りそうになって頭痛に似た痛みを顔に感じた。
そんなギリギリの追いかけっこを続けていたら、途中ナイトが進路上に現れた。
「ナイト!?」
ナイトは俺をチラッと見るや踵を返して走り出した。
ついてこいってのか?
そう解釈した俺はナイトの背を追う。
ナイトの脚もやはり速い。
あのセレンの爆撃を避けられるだけのスピードを持っている。
「死に損ないが! まとめて殺してやる!」
ナイトを見たセレンが怒声を張り上げた。
ナイトは構わず速度を上げ、俺も彼についていく。
進路方向的にフランベールのバリスタ射程内へと誘導しているみたいだ。
なるほど。
グロリアに指示を貰って俺を迎えに来てくれたのか。
確かにナイトならいざセレンに襲われても持ち堪えるだけの戦闘力はある。
ナイスな人選だグロリア。
ドラゴン相手に人選と言っていいのか分からないが……
ゴゴゴと空から轟音が鳴り始め、俺は見上げた。
空には黒雲が渦巻いており、それはナイトの雷であることを察した。
流れから見て仕掛けるタイミングはもうすぐらしい。
すると案の定、進路先にはグロリアが待っていた。
レミーベールとローエも待機している。
ここかフランベールの考えた仕掛ける場所か!
「今よ!」
街の広場に出た瞬間グロリアがナイトに叫んだ。
ナイトは手を空へ掲げ、セレンに向かって雷を落とした!
「ああああああああっ!」
見事に雷が直撃したセレンは悲鳴を上げた。
そしてフランベールの予想通りガクンと高度が落ちた。
「こ、この……何度も何度も……!」
セレンが弱っている。
かなり聞いたようだが落下には至らない。
しかし高度は十分に下がった!
「フラン! 今だ!」
勝機が見えた俺は叫ぶ。
しかしセレンの瞳は城壁でバリスタを構えるフランベールを捉えていた!
「気づいてないとでも思ったかあああああ!」
セレンが口からブレスを吐き出した!
それはあの超広範囲のブレス。
「しまった! 逃げろフラァアアアン!」
★
ゼクードの声が弾ける。
今さら逃げても間に合わないのはフランベールも分かっていた。
むしろ狙われた時の対策は取ってある。
「カティアさん! お願い!」
「ああ!」
迫りくるブレスを前にカティアがフランベールの前に立った。
カティアはバスターランサーを捨て、大盾を両手に持ち替える。
大盾の先端を地面に突き刺し、持てる力の全てを大盾に注いだ。
大盾に気を纏わせ、極限までそれを高める。
ブレスはもう目の前!
「はああああああああ!」
カティアの大盾にブレスが直撃した。
あまりの質量にカティアの体幹が崩れかけるが、全能力を大盾に回していたおかげで踏ん張った。
ブレスが大盾を境に2つに割れた。
カティアの背後にいるフランベールにはブレスは当たっていない。
もちろんバリスタも無事だ。
だが凄まじいブレスの熱はカティアとフランベールの髪や服を焼いていく。
ただの熱風のはずが服を発火させる勢いだ。
カティアの髪やリボンが焼け、フランベールの髪とマントさえ燃やしていく。
肌も火傷を負っていく。
防いでいるのにこの威力。
バリスタにもダメージが行っている。
セレンのブレスがこれほどとは。
カティアの大盾も熱で真っ赤になり今にも溶けそうだった。
大盾の持ち手も熱を持ちカティアの手を焼いていく。
「ぐっ! ああああああああっ!」
「カ、カティアさん!」
手が焼けていくカティアの悲鳴に、フランベールは思わず叫んでいた。
しかしカティアは怯まない。
それどころか大盾を握り直し、手の火傷など無視してみせた。
「やらせるかああああああああ!」
「こいつ……っ!」
カティアの抵抗が予想以上だったらしいセレンは驚いた。
刹那!
「カティアさん! 伏せて!」
フランベールの合図と共にカティアは防御を解いて伏せた。
瞬く間にカティアはブレスに飲まれる。
カティアの次はフランベール。
しかしブレスに飲まれるわずか1秒の間にフランベールはセレンの口に狙いをつけた。
セレンはドラゴン形態。
口は大きい。
こっちを向いている今、当てるのは容易かった。
「いけええええっ!」
セレンにチェーンの付いたバリスタの矢が飛ぶ。
セレンはブレスを吐くために大口を開いていた。
フランベールの狙いは最初からそれだった!
カティアとフランベールはブレスに飲まれたが、バリスタの矢は見事にセレンの口にぶっ刺さった。
「あがっ!?」
思わぬ一撃をくらったセレンはバランスを崩して地面へ。
このまま落ちるのかと思ったが、セレンはすぐにバランスを取り戻し浮上しようとする。
彼女の口にはバリスタが突き刺さっており、そのバリスタのチェーンが地面に垂れている。
そのチェーンをとある二人が掴んだ!
