【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第350話【レィナは15歳でレグナを産んでた】

「ん…………はっ!?」

 

 しわがれた声が喉から出て、ゼクードは目を覚ました。

 

「お義兄様!」

 

 最初に視界に入ったのはカティア……ではなくレィナだった。

 

「レィナ……ちゃん?」

 

 ゆっくりと上半身を起こした。

 頭にちょっと痛みが走る。

 どうやらベッドで横になっていたようだ。

 

 白い壁に囲まれた小部屋にいるようだが。

 

「……ここは?」 

 

「シエルグリスです。ミオンさんに助けて頂きました」

 

「助け……え?」

 

 まだ寝ボケていたゼクードは、ようやく記憶も覚醒してきた。

 敵の猛攻を思い出し、セレンの顔を思い出す。

 

「母さんは? 俺……もしかして負けた?」

 

 慌てたゼクードにレィナは呆れた顔をした。

 

「そうですよ。嫌な予感がしたから追い掛けてみれば大正解だったじゃないですか。まさかたった1人で7人も相手にするなんて……」

 

 全部知ってるのか。

 てことはレィナが助けてくれたってことか。

 エリザの時といい、助けられてばかりだなレィナには。

 

「ご……ごめん。母さんを放っておけなくて……」

 

「いえ。肉親を思うの当然の事です。私が怒ってるのは独りで無茶したことだけです」

 

「……本当に、ごめん。母さんが生きてて、奴らに捕まってて、助けなきゃって思ったんだけど、助けていいのかも分からなくて、けど奴らに酷い扱いを受けてたからやっぱり助けなきゃって……思ったんだけど……やっぱり助けていいのか分からなくて…………グルグルしてた……」

 

「お義兄様……」

 

「レィナちゃん。母さんは……連れ去られたのか?」

 

「いえ、無事ですよ」

 

「本当に!?」

 

「はい。別の部屋で休んでいます。逃げてる途中で倒れちゃったんです。ミオンさんが運んでくれましたが……よっぽど疲れが溜まってたんでしょうね。ぐっすり眠ってます」

 

「そっか……良かったぁ……」

 

 心底安堵してゼクードはまた横になった。

 しかしフとある事を思い出してゼクードはまた上半身を起こす。

 

「レィナちゃん。エルガンディの方は……」

 

「大丈夫です。リイドとグロリアに伝言を頼みました。今頃はもうしっかり備えてくれているはずです」

 

「なら良かった。じゃあ……ちょっと母さんの顔が見たいな」

 

「え!? まだ寝てますよきっと」

 

 ベッドから降りるゼクードにレィナは言う。

 しかしゼクードは首を振ってドアノブを掴んだ。

 

「それでもいいんだ。案内してほし――――」

「ゼクードオオオオ! 大丈夫かああああ!?」

 

 バターン! っと勢いよく扉を開いてレイゼが入ってきた。

 もちろんゼクードは壁に挟まれてペチャンコになる。

 

「きゃあああ! お義兄様ああああああ!」

 

 レィナが絶叫し、レイゼがそんな彼女に怪訝な顔をする。

 

「あれ? ゼクードは?」

 

「と、扉の裏に……」

 

「裏? ……うおおおおゼクード!? お前! うわっ! ひっでぇ傷! レィナ! なんでもっとちゃんと手当してやらねぇんだよ!」

 

「いやあなたですからねやったの!」

 

「え?」

 

 

「そうか……扉を開けようとしたらオレが開けてきて、それに巻き込まれたのか。そりゃあ悪かったな。すまねぇ」

 

 城の廊下を歩きながら、見事なタンコブを頭に生やした姉レイゼが言った。

 対する弟のゼクードはゲンコツに使った拳からシュ〜ッと煙を上げながら頷く。

 

「うん。俺、女性は基本的に殴らないんだけど、姉さんは特別扱いだから許してね?」

 

「おう。こんなに嬉しくねぇ特別扱いは初めてだぜ」

 

 タンコブを撫でながらレイゼは廊下を歩く。

 ゼクードとレィナは彼女についていき、セレンの休む部屋へ歩を進めている最中だった。

 

「で、ミオンから聞いたぜ? なんでもヤベェ人間と戦ってたんだってな」

 

 どうやらヴァルドレイクたちの事はすでに話が回っているみたいだった。

 

「ああ。奴らについては後でしっかり話し合わないといけないって思ってる。かなり危険な奴らだからな」

 

「お前がやられるほどとなると話はそんな小さくねぇぞ。【シエルグリス】と【エルガンディ】の存亡の危機に繋がる大事件だ」

 

 やや大袈裟に言うレイゼだが、後ろでレィナもウンウンと同意している。

 騎士のトップが負けるというのはそれだけでみんなに不安を与えてしまうものなのだ。

 

 自分という存在の重さを再確認させられる。

 

 とりあえずなんとか言い訳したかったが……何も思いつかなかったので素直に認めることにした。

 

「……分かってるよ。でもその前に、先に母さんにだけは会わせてほしい」

 

