【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第349話【ゼクードVSディアマード家】

 セレンが逃げ、彼女を追って行ったディアマード一家。

 それを追って馬で駆け抜けたゼクード。

 しかし途中でディアマード一家の姿は見えなくなった。

 

 やはり馬ではドラゴンの飛行速度には追いつけない。

 それでも諦めるわけにはいかなかった。 

 セレンが逃げた方角はエルガンディから南西にあるあの【竜軍の谷】

 

 森に挟まれた街道を疾走し、その途中で争った痕跡を発見した。

 それは街道から逸れて森へと続いている。

 

 ここで追いつかれてセレンは墜落したのかもしれない。

 あちこちで木が薙ぎ倒されている。

 爪の跡や火で焦げた跡。

 

 セレンの必死な抵抗が見て取れる。

 早く助けに行かねば。

 

 ゼクードは獣道とも言える森の中を馬に乗って駆け抜けた。

 人の通らない道なき道をひたすら走る。

 木が倒れているおかげで視界は悪くないのだが、足場が悪い。

 

 かと思うと、次第に土の固まった広めの空間に出た。

 生い茂る木々に日光が遮られて薄暗い。

 何よりさっきまであちこちだ薙ぎ倒されていた木々が、プッツリとここで途絶えていた。

 

 つまりここでセレンは抵抗をやめている。

 ここで捕まったんだ。

 やはり逃げ切れなかったんだ。

 

 セレンもいないし、ディアマード家の連中もいない。

 セレンはどこへ連れていかれたんだ。

 

 足跡もない。

 まさか空へ?

 だとしたら最悪だ。

 

 これ以上の追跡は……

 

「!」

 

 殺気を感じたゼクードはこちらへ飛んでくる飛来物に気づいた。

 火属性の攻撃魔法【フレイム】だ。

 それはゼクードを狙ったものではなく、彼の駆る馬の頭を狙ったものだった。

 

 眉間にフレイムが直撃した馬は転倒し、乗っていたゼクードも吹っ飛ばされた。

 

「うおわっ!」

 

 地面に叩きつけられたゼクードは何回か転がってから止まって顔を上げた。

 馬は絶命している。

 

「くっ!」

 

 歯を食い縛ったその時、ゼクードの目の前には一人の男が着地してきた。

 

「やはり来たか。ゼクード・フォルス」

 

 ヴァルドレイクだ。

 

「母さんはどこだ!」

 

 すぐに立ち上がって剣を抜くゼクードに、ヴァルドレイクは忌々しい笑みを浮かべながら顎をしゃくってみせた。

 

 その先には巨木が倒れており、その上にレグがセレンの髪を掴んで立っていた。

 当のセレンはかなり殴られたようでボロボロだった。

 

 かなり酷い暴行を受けたようだった。

 涙を流してグッタリしている。

 あまりに惨い母の姿にゼクードは怒りで我を失いそうになる。

 

 竜人形態ならばセレンもあそこまでボロボロにならなかったはずなのに。

 

「母さん!」

 

「……ぇ?」

 

 セレンは震えながら顔を上げた。

 息子ゼクードの姿を目にし「ゼクード!?」っと驚愕した。

 

「どうして来たの……」

 

「放っておけるはずないだろ!」

 

「ゼクード……」

 

 息子の言葉にまたも涙を流すセレン。

 それは見捨てずに来てくれた嬉しさからか、

 それとも無謀にも助けに来た愚かさからか。

 

「美しい親子愛だな」

 

 パチパチパチとヴァルドレイクは拍手した。

 

「その親子愛に免じて……セレンを返してやってもいい」

 

「なに!?」

 

「ただし……お前もドラグーンになり、我々に協力しろ」

 

「またそれか! 何度も言わせるな! 俺はドラグーンにならないし、お前らの力になるつもりもない! 母さんを返せ!」

 

 言葉を終えた一瞬の間に踏み込み、ゼクードはヴァルドレイクに斬り掛かった。

 相手がドラゴンならば遠慮はしない。

 全力の【気】を纏わせた【真・竜斬り】を振り下ろす。

 

 その音速とも言えるゼクードの斬撃を躱してヴァルドレイクは後ろの巨木へ飛んだ。

 レグの隣に着地し、落胆したように溜め息を吐く。

 

「残念だ。ならばお前は我々の脅威でしかない。……やれ!」

 

「「「「「はい!」」」」」

 

 ヴァルドレイクの指示と共に5人の女騎士たちが奥からやってきた。

 それぞれが氷で形成された武器を装備している。

 

 5対1……いや正確には7対1か。

 単騎でやれるか? 