「逃がすわけないでしょう!」
「本気で引くわよ!」
セレンの真下で待機していたグロリアとレミーベールが、チェーンを全力で引っ張る!
「こんのおおおおおお!」
「おらあああああああ!」
「あがががっ!?」
レミーベールとグロリアの怪力に引っ張られ、セレンはついに顔から地面に落下した。
「あぅがああああああああっ!」
セレンはすぐさま口から喉へ貫通したバリスタを強引に引っこ抜き竜人形態になった。
翼を広げ再び空へ逃げようとするが、そこへローエとカーティスが飛び込む!
「逃がさん!【真・竜斬り・轟】!」
「逃しませんわ!【ドラゴンインパクト】!」
二人の力技を背中に叩き込まれたセレンは、またも地面に頭からめり込んだ。
「ぎゃうっ!」
セレンの悲鳴と共に衝撃で地面に亀裂が走った。
追い打ちにローエがハンマーのトリガーを引き爆破!
「ぎゃあああああああああ!」
またも悲鳴を上げたセレン。
そこにゼクードが駆け付け、さらにブレスに飲まれたカティアとフランベールも多少の火傷を負いながら駆けつけてきた。
ようやく役者が揃った!
「ローエ! カティア! フラン!」
ゼクードが叫ぶと妻たちはそれを合図に魔法を唱えた。
「【アイスレイン】!」
「【プロミネンス】!」
「【シュトゥルム】!」
火・氷・風のそれぞれ最強の魔法を唱え、それをゼクードに向けて放った。
「【ブラックホール】!」
ゼクードの右手から黒い渦が発せられ、飛来する三種の魔力を取り込む。
三種の魔力を吸収したゼクードの右腕は、いつか味わった激痛をバチバチンとスパークさせ痺れで伝えてくる。
内側から爆発しそうな、そんな痛みさえも覚えた。
懐かしい痛みである。
「ぐぅうっ! カ、【カオス・エンチャント】!」
痛みを堪え【レクスオブルージュ】の刀身を撫でて魔力を送り込む。
間もなくロングブレードが虹色の光を纏い、その刀身を大きく長く強化した。
いつか見たその七色の剣はゼクードの身長を優に越える長さとなる。
凄まじい魔力がほとばしり、なんでも斬れそうな迫力を伝える。
ゼクードは剣を構えて一気に前進!
倒れたセレンに肉薄する!
「うおおおおおおおお!」
【真・限界突破・竜斬り】
これで決める!
そう思った次の瞬間!
セレンが暴れた!
「どけぇええええええええええ!」
「ぐあっ!」
「きゃあっ!」
カーティスとローエを翼で弾き飛ばし、セレンは空へ飛んだ!
しまった!
また空に逃げられる!
「逃さないって!」
「言ってるでしょ!」
セレンの頭上を娘のグロリアとレミーベールが取っていた。
上昇しようとするセレンに向かって二人は武器を振り下ろす。
「「【双竜《ツインドラゴン》斬り・轟】!」」
姉妹の力技がセレンの背中にまたも直撃!
「あああああああああああああ!」
地面に戻され、顔から叩きつけられたセレンはすぐさま起き上がった!
だがもうゼクードは目の前!
「終わりだ! ドラゴン野郎!」
「やめ――――」
ゼクードの刃がセレンの胸を貫いた!
何も通らなかったセレンの竜鱗を突破した!
【レクスオブルージュ】は見事にセレンの心臓を刺し貫いていた!
セレンの目が極限まで見開く。
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
セレンの断末魔が上がると、同時に密着していたゼクードを抱きしめるように捕まえてきた!
「なっ!?」
「ゼぇクぅドオオオオオオオオオオー!」
発狂と取れる怒声を上げたセレンはゼクードを捕まえたまま空へ一気に浮上した。
「うおわっ!?」
「父さん!」
「「お父さん!」」
「「ゼクード!」」
「ゼクードくん!」
家族の声が一気に遠くなっていく。
凄まじい速度で空へ上がっていく。
【ハーティシオ王国】の街並みがどんどん小さくなっていく。
「こ、この野郎! しつこいんだよ!」
「ゼクードオオオオオオ! ゼクード! ゼクードオオオオオオオオオオオオ!」
両腕に力を込めてきたセレンに、ゼクードの鎧が軋み、その圧力は骨さえも軋ませる。
「ぐあああああああああああああああああ!」
「ゼクードオオオオオオオオオオオオオオ!」
心臓を貫いているんだぞ!?
なんでこんなに動けるんだコイツは!