【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった 作:ミズノみすぎ
セレンを連れて【エルガンディ】の主城へ来たゼクードは、廊下で話しているレミーベールとグロリアを見つけた。
「レミー! グロリア!」
「「お父さん!」」
娘二人がこっちに気づいて顔を明るくした。
「二人ともケガはないか!?」
「大丈夫よ。それよりお父さん! リーネさんが!」
レミーベールに言われゼクードは頷く。
「ああ聞いてる。陛下の方はご無事なのか?」
「うん。今グリータ団長やガイス団長らを含めて会議をしてるわ。今後のドラグーン対策とリーネさんの救出について話してるみたい」
やっぱりか。
なら話は早いな。
「俺も参加したい。案内してくれ」
「ええ。……え!?」
レミーベールがゼクードの後ろにいるセレンに気づいた。
「こ、こんにちはレミー……グロリア……」
「ぉ、お婆ちゃん……!」
目を大きくしたレミーベールに対し、グロリアの方は冷静だった。
「そんな驚く? ドラグーンに捕まってたって、ちゃんと説明したでしょ?」
「わ、わかってるわよ。ちょっとビックリしただけ……」
だろうな。
カーティスと同じ反応だ。
「話したいことはいろいろあるだろうけど今は我慢してくれ。リーネさんの救出が先だ」
「そうね……」
「会議している部屋へ案内してくれ」
「ちょっと待ってお父さん。お婆ちゃんも連れてくの?」
グロリアが疑問を口にし、ゼクードはすぐに返す。
「ああ。何かあった時、すぐ対処できるよう側に置いておきたいんだ」
「対処って……」
「言わなくても分かるだろ?」
「分かるけど、それならむしろ陛下に近づけるのはマズいんじゃない?」
鋭いな。
確かにいつ暴走するか分からないセレンをアスレイ陛下に近づけるのは危険だ。
正直、さっきカーティスに頼めば良かったかな?
でもアイツも忙しそうだったし。
「マズいだろうな。けど、他に方法もないんだ。俺としては側にいてくれた方が安心だし、暴走するかしないかがハッキリするまでは、目の届く範囲にいてほしいんだよ」
「うん。まぁ……分かるけど」
「グロリア。お前の方こそ大丈夫なのか? なにか体調に変化はないか?」
「うん大丈夫よ。何もないわ。……まだ怖いけどね」
「……」
グロリアの言葉にセレンは少し顔を暗くした。
グロリアがこうなったのは、他でもないセレンの輸血が原因だからだ。
だがそれを咎めることはない。
ああしないとグロリアは死んでたらしいから。
当のグロリアも、自分をドラゴン化させた元凶であるセレンには何も言わなかった。
「……ゴメンな。すぐに調査したかったんだけど、こんなことになって……」
「仕方ないわよ。お父さんが謝ることじゃないわ。ほら。こっちよ」
※
グロリアとレミーベールに案内されたのは二階の【王の間】だった。
そこには【南の領主】であるグリータと、【北の領主】ガイス。
そして【東の領主】【西の領主】らしき人物がアスレイ陛下と円を作って会話していた。
そこにゼクードは早足で駆け付けた。
セレンも後に続く。
「みなさん!」
「おおゼクード殿! 戻っていたんですね! 良かった!」
アスレイ陛下が思わぬ助っ人の帰還に歓喜した。
対して隣のグリータは険しい顔つきで口を開く。
「ゼクード聞いてくれ! リーネが拐われたんだ!」
焦りが伺える声音だった。
自分の妻が拐われて、さらに息子二人も重傷となれば心中穏やかではいられないだろう。
「分かってるよグリータ……あ、いや! 分かってますよ団長。今どんな話になっているんですか?」
聞くと答えたのはガイスだった。
「リーネ・ロードリーの救出を最優先に行う。その方針に話は進んでいるんだが……逃げた先が2つあってな」
「2つ?」
ゼクードは怪訝な顔で言うと【西の領主】と【東の領主】がそれぞれ口にする。
「奴らが逃げた方角は南だと聞いた。やはり【竜軍の谷】だと思うんだが」
「いや、私の騎士たちは北東へ逃げたのを見たと言っている。例の【ハーティシオ】という亡国ではないか?」
【竜軍の谷】か【ハーティシオ】か。
なるほど。
どちらかにリーネが連れ去られたということか。
「ゼクード殿はどう思いますか?」っとアスレイ。
「【ハーティシオ】は騙しでしょう。距離が遠すぎる。奴らの狙いは建国です。ならば【エルガンディ】と【シエルグリス】から離れることはしないはず。【竜軍の谷】が正解かと」
リーネを拐ったのだって、きっとオリハルコン製の武器を確保するためだろう。
前に戦ったときは氷の武器で代用していたからな。
「なるほど……ならばさっそく【竜軍の谷】へ救出部隊を編成しましょう」
「陛下。それなのですが、こちらも少数精鋭で当たろうかと思っています」
「え?」
「若手のレグナ隊長とリイド隊長がやられたと聞きました。攻撃がまったく通用しなかったとか」
「! もう知ってたのか」
驚くグリータにゼクードは頷く。
「ええ。彼らほどの騎士でもダメなら、並の騎士を当てても返り討ちにされます。救出部隊の編成は私に任せてください」
「そう言ってくれるならむしろ助かります。リーネ・ロードリーの救出作戦……ゼクード殿に一任します」
「はっ!」
★
城を出ると、外はもう日が落ち始めていた。