 いや、やるしかないんだ!

 待ってろ母さん……母さん……

 

 助けていいのだろうか?

 あの母さんは、本当に俺の母さんなのだろうか?

 心臓の人格が、俺を騙してる可能性はないだろうか?

 

 くそ!

 疑ってたら、きりがない。

 なにか確信が欲しい。

 どうすれば……

 

「ふふっ!」

 

 赤いツインテールの女騎士が氷の大剣を背に突撃してくる。

 さらにその女騎士の左右に別の女騎士が展開し、ゼクードに向けて攻撃魔法を乱射してきた。

 

【フレイム】【フリーズ】【ウインド】だ。

 単発魔法で弾幕を張ってくる。

 

 ゼクードはそれらを長剣で弾いては避けた。

 その間に大剣の女騎士がゼクードに肉薄。

 彼女は大剣の柄を握ってニヤリと笑うと、振り下ろさずそのまま跳躍した。

 

「!」

 

 重さを活かしたジャンプ斬りかと思ったが、その跳躍した女騎士の後ろから青い長髪の女騎士が現れた!

 

「なっ!」

 

「んふっ!」

 

 青い長髪の女騎士は氷の槍を突き出してきた!

 間一髪でその突きを避けたが頬をカスッて血が出る。

 だが次の攻撃も速かった。

 

 槍使いの女騎士は怒涛の連続突きを放ち、それを捌く間に先程の大剣の女騎士がゼクードの後ろを取っていた。

 

 挟撃だ。

 

「ぶった斬ってあげるわ!」

 

「ちぃっ!」

 

 迫り来る大剣の女騎士。

 ゼクードは正面の槍使いの女騎士に意識を集中させ、彼女の連続突きを見切ってみせた。

 

 槍の挙動を見切り、ゼクードは女騎士の腕を掴んで大剣の女騎士の方へ振り飛ばした。

 

「きゃあっ!」

「ちょっ!」

 

 女騎士同士がぶつかって転倒する。

 追撃しようとしたが、すぐさま別の女騎士がゼクードに飛び掛かってきた。

 

 金髪の双剣使いだ!

 かと思うと横から別の女騎士の蹴りが飛んできてゼクードの脇に直撃する。

 

「ぐあっ!」

 

 重い蹴りだったそれはゼクードを吹き飛ばし、近くの巨木に激突させられた。

 

「なんて力だ……っ!」

 

 言ってる間に攻撃魔法の弾幕が飛んでくる。

 ゼクードは舌打ちし、木の陰に隠れながら走った。

 

 くそ。

 洗練されたコンビネーションだ。

 隙がない。

 

 しかもなんてパワーだ。

 これがドラグーンのパワーって奴か。

 動きも俊敏だ。

 

 セレンもドラグーンだが中身は騎士でもなんでもない素人だ。

 

 しかしコイツらは違う。

 黒い鎧を身に纏った騎士だ。

 戦闘技術をしっかり持っている。

 

 技術を持った人間がドラゴンの力を得るとこうも厄介とは。

 

「逃しませんよ」

 

 どこからともなく声が聞こえると、近くの巨木が根本から破壊されゼクードの方へ倒れてきた。

 

「舐めるな!」

 

 ゼクードは飛んで、その倒れてきた巨木を真っ二つに斬った!

 が、その斬った奥から赤髪の女騎士が斧を振りかざしてきた!

 

「もらった!」

 

「くっ!」

 

 振り下ろされる斧を寸前で躱し、鎧をカスッて火花が散る。

 

「避けた!?」っと驚愕する女騎士をゼクードは蹴り飛ばした。

 

「きゃあっ!」

 

 吹っ飛んだ女騎士は土煙に消える。

 

「『プロミネンス』!」

「『アイスレイン』!」

 

 2つの攻撃魔法が唱えられ、空から氷の氷塊が飛来し、正面からは熱線が飛んでくる。

 

「っ!」

 

 ゼクードは走り、降り注ぐ氷塊を躱していく。

 熱線は地面を狙っており、またたく間に草が燃え上がっていく。

 

 氷塊は木々を薙ぎ倒し、それらがゼクードに向かって倒れてくる。

 

 タイミングの悪い木は斬って対処。

 しかし足場がさっきのプロミネンスで燃え広がっており、ゼクードの機動力を奪われ始めた。

 

 さらには倒れてくる木に紛れて女騎士たちが波状攻撃を仕掛けてきた。

 

 それらを捌き、氷塊や弾幕も捌き、なんとか凌いでいたゼクードに対してヴァルドレイクが動いた。

 

 あまりに怒涛の連続攻撃に反応がギリギリだったゼクードは、ヴァルドレイクに一瞬で間合いを詰められてしまった。

 

「!」

 

「動きが鈍いな。何を迷っている?」

 

 冷静な声音を吐きながらヴァルドレイクは氷の長剣を薙ぎ払ってくる。

 

 迷ってる?

