【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第354話【アグリス、襲来!】

 グロリアやリイドたちがディアマード家の事をアスレイ陛下に伝え、そこから【エルガンディ王国】には厳戒態勢の命令が出た。

 

 戦える者は常に武器を常備し、いつ襲撃されても応戦できるようにする。

 

 それがアスレイ陛下の命令だった。

 本来は王国内での抜刀は厳禁である。

 しかし今の場合は命令のおかげで抜刀が可能となった。

 

 アスレイ陛下の仰った【戦える者】とは騎士を指す。

 故にSS級騎士のオフィーリアも例外ではなかった。

 

「はいコレ」

 

「すみませんリーネさん。こんな時間に」

 

 時刻は夕暮れ。

 オフィーリアは錬金術師リーネの店へとやって来ていた。

 

 理由は点検に出していた防具の受け取りと、ちょっとデザインを変えてもらった大鎌【エルウインド】の受け取りだった。

 

「ううん。いいのよ。厳戒態勢になったんでしょう? だったら仕方ないわ」

 

 言いながらリーネはカウンターから窓へと移動しカーテンを閉めた。

 もう店じまいだ。

 

「それにしても妊婦に武器を持たせるなんて……カーティスにも困ったものね」

 

「あ、違うんですリーネさん。カーティスさんは反対してたんです。わたしが武器を持ちたいって言ったんですよ」

 

「え!? ど、どうして?」

 

「自分の身とお腹の赤ちゃんを守るためです。万が一のためですよ」

 

「……それは分かるけど激しく動くとお腹の子に響くわよ?」

 

「はい。でも……襲われたら響くどころかわたしごと殺されるかもしれませんし、自己防衛手段はあった方がいいと思うんです」

 

「なるほど……そうやってカーティスを説得したのね?」

 

「はい! そしたら分かってくれました!」

 

「ふふ……わかったわ。あなたが戦闘に巻き込まれない事を祈るわね」

 

「ありがとうございますリーネさん! では失礼します!」

 

 オフィーリアはペコリと頭を下げて店から出ていった。

 チャリンチャリンと鈴が鳴ってドアが閉まる。

 

「ほんっと明るい子ね……」

 

 ふふ、と笑って店を片付けようとしたその時!

 リーネの口が何者かの手によって塞がれ、喉にナイフを突き付けられた!

 

「!?」

 

「動かないで。殺すわよ?」

 

「……っ!」

 

 女の声だった。

 いきなりの出来事に理解が追いつかずリーネは半ばパニックになって身を震わせた。

 

「さっきの武器はオリハルコン製だったみたいだけど、あなたが錬金したの?」

 

 強盗かと思ったが、どうにも違うようだった。

 この女はいったい?

 まさか……

 

「答えなさい」

 

 女はリーネの口を開放してきた。

 

「あなたまさか……リイドが言っていたドラグーン!?」

 

 言った次の瞬間にリーネは床に全身を叩きつけられ、そのまま背中を踏まれた。

 

「うあっ!」

 

「そうよ? 無駄な抵抗はしないことね。大人しく従えば痛い目には遭わせないわ」

 

「ワタシに、何をさせたいの……」

 

「決まってるでしょう? 私達にオリハルコンの武具を錬成してほしいのよ」

 

「!」

 

「まだドラゴンの力は扱い慣れてない。だから騎士としての技量を活かすためにオリハルコンの武具が必要なの。だから協力しなさい」

 

「誰が悪党なんかに!」

 

 そのリーネの一言が女の逆鱗に触れた。

 女はリーネの背中を強く踏みつけた!

 

「きゃあっ!」

 

 続けざまに脇腹をキックする。

 

「うっ!」

 

 さらに追い打ちするようにリーネの金髪を引っ掴み、顔を無理矢理あげさせる。

 

「痛……! げほっ! はぁ……はぁ……」

 

「平民風情が生意気な口聞いてんじゃないわよ。そもそもアンタに選択権なんてないんだから」

 

 無理矢理顔を上げさせられ、視線も合わせられる。

 リーネのエメラルドグリーンの瞳に赤い髪の女が映り、リーネは彼女を睨み付けた。

 

「あら反抗的な眼。もう一発ほしいみたいね!」

 

 女が手を振りかざしたその時!

 凄まじい衝撃音と共に女が吹き飛んだ。

 

「……っ!?」

 

「変な気配がしたから戻ってみれば! なんてことをしてるんですかあなたは!」

 

 そう怒声を上げながら現れたのはオフィーリア!

