【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第345話【動けない煩わしさ】

 アスレイ陛下との謁見を済ませた俺はグリータの館へ来ていた。

 もちろん調査隊の編成についてだ。

【南の領地】の領主であるグリータは俺の主でもある。

 

 アスレイ陛下から許可を頂いたから出撃はできるが、騎士を派遣するのはグリータの管轄だ。

 

 だからどうしても相談しなければならない。

 

「グリータ団長。ハーティシオへの調査隊ですが、なるたけ腕利きを揃えてほしいです。最低でもS級クラスの騎士を複数」

 

「うむ」

 

「あと輸送用の馬車もお願いします。棺を運ぶのに必要でしょう」

 

「わかった。とりあえずオレに敬語使うのやめてくれ。気持ち悪いから」

 

「あ、そう? じゃあ普通に話すよ」

 

「順応早いな……」

 

 やや呆れるグリータ。

 自分でやめてくれって言ったんじゃん。

 

 まぁ確かに今この部屋には俺とグリータしかいないから、そもそも敬語で話す必要もなかったな。

 

「調査隊には俺はもちろんだけど、グロリアも連れて行こうと思う」

 

「どうして?」

 

「一番ヒマそうだし、外でなにかしてた方がアイツも気が紛れるだろ」

 

 何より俺の側に居た方が落ち着くはずだ。

 ……正気を失った時に、トドメを刺してくれる人間がいるのだから。

 

 父親として、決して果たしたくない約束だが……

 

「ところでレィナちゃんとリイドくんは大丈夫なのか?」

 

「もう復帰してるよ。そこまで重くない火傷だったからな」

 

「なら良かった」

 

「話を戻すが、なんで腕利きが必要なんだ? ドラゴンと戦うわけじゃあるまいし」

 

「いや、戦う可能性はあるよ。地下に眠っていた10人の実験体はもうすでに心臓を移植されていた。正確には7人だが、いつ目を覚まして動き出すか分かったもんじゃない」

 

「おいおい……セレン1体でもお前らがボロボロになるほどなのに、7体も目覚めたら……!」

 

「ああ……まともにやり合ったら負けるだろうな」

 

「なんでそんなに冷静なんだよお前は……」

 

「冷静じゃないよ。……それよりグロリアの事で頭いっぱいなだけさ」

 

「お前なぁ…………まぁ、オレも親だから気持ちは分かるけど」

 

「だろ? だからそのへんの事はガイスさんや陛下と考えておいてくれよ」

 

「またそうやって押し付ける。考えてくれって言われても、またヨコアナに逃げるかシエルグリスに救援を要請するかの2択しかないぞ?」

 

「ああそれ良いな。シエルグリスにも報告してみんなでヨコアナに避難しよう」

 

「は?」

 

「んでみんなで強くなってまた再戦するんだ。ディザスタードラゴンの時と同じように」

 

「……」

 

「それなら市民の被害も出ないはずだし」

 

 俺は冗談混じりにそう言うと、グリータは顎を撫でて「ふむ」と考えだした。

 

「なるほど。なら陛下とガイスさんにもそう言っておこう」

 

「え?」

 

「あとシエルグリスにも使者を出そう。こういうのは早めの方が良い」

 

「じょ、冗談で言ったんだけど……」

 

「お前な、セレン並みのS級ドラゴンが7体だぞ? 普通にディザスタードラゴンの時と同じくらいヤバい状況だぞ? むしろあれ以上かもしれんのだぞ?」

 

「ま、まぁ……そう、だな……うん」

 

 ディザスタードラゴン以上のヤバい状況と言われても、いまいちピンと来ない。

 心のどこかであの7体は目覚めないと思っているのかもしれないな。

 

「まったく! グロリア優先なのは分かるが、もうちょっと危機感持てよ。お前はこの国で頂点の騎士だぞ」

 

「……悪かったよ」

 

 確かにグロリアの事ばかりで危機感を持ってなかった。

 思ったより冷静になれていないな……俺。

 

「分かりゃいい。だがそうなると……そもそもの話、その7体の実験体を……いや10体か? それらをエルガンディへ持ってくるのには賛成できないな」

 

「まぁ……そうだよな」

 

「現地であれこれできる科学班を同行させよう。グロリアの治療法模索はハーティシオ現地でやってもらう。それでいいな?」

 

「ああ。助かるよ」

 

 

 カーティスはエルガンディの街中を駆け回っていた。

 そこでようやく街の大通りで母カティアを見つける。

 

「母さん! ママから報告です。グロリアが見つかったそうです」

 

 人々が行き来する大通りでカティアが振り向く。

 

「本当か! どこに居たんだ?」

 

「王国の外に居たそうです。そこが一番落ち着くらしくて」

 

「そうか……」

 

 カティアは安堵して胸を撫で下ろす。

 

「旅に出てなくて良かった……」

 

「そうですね」

 

 正直、カーティスもその線を考えていたからヒヤリとしていた。

 だからカティアの安堵する気持ちはとても良くわかる。

 

「そういえば母さん。ちょっと手伝ってほしい事があるんです。リーネ叔母さんからなんですが、我々の武器の錬成が終わったそうで、取りに来てほしいとことで」

 

「わかった。一緒に行こう」

 

「ありがとうございます」

 

 そうしてカーティスは母を連れてリーネの店を目指した。

 後ろからカティアがついてくる。

 

「……なぁカーティス」

 

「はい?」

 

「グロリアは……治ると思うか?」

 

「!」

 

 いきなりな問いにカーティスはおもわず息を呑んだ。

 ゆっくりとカティアの方へ振り返ると、母は暗く俯いていた。

 

「一度全身に回った血を元に戻す方法なんて、本当にあるのかと思ってな……」

 

「それは……」

 

 確かに、そんな方法があるとは思えない。

 今回の調査の結果次第だが、果たして何か見つかるのだろうか?

 

「いや、すまない。不謹慎だった。忘れてくれ」

 

「……」

 

 父ゼクードはもうグロリアのために動いている。

 留守番の自分たちは良い結果が出ることを祈るしかない。

 みんなグロリアを救いたいって気持ちは同じだから。

 

「昨日の夜……私も調査隊に加えてほしいとゼクードに言ったんだが、ダメだと一蹴された。即答だったよ」

 

「それは仕方ありませんよ。それに……オレも同じでしたから」

 

「お前もダメだったのか?」

 

「はい。オフィーリアの側にいろと。それから母さんたちの事も頼むって」

 

「そうか……」

 

「万が一の事を考えてのことでしょう。オレも父さんも二人して国を離れるのは得策ではありませんし……それは分かるつもりです。……ですが、やっぱり」

 

 グロリアのために動きたいと身体が疼いている。

 おそらく母さんもそうなんだろう。

 でもみんな……当のグロリアに怒られるから無理強いはできないでいる。

 

「やれやれ……みんなゼクードに跳ねられた口か」

 

 苦笑するカティアにカーティスも苦笑で返すしかなかった。

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