【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第351話【奇跡の対面】

「気の長ぇ計画だなぁ。それに義母さんに子供を産ませるなんてソイツらロリコンか? 高く見積もってもこの義母さんは15歳くらいの身体だろ? 15歳を孕ませようなんてよっぽどの変態だぜ。なぁ?」

 

 レイゼが言うとレィナは

「そ、そですね……は……ははは…………」

 っと頬を真っ赤にして冷や汗をダラダラ流していた。

 

「お? どした?」

 

 レイゼがレィナの挙動不審に首を傾げると、寝ていたセレンがモゾリと動いた。

 

「ん……」

 

「! 母さん……!」

 

 ゼクードがセレンのベッドに寄り、母の顔を覗き込む。

 ゼクードの影がセレンの顔を覆うと、ゆっくりと目を開けてきた。

 

「……え、フォレッド!?」

 

「いや違うよ母さん。俺だよ。ゼクードだよ」

 

「あ……ゼクード!」

 

 目をパッチリ開けたセレンが今度はゼクードの両肩を掴んできた。

 

「あなた大丈夫なの!? どこも痛くない!?」

 

「だ、大丈夫だよ母さん。落ち着いて」

 

「でもその顔……」

 

「大丈夫だって」

 

 なんとか母を抑えて落ち着かせたが、ゼクードの顔は包帯だらけだった。

 半分はレイゼのせいだが、これで心配するなという方が難しいだろう。

 

 母親なら尚の事だ。

 俺もカーティスらが包帯だらけの姿で現れたらさすがに焦る。

 

「それより母さん……母さんは、その……竜の人格とかは大丈夫なのか?」

 

「あ……うん。今はなんともない。まったく出てくる気配もないわ」

 

「そっか……なら良かった」

 

「ゼクード……あの時は本当にごめんなさい。あなたの家族を……あんなに……」

 

 母セレンの言葉に息子ゼクードは首を振る。

 

「いいんだよ母さん。母さんだって、どうしようもなかったんだから。それより………………会えて嬉しいよ」

 

「……うん。私もよ。本当に大きくなったわね。顔もお父さんにそっくりだわ」

 

「そ、そうかな?」

 

「そうよ。カッコいい顔してる」

 

 カッコいい……か。

 親に言われても普通は微妙な気分になるものだが、今の場合は素直に嬉しかった。

 

 こうして生き返った母と普通に会話している今が尊くて仕方ない。

 

「はは…………けど、その……正直に言うと俺は、母さんのこと、もう死んだと思ってた。俺を投げて崖から落ちていったあの時に」

 

「うん……私もそう思ってた。でも……気づいたら生きていたわ。抜き取られたはずの心臓の音がしたの」 

 

「それって……」

 

 ゼクードが聞くとセレンは頷く。

 

「心臓が再生したのかもしれない。私の心臓なのか、竜の心臓なのかは分からないけれど……」

 

「そっか……」

 

 竜の心臓は確かに俺が抜き取って潰したはず。

 それなのに再生したってことは、あの竜の心臓はとんでもない再生能力を有していたってことか。

 

 果たして再生したその心臓が母さんの心臓なのか、竜の方の心臓なのか……

 

 それさえ分かればかなり安心できるのに……

 

 少なくとも母さんの心臓ならば、竜の人格が出てこない可能性があるからだ。

 現に輸血されたグロリアは今も正気を保っている。

 

 もし正気を失う原因が竜の心臓にあるならば、グロリアが助かる可能性も出てくる。

 

 母さんが今後も正気でいれば、それが証明できるかもしれない。

 

「母さん」

 

「?」

 

「しばらくは俺の側を離れないでほしい」

 

「え?」

 

「またいつ竜の人格が現れるか分からないだろ? もし現れたらすぐに対処できるようにしたいんだ。それに母さんはまだヴァルドレイクたちに狙われている」

 

「あ……」

 

 どうやらセレンも思い出したらしい。

 ヴァルドレイクたちの事を。

 そして思い出したせいで顔を暗くし、身を震わせた。

 

 あれだけ酷い目に遭わされたのだ。

 怖くて当然である。

 

「大丈夫だよ母さん」

 

「ゼクード……」

 

「今回は負けてしまったけど、次はもう負けない。母さんは俺が必ず守るから……俺から離れちゃ駄目だぞ?」

 

 そんなゼクードの言葉にセレンは目を丸くして、それからクスクスと小さく笑った。

 

「ふふ……ちょっとドキッとしちゃった」

 