 女を蹴り飛ばしてリーネから離らかせると武器【エルウインド】を構えた。

 

 蹴り飛ばされ壁に激突した女は口から流れる血を拭ってオフィーリアを睨んだ。

 

「ぐ……アンタはさっきの!」

 

「リーネさん! ここはわたしに任せて逃げてください!」

 

「う、うん! すぐ誰かを呼んでくるわ!」

 

 リーネが脇腹を庇いながらフラフラと走り出す。

 店から出ようと扉へ向かうと、敵の女騎士が立ち上がった。

 

「行かせるわけないでしょう!」

 

 赤髪の女騎士は壁に立て掛けてあった斧を取って装備。

 すぐさまリーネに向かって加速した。

 だがそれを黙って見過ごすオフィーリアでもない。

 

 女騎士の目の前にオフィーリアが立ち塞がった。

 しかしそれで怯む女騎士じゃない。

 敵は斧を握り直し、オフィーリアに向かって薙ぎ払う。

 

「【ディアマードアーツ・スマッシュ】!」

 

【気】を纏った斧の一撃をオフィーリアは大鎌【エルウインド】で受けた。

 

「ぐっ!」

 

 凄まじい威力のそれにオフィーリアは全身がビリビリと痺れた。

 次の瞬間!

 オフィーリアの身体が宙に浮き、踏ん張り切れなくなって吹き飛んだ。

 

 ガシャーンと音を立てて壁を貫通し、隣の部屋までさらに吹き飛ぶ。

 

「オフィーリア!」

 

 ドアノブを握っていたリーネが叫ぶ。

 そんなリーネに女騎士がターゲットをオフィーリアからリーネに戻した。

 

「逃さないわよ!」

 

 迫りくる女騎士――――の後ろからオフィーリアが! 

 

「【竜斬り】!」

 

「!?」

 

 女騎士が咄嗟に反応して斧で大鎌の一撃を防いだ。

 そしてこちらも威力によって押され、女騎士は奥の壁に激突した。

 その衝撃で立て掛けてあった武器らが床に落ちていく。

 

「無視は困りますね。あなたの相手はわたしですよ?」

 

「……」

 

 あくまで邪魔をするオフィーリアに、女騎士は忌々しそうに睨みつけてきた。

 リーネはすでに店の外。

 これで援軍が来るまで持ち堪えれば!

 

「【ディアマードアーツ・トライデント】!」

 

 女騎士の鋭い突きが電光のように走り、オフィーリアはそれを歩をズラして躱した。

 間合いを見切った完全なる対応だった。

 

 敵の攻撃を躱し、オフィーリアは大鎌を返す。

 敵の首を狙い、烈風のごとき薙ぎを放つ!

 

「【竜斬り・斬首《ネックレス》】!」

 

 ドラゴンの首を切り落とし即死させる大鎌技。

 その一閃を首に直撃した女騎士は、生きていた。 

 

「あっぶな……やるじゃない」

 

 首が落ちなかった。

 恐ろしく硬い手応えに驚き、オフィーリアは一旦後退する。

 

 見れば女騎士の顔が竜鱗に覆われていく。

 あれが先程の一撃を防いだのだろうか。

 

「竜の鱗……厄介ですね」

 

 人間の肌に竜鱗が生えるなんて有り得ない。

 有り得ないけど、これがグロリアさんが言っていたドラグーンという者なのだろうか。

 

 鎧の下に竜の鱗まで纏うなんて。

 鉄壁もイイところである。

 反則的な硬さだ。

 

「もうアンタの攻撃は私には通じないわ」

 

 これはマズイ。

 どうしようか。

 妊娠中で魔法も使えない。

 

 それに、あんまり長引くとお腹の子が……

 

「この身体で戦うの慣れてないのよね。アンタで慣れさせてもらうわ!」

 

 女騎士が飛び掛かってきた。

 

「くっ!」

 

 いつの間にか女騎士の腕がドラゴンのような形状に変貌しており、指先の爪が鋭利になっていた。

 その爪と斧での乱舞がオフィーリアを襲う。

 凄まじい猛襲だった。

 

「ほらほら! どうしたの! 反撃してきなさいよ!」

 

「言われなくても!」

 

 ガキンと爪と斧を弾いて火花が散る。

 女騎士はわずかに体勢を崩す。

 その隙を逃さずオフィーリアは【竜斬り】を敵の脇腹に直撃させた。

 

 しかし刃は通らない。

 オフィーリアの【気】では敵の竜鱗を突破できなかった。

 

「痛くも痒くもないわ! あはっ! 最高ね! この身体!」

 

 ガシッと大鎌の刃を掴んできた女騎士。

 オフィーリアは引き寄せられそうになり、慌てて武器を手放した。

 

 それが悪手だとわかっていたが、どうしようもなかった。

 オフィーリアは素手で戦う構えを見せた。

 

 まずい!

 武器でもダメージを与えられないのに、素手でどうしろって言うんですか!

 

 自分に怒りかけるオフィーリア。

 

 そんな事は露知らずに女騎士が迫ってくる。

 ポイッとオフィーリアの大鎌を捨てて、斧を構えて肉薄してくる。

 

「さぁ! 終わりよ!」

 

 斧を振り上げた女騎士!

 

 刹那!

 

 赤い一閃が走った!

 

 肉を断つ音が響き、女騎士の腕が吹き飛んでいた。

 

「え……?」

 

 何が起こったか分からない女騎士は、ようやく目の前にオフィーリアではない別の存在が居ることに気づいた。

 

 それは紅の鎧を身に纏った青年。

 パープルの瞳が女騎士を見下ろしていた。

 

「汚い手でオフィーリアに触るな!」

 

「カーティスさん!」

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