【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった 作:ミズノみすぎ
アスレイ陛下との謁見を済ませた俺はグリータの館へ来ていた。
もちろん調査隊の編成についてだ。
【南の領地】の領主であるグリータは俺の主でもある。
アスレイ陛下から許可を頂いたから出撃はできるが、騎士を派遣するのはグリータの管轄だ。
だからどうしても相談しなければならない。
「グリータ団長。ハーティシオへの調査隊ですが、なるたけ腕利きを揃えてほしいです。最低でもS級クラスの騎士を複数」
「うむ」
「あと輸送用の馬車もお願いします。棺を運ぶのに必要でしょう」
「わかった。とりあえずオレに敬語使うのやめてくれ。気持ち悪いから」
「あ、そう? じゃあ普通に話すよ」
「順応早いな……」
やや呆れるグリータ。
自分でやめてくれって言ったんじゃん。
まぁ確かに今この部屋には俺とグリータしかいないから、そもそも敬語で話す必要もなかったな。
「調査隊には俺はもちろんだけど、グロリアも連れて行こうと思う」
「どうして?」
「一番ヒマそうだし、外でなにかしてた方がアイツも気が紛れるだろ」
何より俺の側に居た方が落ち着くはずだ。
……正気を失った時に、トドメを刺してくれる人間がいるのだから。
父親として、決して果たしたくない約束だが……
「ところでレィナちゃんとリイドくんは大丈夫なのか?」
「もう復帰してるよ。そこまで重くない火傷だったからな」
「なら良かった」
「話を戻すが、なんで腕利きが必要なんだ? ドラゴンと戦うわけじゃあるまいし」
「いや、戦う可能性はあるよ。地下に眠っていた10人の実験体はもうすでに心臓を移植されていた。正確には7人だが、いつ目を覚まして動き出すか分かったもんじゃない」
「おいおい……セレン1体でもお前らがボロボロになるほどなのに、7体も目覚めたら……!」
「ああ……まともにやり合ったら負けるだろうな」
「なんでそんなに冷静なんだよお前は……」
「冷静じゃないよ。……それよりグロリアの事で頭いっぱいなだけさ」
「お前なぁ…………まぁ、オレも親だから気持ちは分かるけど」
「だろ? だからそのへんの事はガイスさんや陛下と考えておいてくれよ」
「またそうやって押し付ける。考えてくれって言われても、またヨコアナに逃げるかシエルグリスに救援を要請するかの2択しかないぞ?」
「ああそれ良いな。シエルグリスにも報告してみんなでヨコアナに避難しよう」
「は?」
「んでみんなで強くなってまた再戦するんだ。ディザスタードラゴンの時と同じように」
「……」
「それなら市民の被害も出ないはずだし」
俺は冗談混じりにそう言うと、グリータは顎を撫でて「ふむ」と考えだした。
「なるほど。なら陛下とガイスさんにもそう言っておこう」
「え?」
「あとシエルグリスにも使者を出そう。こういうのは早めの方が良い」
「じょ、冗談で言ったんだけど……」
「お前な、セレン並みのS級ドラゴンが7体だぞ? 普通にディザスタードラゴンの時と同じくらいヤバい状況だぞ? むしろあれ以上かもしれんのだぞ?」
「ま、まぁ……そう、だな……うん」
ディザスタードラゴン以上のヤバい状況と言われても、いまいちピンと来ない。
心のどこかであの7体は目覚めないと思っているのかもしれないな。
「まったく! グロリア優先なのは分かるが、もうちょっと危機感持てよ。お前はこの国で頂点の騎士だぞ」
「……悪かったよ」
確かにグロリアの事ばかりで危機感を持ってなかった。
思ったより冷静になれていないな……俺。
「分かりゃいい。だがそうなると……そもそもの話、その7体の実験体を……いや10体か? それらをエルガンディへ持ってくるのには賛成できないな」
「まぁ……そうだよな」
「現地であれこれできる科学班を同行させよう。グロリアの治療法模索はハーティシオ現地でやってもらう。それでいいな?」
「ああ。助かるよ」
★
カーティスはエルガンディの街中を駆け回っていた。
そこでようやく街の大通りで母カティアを見つける。
「母さん! ママから報告です。グロリアが見つかったそうです」
人々が行き来する大通りでカティアが振り向く。
「本当か! どこに居たんだ?」
「王国の外に居たそうです。そこが一番落ち着くらしくて」
「そうか……」
カティアは安堵して胸を撫で下ろす。
「旅に出てなくて良かった……」
「そうですね」
正直、カーティスもその線を考えていたからヒヤリとしていた。
だからカティアの安堵する気持ちはとても良くわかる。
「そういえば母さん。ちょっと手伝ってほしい事があるんです。リーネ叔母さんからなんですが、我々の武器の錬成が終わったそうで、取りに来てほしいとことで」
「わかった。一緒に行こう」
「ありがとうございます」
そうしてカーティスは母を連れてリーネの店を目指した。
後ろからカティアがついてくる。
「……なぁカーティス」
「はい?」
「グロリアは……治ると思うか?」
「!」
いきなりな問いにカーティスはおもわず息を呑んだ。
ゆっくりとカティアの方へ振り返ると、母は暗く俯いていた。
「一度全身に回った血を元に戻す方法なんて、本当にあるのかと思ってな……」
「それは……」
確かに、そんな方法があるとは思えない。
今回の調査の結果次第だが、果たして何か見つかるのだろうか?
「いや、すまない。不謹慎だった。忘れてくれ」
「……」
父ゼクードはもうグロリアのために動いている。
留守番の自分たちは良い結果が出ることを祈るしかない。
みんなグロリアを救いたいって気持ちは同じだから。
「昨日の夜……私も調査隊に加えてほしいとゼクードに言ったんだが、ダメだと一蹴された。即答だったよ」
「それは仕方ありませんよ。それに……オレも同じでしたから」
「お前もダメだったのか?」
「はい。オフィーリアの側にいろと。それから母さんたちの事も頼むって」
「そうか……」
「万が一の事を考えてのことでしょう。オレも父さんも二人して国を離れるのは得策ではありませんし……それは分かるつもりです。……ですが、やっぱり」
グロリアのために動きたいと身体が疼いている。
おそらく母さんもそうなんだろう。
でもみんな……当のグロリアに怒られるから無理強いはできないでいる。
「やれやれ……みんなゼクードに跳ねられた口か」
苦笑するカティアにカーティスも苦笑で返すしかなかった。