「え?」

 

「ううん。なんでもない。ありがとうゼクード」

 

 息子の成長に満更でもない母セレンは微笑んだ。

 当の息子ゼクードは実は聞こえていたので苦笑する。

 すると後ろでずっとゼクードとセレンを見守っていたレイゼが口を開いた。

 

「おいゼクード。そろそろオレの事を紹介してくれよ」

 

「あ、ごめん。母さんこの方はこの国の女王様だよ」

 

「女王様!?」

 

 いきなりとんでもない地位の人間が現れてセレンは驚愕した。

 レイゼは丁寧にお辞儀する。

 

「お初にお目に掛かります。レイゼ・シエルグリスです」

 

「あ! あ、えっと……セレン・フォルスです! この度はご迷惑をお掛けしてすみません!」

 

「とんでもない! あなたは私の義母ですから。これくらいは当然です」

 

「え…………義母? え!?」

 

 まったく心当たりがないセレンは焦ってゼクードを見た。

 セレンからすれば生んだ覚えがあるのはゼクードだけ。 

 これはレイゼの言い回しが悪い。

 仕方ないのでゼクードは口添えした。

 

「母さん。シエルグリスって名前に聞き覚えはない?」

 

「ロゼのこと?」

 

 即答だった。

 セレンはロゼを忘れてなかったようだ。

 

「そう。このレイゼさんはロゼさんと父さんの娘なんだ。つまり俺たちの家族で身内なんだよ」

 

 ゼクードの説明にセレンは目をこれでもかと開いてレイゼを見た。

 レイゼはそっとセレンの手を握る。

 

「お会いしたかったです……お義母(かあ)さん」

 

「ほ、本当にロゼとフォレッドの……?」

 

「はい。私の母……ロゼ・シエルグリスは、残念ながらもうお亡くなりになられてますが……」

 

「そう……ですか……」

 

 重い沈黙が場を支配したが、セレンはゆっくりと顔を上げてレイゼを見た。

 

「あ、あの……女王様……」

 

「レイゼと呼んでくださいお義母さん。あなたはそう呼んでも良い立場です」

 

「え? あ……えと……」

 

 そう言われて困惑するセレン。

 いくら義娘(ぎじょう)とは言え相手は一国の女王だ。

 いきなり呼び捨てにしていいと言われてもなかなか難しいだろう。

 

 ゼクードはゼクードで正直いま喋ってるのが本当にレイゼなのかと疑っているところだ。

 あのガサツな姉が敬語を使っていると違和感しかない。

 

「レイゼ……さん。その……顔を、もっとよく見せてもらっても、よろしいでしょうか?」

 

「どうぞ。お触りください」

 

 レイゼはセレンの手を誘導し、自分の頬に手を当てさせた。

 セレンは義娘の頬をそっと撫でて、顔を見つめた。

 レイゼの美しい顔は過去のロゼを思わせる。

 

 黒い瞳はロゼ。

 銀髪はフォレッドのものを受け継いだのだろう。

 それにレイゼの身体からはフォレッドの匂いが確かにした。

 

 ドラゴン化の影響だろう。

 鼻がやたらと効く。

 ロゼ本人の匂いは分からないが、フォレッドのではないもう一つの匂いがレイゼからする。

 

 それがきっとロゼの匂いなのだろう。

 不思議と落ち着く良い匂いだ。

 

「あの……お義母さん」

「?」

 

 頬をセレンに撫でられながら、レイゼが口を開いた。

 その顔は少し赤くなっている。

 

「抱きしめても……いいでしょうか?」

 

「!」

 

 レイゼの思わぬ願いにセレンは目を丸くしたが、親友ロゼの忘れ形見を拒む理由などなかった。

 セレンは微笑んで頷き、レイゼの抱擁を受け入れた。

 

 レイゼの身体とセレンの身体が密着し、二人の手が背中に回る。

 

 いつ暴走するか分からないセレンとこんなにも密着させるのは危険なのだが、ゼクードは今この大事な瞬間を邪魔するわけにもいかなかった。

 

 奇跡としか言い様のないセレンとレイゼの出会い。

 本来ならばセレンはとっくの昔に死んでいた存在だ。

 今こうしてロゼの娘と抱き合っているこの瞬間は、奇跡の現実を見ている瞬間だ。

 

 そう思うと感極まってゼクードはホロリと涙が溢れた。

 隣でレィナも貰い泣きしている。

 

 セレンとレイゼの抱擁はしばらく続いた。

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