「母さん?」

 

 レイゼが首を傾げると、レィナがハッとなって口添えする。

 

「あ、女王様。ミオンさんが抱えていたあの女の子です」

 

「え!? あの子がお母さん!? ゼクードの!?」

 

「う、うん……あんな見た目だけど、俺の母さんなんだ」

 

「え……いや……お前の母ちゃんって亡くなったんじゃ……」

 

「そうなんだけど、竜の心臓で生き返ったんだ」

 

「竜の心臓? なに言ってんだお前?」

 

 一気に話が嘘くさくなったせいか、レイゼの顔が露骨に怪訝になる。

 でもゼクードは続けた。

 

「いや本当にそのまんまの意味なんだよ。とにかくまずは母さんに会わせてほしい。目を離してると落ち着かないんだ」

 

 また暴走しないか不安で仕方ない。

 とにかく自分の視野に納めておきたい。

 暴走してもすぐ対処できるように。

 

「わかったよ……あとで詳しく聞かせろよ? ここだ」

 

 ちょうどセレンの眠る部屋に着いたらしく、レイゼは扉を開けてくれた。

 

「ありがとう」

 

 そしておもむろに部屋に入ると、そこにはベッドで寝ている母セレンの姿があった。

 

 思わず撫でたくなるほど可愛らしい少女の寝顔だった。

 そんなスヤスヤと眠る母を確認して、ゼクードは安堵した。

 

「母さん……良かった……。これで暴走もしなけりゃいいんだけど」

 

「暴走?」っとレイゼ。

 

「竜の心臓は凄い力を人間に与えるけど、その代償として人間の正気を奪うんだ」

 

「なんだって!?」

 

「母さんも少し前は暴走してた。今は落ち着いてるけど、今度またいつ暴走するか分からないんだ」

 

「暴走するとどうなるんだ?」

 

「一つの王国が滅ぶ」

 

「な!」

 

「【エルガンディ】からずっと北東にある【ハーティシオ】って王国が、母さんの暴走によって滅んだ。俺の仲間もその被害を受けた」

 

 ゼクードの言葉にレィナが顔をわずかに暗くした。

 レィナはセレンのブレスで火傷を負い、義息子のリイドも火傷を負った過去がある。

 

 セレンの暴走の話は、レィナにとって忌まわしい記憶になっているはず。

 

「……レィナちゃん。ごめん」

 

「いえ、もう過去の話です」

 

「……ありがとう」

 

 レィナの寛大さに感謝していると、レイゼが腕を組んで険しい顔をした。

 

「おいゼクード。いくらお前の母ちゃんでも、そんな危険な奴をいつまでもここに置いとくわけにはいかねぇぞ? オレは……安易に家族を優先できる立場じゃねぇ」

 

「わかってる。だから母さんが目覚めたらすぐに【エルガンディ】へ帰ろうと思ってる」

 

「そうか。わりぃな……」

 

「良いんだよ姉さん。姉さんの判断は何も間違ってないよ」

 

「そうは言うけどよ……この人、オレの義母ちゃんでもあるってことだろ?」

 

「あ……」

 

 そうだった。

 セレンはゼクードの母。

 ロゼはレイゼの母。

 

 ロゼがゼクードの義母なら、セレンもレイゼの義母だ。

 今さらフォルス家の根源を思い出した。

 

「気分良くねぇよやっぱ……」

 

「『それでも』だよ姉さん。姉さんは女王なんだから。国民を優先しなきゃダメだ。母さんの事は俺がなんとかするから」

 

「……そうだな。まぁ、その件は任せるとして、お前と戦った7人の連中はどうする?」

 

「アイツらも母さんと同じで竜の心臓で動いてる。いつ正気を失って襲ってくるか分からない。それに連中はあの力を使って自分たちの王国を作ろうとしている。そのために母さんの事も狙ってる」

 

「義母さんも? ……まぁそりゃそうか。一国を滅ぼすほどの力を持ってるもんな」

 

「いや、違うんだ姉さん。アイツは母さんの力を狙ってるわけじゃない。母さんにたくさんの子供を産ませようとしてるんだ」

 

「はぁ!?」

 

 レイゼが驚愕し、目をギョッとさせた。

 そんな姉を前にゼクードは話を続ける。

 

「竜の心臓に適合した人間同士の子供がほしいみたいだった。もし本当にとんでもない人間が生まれてきたら、それはそれでマズイ。もし何もかもが上手くいってしまったら……将来的にはみんな奴らに支配されてしまう」

 

 あくまで奴らが正気を失わずに済んだら、の話だが。

 

「気の長ぇ計画だなぁ。それに義母さんに子供を産ませるなんてソイツらロリコンか? 高く見積もってもこの義母さんは15歳くらいの身体だろ? 15歳を孕ませようなんてよっぽどの変態だぜ。なぁ?」

 

 レイゼが言うとレィナは

「そ、そですね……は……ははは…………」

 っと頬を真っ赤にして冷や汗をダラダラ流していた。

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