【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第347話【初対面】

「ゼクード隊長! 前方の空に影を確認! ドラゴンです!」

 

 あまりに唐突に部下の声が弾けた。

 

 ほぼ条件反射のようにゼクードは空を見上げた。

 そこには青い竜鱗に覆われた巨大なドラゴンが、翼を羽ばたかせこちらに向かって来ていた。

 

 見たことないドラゴンだ!

 S級ドラゴンか!

 

「科学班! 馬車を出ろ! S級は学者の護衛! SS(ダブルエス)は俺に続け!」

 

 ゼクードが咄嗟に指示を出したが、先ほど叫んでいた騎士がまた声を上げた。

 

「ま、待ってください! あのドラゴンの背中に人が乗ってます!」

 

「人!?」

 

 そんな馬鹿な、とゼクードは青いドラゴンを見やると、ちょうど背中が見える高度になっており、その背中には確かに何人かの人影が見えた。

 

 1人2人じゃない。

 7人ほど乗っている。

 なぜ人間がドラゴンに?

 

 敵なのか?

 何なんだ?

 

 青いドラゴンはゆっくりと高度を下げてきて地面へと着陸してきた。

 そして頭を下げ、背中に乗っている人間たちが降りてくる。

 

「!」

 

 一番最初に降りてきた男には見覚えがあった。

 それを思い出してゼクードはゾワッと全身から汗が吹き出るのを感じた。

 

 見覚えのあるその男は【ハーティシオ王国】の地下で棺桶で見たあの顔だ。

 シルクハットを被った黒い髪の紅い瞳。

 名前は確か棺桶に【ヴァルドレイク・ディアマード】と刻まれていたはず。

 

 そのシルクハットの男ヴァルドレイクがドラゴンから降りてゼクードの目の前に迫ってくる。

 

 ゼクードは心臓がバクついた。

 

 こいつら、目覚めていたのか……!

 

 最悪だ。

 嫌な汗が止まらない。

 

「こ、この臭いは……!」っとグロリアも気づいたらしく顔を険しくする。

 

 ヴァルドレイクはゼクードより顔2個分ほど身長が高かった。

 目の前に来たヴァルドレイクはこちらを見下ろし、ゼクードは見上げる形になる。

 

「目覚めていたのか……お前ら!」

 

 思わず溢したゼクードの言葉に、向かいのヴァルドレイクは「ほう」と顎を撫でた。

 

「どうやら我々を知っているようだな。ならば自己紹介はいらんか」

 

「みんな! 気を許すな! こいつらが言っていた実験体だ! ドラゴンの心臓を移植している! 構えろ!」

 

 言いながらゼクードが【ブレイブエルガンティ】を抜刀した。

 それを聞いた他の仲間たちもすぐに戦闘態勢に入った。

 グロリアは斧を、リイドは片手剣を、レィナは双剣を構えた。ほかの騎士たちも武器を抜刀する。

 

「やれやれ……血気盛んな事だ。だが――――」

 

「ゼクード!」

 

 え?

 

 突如として聞こえた女の声。

 その声には聞き覚えがあった。

 つい最近まで聞いていたあの声!

 

 嘘だろ!?

 まさか!

 

「ゼ、ゼクード……! あぁ……ゼクード!」

 

 青紫色の髪。

 ピンクの瞳。

 そして14〜15歳ほどの見た目。

 

「……っ!? 嘘……なんで!?」

 

 グロリアも驚愕した。

 ゼクードも目を限界まで見開く。

 ヴァルドレイクの後ろにいるのは確かにあのセレン・フォルスだった。

 

 ゼクードの母親であり、グロリアの祖母でもあるセレン・フォルス。

【ハーティシオ王国】の崖に落ちて死んだはずなのに。

 生きていた。

 

「母……さん!?」

 

 生きていた……生きていた!

 でも、心臓は抜き取って潰したはず。

 どうしてまだ生きているんだ!?

 

「は、離して! ゼクードのところへ行かせて! お願い!」

「うるさい! 動くな!」

 

 セレンは見知らぬ男に腕を掴まれていてこちらに来れないでいる。

 助けねば! と一瞬だけ動こうとしたが、あのセレンは本当に母親の人格なのだろうか?

 

 確かにあの時のような圧倒的な威圧感はないが……

 

 疑いが晴れず、ゼクードは救いの一歩を踏み込めなかった。

 

 すると目前のヴァルドレイクがゼクードに問う。

 

「小僧……今あの女を母さんと呼んだな?」

 

「!」

 

「ということは……そうか。お前がフォレッド・フォルスの息子か」

 

 こいつ! 親父を知っているのか!?

 でも……なぜ?