 俺が?

 

 不意にセレンの顔が浮かび、涙するセレンと、あの凶悪なセレンの顔が脳裏をよぎった。

 

 助けなきゃと思っていても、自分の心はまだどこかでセレンを疑っていた。

 

 セレンに確信が持てない。

 それが決定的にゼクードの速さと剣術を鈍らせていた。

 

 ヴァルドレイクの一閃を刃で受けたゼクードは、彼の圧倒的な膂力に吹き飛ばされた。

 

「うおわああああああ!」

 

 轟音と共に巨木に激突し、その巨木が折れて倒れる。

 ゼクードは背中からの衝撃と激痛に悶え、吐血。

 

「ぶっはっ! げほっ! げほっ! はぁ、はぁ!」

 

 ムセている最中にレグが目の前に現れた!

 

「生意気なんだよ平民風情が! 死ねよ【エクスプロード】!」

 

 ゼクードの顔面にレグの蹴りが直撃し、同時に爆発した。

 

「か……っ!」

 

 黒煙を上げてゼクードは吹き飛んだ。

 小さな木を何個か貫通して倒れ、ゼクードは意識を失う。

 レグが離れて動けるようになっていたセレンがそれを見てしまった。

 

「ゼクード!? ゼクードオオオオオオオオオオ!」

 

 セレンは翼を生やしてゼクードの元に急いだ。

 ゼクードを抱き寄せ、必死に揺さぶる。

 

「ゼクード! ゼクード! お願い死なないで! ゼクード! 目を開けて!」

 

「なに勝手に動いてんのよアンタ!」

 

 大剣の女騎士がセレンの肩を掴もうと迫る。

 するとその女騎士の腕が斬れて吹き飛んだ!

 

「えっ!?」

 

 銀の一閃を放って乱入してきたのはレィナ!

 敵の腕を斬り落としたレィナは続け様に女騎士の両眼を斬る。

 

「ぎゃああああ! 目がああああ!」

 

「レジーナ!」っと他の女騎士たちが駆け付けてくる。

 レィナは近くの巨木群を斬り倒し、土煙を上げさせた。

 それは見事に敵の視界を妨害し、追撃さえも抑えた。

 

「あ、あなたは……?」

 

 セレンがレィナを見ると、レィナはすぐさまゼクードを抱えた。

 

「説明は後です! 走ってください!」

 

「ぇ、あ、は、はい!」

 

 セレンとレィナが走り出すと、誰よりも早くヴァルドレイクが土煙を突破して現れた。

 

「応援か。逃がすわけにはいかんな」

 

 ヴァルドレイクが地を蹴り、爆発的な加速で一気に詰め寄ってくる!

 

「くっ!」

 

 速い!

 追いつかれる!

 

 レィナはセレンにゼクードを託して応戦しようと考えた。

 

 が、

 

 その瞬間に天から声が響く!

 

「【エクスプロード】!」

 

 ヴァルドレイクの行く手を阻むように、彼の足元に鉄球が飛んできた!

 

「むっ!?」

 

 不意を突かれたヴァルドレイクは歩を止める。

 その鉄球は着弾と共に大爆発を起こし、ヴァルドレイクの視界を奪った。

 

「ぐっ! おのれ小賢しい真似を!」

 

 あの鉄球はまさか!

 っとレィナは上を見上げるとピンク髪の女騎士が舞い降りてきた。

 

「ミオンさん!」

 

「レィナ! こっち!」

 

「感謝します! セレンさんもついてきて!」

 

「は、はい!」

 

 目まぐるしく色々と起きてセレンは理解が追いつかなかったが、このレィナとミオンという女騎士は味方だということだけはわかった。

 

 走りながらレィナの背で気絶するゼクードを見て、セレンは心から安堵した。

 

 一方、倒れた木で塞がれた道と土煙と黒煙でまったく動けなかったヴァルドレイクは「ふん」っと鼻息を漏らす。

 

「逃したか……まぁいい。奴らの逃げた方角を探索する。人里があるかもしれん」 

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