本当は今すぐにでもリーネちゃんの救出に向かいたいが、夜の作戦行動は極めて危険だ。
残念だが、明日の朝まで待つしかないだろう。
ゼクードはグリータとガイスと共に街中を歩いた。
見掛けた住民たちは食事を配給し、受け取った住民たちは帰宅していく。
しかし騎士たちは違う。
パンを口にしながら仕事をしている姿も見えた。
「おいゼクード。少数精鋭って、どんなメンバーにするんだ?」
いきなり隣を歩くグリータが聞いてきた。
「もう決めてるよ。まずカーティス。そしてローエ・カティア・フランベールの3人」
「たった4人か!?」
「いや。レィナちゃんとミオンさんにも協力してもらう」
「レィナも?」
「ああ。レィナちゃんは強いし、個人的に凄く頼りになるんだ。何度も助けられたしな」
エリザの時や、今回のドラグーンの時だってレィナちゃんには助けられた。
個人的にレィナちゃんは幸運の女神のような存在だ。
「それは構わないんだが……レィナの【気】でドラグーンを斬れるか?」
「斬れる。城のベテラン騎士たちでダメージが通るなら、レィナちゃんレベルなら問題ない。ミオンさんもだ。あの二人はうちのローエたちと同格の【気】を持ってるよ。纏ってる覇気で分かるだろ?」
「お、おう……いや、ん〜……」
グリータが眉間にシワを寄せて唸る。
そのグリータの隣を歩くガイスは苦笑した。
「はは……さすがだなゼクードくんは。私はもう相手の【気】を感じる勘も鈍ってしまったよ」
そうか。
ガイスさんも立場上、鈍ってしまったのか。
出世するとみんな弱くなってしまうのは仕方ないか。
あとガイスさんは単純に年齢も年齢だしな。
体力的にも仕方ない。
「領主なら仕方ありませんよ。前線に出ちゃいけませんからね」
「そうだな……また君頼りになってしまうが、よろしく頼むよ。君の子供たちはリリーに頼んておくから心配しないでくれ」
「ありがとうございます。助かります」
御辞儀しながら言うと、ガイスは【北の領地】を目指して別の道へ歩いて行った。
いやしかし、本当に一番助かる援助だ。
ローエたちも連れてくとなると子供の面倒を見てくれる人が必要になる。
オフィーリアやレミーベールも妊娠してるから無理に頼めないし、やはりリリーベールさんをアテにしてしまう。
もうホント……リリーベールさんには死ぬまで頭が上がらないな。
「すまんゼクード……また迷惑を掛ける……」
グリータが改めてそう言ってきた。
ゼクードは肩を竦める。
「なに言ってんだよ。俺とお前の仲じゃないか。リーネちゃんだって親戚だし当然さ。俺だってお前に多大な迷惑掛けたんだし」
「……ありがとな本当に。お前が友達で良かったよ」
「いいって。そういうのむず痒くなるからさ。……とりあえずレィナちゃんにさっきの話を伝えておいてくれ。戦力としてアテにしたいって」
「わかった。必ず伝えておく」
※
そしてグリータとも別れ、セレンと二人で街中を歩いていた。
虫の鳴き声が聞こえ始め、夜風も冷たくなってきた。
カツカツと二人の足音が響くなか、不意にセレンが口を開く。
「大きくなったわねゼクード」
「え?」
「後ろであなたをずっと見てたわ。いろんな人に頼りにされて……あなたの背中、凄く大きく見えた」
「そ、そう?」
急にどうしたんだ?
いきなり褒められてビックリした。
悪い気はしないけど。
「いろんな人があなたを見てホッとした顔を浮かべてたわ。グロリアやレミーも。あの陛下さんも。みんなあなたを凄く頼りにしてるって、あれで分かったの」
そうなんだ?
よく見てるな。
「まるで昔のフォレッドを見てるみたい」
「親父もこうだったの?」
「うん。いろんな人に頼りにされてた。無理してるんじゃないかって、心配になるくらい」
「へ〜あの親父が……。俺にとって親父は女ったらしなイメージしか残ってないなぁ」
「そこは間違ってないよ」
「あ、やっぱり?」
「うん。他の女の子に手を出そうとして、その度(たび)にロゼにブッ飛ばされてた」
親父もブッ飛ばされてたんだ。
お義母さん昔っから腕っぷし強かったんだ。
まぁ〜いいパンチだったもんなぁ〜マジで。
「お義母さんやっぱ強ぇな……実は人類最強なのかも……」
エルガンディ最強を俺含めて二人もブッ飛ばしてるわけだし。
「ふふ……でも本当に立派になったわねゼクード。やっぱりフォレッドの子なんだって、凄く分かるわ」
「はは……場数じゃ親父には及ばないよ。俺なんてまだ17の若造だしさ」
「その歳であれだけ頼りにされてるなら充分に立派よ。お父さんにも引けを取らないわ。自信持って」
セレンが限界まで背伸びしてゼクードの頭を撫でてきた。
身長差が凄いからプルプルしてる。
「あ……ありがと母さん。無理しなくていいよ?」
「む、無理してないよ? ぜんっぜん無理してない」
いや全身プルプルしてるって。
力(りき)み過ぎてプルプルしてるって。
つま先立ちで辛そうだよ。
「……不思議ね。私のお腹から出てきた時はあんなに小さかったのに。今はこんなに……私より大きくなっちゃって……私よりすんごく強くなって……子供って凄いわね」
息子の成長を目の当たりにして感慨深いのか、そんなことをセレンが言ってきた。
母親からすると、守るべき子供がいつの間にか自分より逞しくなっていて、気づけば自分を守ってくれるほどの存在になったわけだ。
それは、まぁ……感慨深いだろうな。