 

「ならば名乗ろう。私はヴァルドレイク・ディアマード。【ハーティシオ王国】の三大貴族が一つ【ディアマード家】の公爵だ」

 

 公爵?

 聞いたことない名称だ。

【ハーティシオ王国】の貴族の名称だろうか?

 

 三大貴族とか言っているところを見るに、かなりの上流階級者らしいが……

 

 どうする?

 挨拶された以上、挨拶を返すのが礼儀だが……こいつらの心臓はS級ドラゴンのそれだ。

 

 つまり人間じゃない。

 こんな奴らに礼儀を通す必要なんてあるのか?

 

 それに、なにより。

 こいつらは俺の母セレンを捕らえている。

 理由は分からないがセレンは生きていた。

 

 あの圧迫感の無い雰囲気を見るに今のセレンはドラゴンの人格ではないのだろう。

 だが……ドラゴンの人格がセレンの中で息を潜めている可能性もある。

 

 ならば助けるのは得策ではないが……

 ……くそ。

 どうすればいいんだ。

 

 まさかヴァルドレイクたちを回収するための任務が、こんな本人たちと鉢合わせになるなんて。

 

 しかも【エルガンディ王国】からそう遠くないこんな場所で。

 

「キサマッ! 父上の御言葉が聞こえなかったのか! やはり平民は礼儀を知らないな!」

 

 ヴァルドレイクの後ろで金髪の男が凄まじい剣幕で吠えてきた。

 

 なんだこいつは?

 父上って……ヴァルドレイクとこいつは親子なのか?

 あんまり似てないな。

 

「……ゼクード・フォルスです」

 

「ゼクード・フォルス……か。良い名だ。覚えておこう」

 

 ヴァルドレイクが言うと、後ろの金髪の男もゼクードが従ったことに満足そうな顔を浮かべてきた。

 それをゼクードは見逃さなかった。

 

「どうも。しかしあなたの息子さんも礼儀知らずですね。初対面の相手をいきなり怒鳴るなんて」

 

「な!?」

 

 金髪の男が絶句した。

 後ろの女騎士たちも驚愕する。

 しかしゼクードは構わず続けた。

 

「しかも女性の扱いも下手」

 

「キサマアアアアッ!」

 

「やめろレグ」

 

「父上! しかし!」

 

「何度も言わせるなよ?」

 

「は、………………はいっ!」

 

 睨まれたレグは冷や汗を流して静まった。

 あのヴァルドレイクという男はかなりの威圧感を感じる。

 それはドラゴンの心臓によるものか?

 それともヴァルドレイク本人の力量ゆえか?

 なんにせよこの男……タダ者じゃない。

 

「息子が失礼をした。許してほしい」

 

「いえ、こちらの失礼も事実ですから」

 

「貴公は見たところ騎士のようだが……【シュヴァリエ】の称号をお持ちか?」

 

「【シュヴァリエ】?」

 

「我が【ハーティシオ王国】では上級ドラゴンを単騎で狩る者を【シュヴァリエ】と呼ぶ。そちらにはそのような名称はないのか?」

 

 上級ドラゴン……とはこちらで言うS級ドラゴンのことだろうか?

 それを単騎で狩る者を【シュヴァリエ】と呼ぶのか。

 ならば【シュヴァリエ】はこちらで言うSSS級騎士かSS級騎士ということだな。

 

「上級ドラゴンはS級ドラゴンと呼んでいます。そのシュヴァリエと言う称号もSSS級騎士と呼んでいます」

 

「なるほど。変わった呼び名だな」

 

「あなたはその【シュヴァリエ】なのですか?」

 

「そうだ。【シュヴァリエ】の称号を私とそこのレグは持っている」

 

 なるほど……やっぱりS級ドラゴンを単騎で狩れる凄腕だったのか。

 あのレグとか言う金髪騎士も。

 

「貴公はその……トリプルエス級騎士とやらか?」

 

「ええ」

 

「やはりそうだったか。通りでこの中で貴公だけ桁違いの圧力を発しているわけだ」

 

 ……さっきからこのヴァルドレイクという男はなんだ?

 そんなことを聞いてどうしたいんだ?

 こいつらの目的が分からない。

 

 それにさっき降下してきたドラゴンも、しれっと女騎士の姿になっている。

 やはりドラゴン形態になれるのか。

 ならばセレンと同じく竜人形態もあるはず。

 

 もしセレンと同じ硬度の竜鱗を持っていたら戦況は最悪だ。

 まともにやりあったら全滅さえ有り得る。

 どうする……俺。

 

「……ヴァルドレイクさん。あなた方の目的はなんですか?」

 

 刺激しないようにゼクードは聞いた。

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