【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

361 / 448
第361話【残酷な騎士】

「お父さん! お婆ちゃん!」

 

 突然、城の方角からやってきたのはグロリアだった。

 ゼクードとセレンは振り返る。

 

「グロリア? どうしたんだ?」

 

「どうしたんだじゃないわよ。会議終わるの待ってたのに置いてくなんて!」

 

「あ、待ってたのか? ごめん」

 

「んもぅ……で? どうなったの?」

 

「少数精鋭で部隊を組んでリーネさんを救出することになった。生半可な騎士じゃ返り討ちに遭うからな」

 

「なるほどね。どんなメンバー?」

 

「まず俺とカーティスは当然として、残りはローエ・カティア・フラン・レィナちゃん・ミオンさんの計7人だ」

 

「え〜? ミオンってあのヒステリー女? 大丈夫なの?」

 

 ミオンさんがヒステリー女?

 なんだそれ?

 なんかあったのか昔?

 

「ヒステリー女ってなんだ?」

 

「え? あぁいや……その、なんでもない」

 

「なんでもないならそんな失礼なこと言うなよ」

 

「ごめん……」

 

「……まぁとにかく、ミオンさんはかなりの覇気を纏ってるよ。ドラグーンの竜鱗も彼女なら貫通できるはずだ」

 

「ふ〜ん……そんなに強いんだあの女。でもたった7人で大丈夫? あのカーティスと互角にやり合った化け物も混じってるそうよ」

 

「レグのことか。あいつはそれこそカーティスに任せる。これから戦う中で一番危険なのはヴァルドレイクとレグだ。奴らは俺とカーティスが倒す。一対一でやるためにも、他の女騎士はローエたちに必ず仕留めてもらわなきゃならない」

 

「けっこうギリギリの作戦ね。誰一人も失敗は許されないんだ」

 

「作戦というよりただの真っ向勝負さ。できればネオの助力も得たいんだが時間がない」

 

「まぁ……」

 

「それより本命はお前だぞグロリア」

 

「へ、アタシ!? お母さんたちほど強くないわよ!?」

 

「違う違う。これはリーネさん救出作戦だ。俺たちがドラグーンと戦ってる間に隙を見てリーネさんを救出してくれ。万が一に押されてもリーネさんさえ救えていれば退却もできる。頼めるな?」

 

「ああなるほど。わかったわ」

 

「頼むぞ。それから母さんも協力してくれ。母さんの翼が必要だ」

 

 言うとセレンはコクリと頷いた。

 

「うん。力になるよ」

 

「翼ってなに?」っとグロリア。

 

「ああ実はな。今日【シエルグリス】から空を飛んで【エルガンディ】に来たんだよ」

 

「え!?」

 

「ドラゴンに変身した母さんに乗せてもらったんだ。凄かったぞ! 空を飛ぶってメチャクチャ速いんだよ!」

 

「ぃ、いいな! アタシも乗りたい!」

 

「明日乗れるって」

 

「明日!? すぐ出発しないの?」

 

「さすがに日が落ちてるからダメだ。明日の早朝に発つ」

 

「でも早くしないとリーネさんが危ないんじゃ……」

 

「いや……あの選民思想の強いヴァルドレイクだ。オリハルコンを錬成できるリーネさんを殺すなんて真似しないだろう」

 

「まぁ……確かに」

 

「だから明日は早いぞ。お前もすぐに寝るんだ」

 

「ちょっと待ってよ。お婆ちゃんはどこで寝るのよ?」

 

「どこってそりゃあ……」

 

 しまった!

 今更になって気づいた。

 セレンを俺の自宅に泊めるのはさすがにキツイかもしれない。

 

 いきなりセレンを連れ込んだらローエたちがビックリするだろうし、いつ暴走するから分からないセレンを子供たちに近づけるのローエたちも嫌がりそうだ。

 

 いや、きっとローエたちならセレンを迎えてくれるだろうけど……内心穏やかではいられないはずだ。

 

 そんな空気をセレンもきっと感じ取って居心地が悪くなる可能性もある。

 俺もセレンから目を離せないから落ち着いて寝れないだろう。

 

 しくじったな……

 自宅へはまだ連れていけない。

 暴走しないという確証を得るまでは。

 

 しかしどうする?

 セレンの寝床などをまったく考えなかったな。

 こんな寒いなか外で寝かせるわけにもいかないし……

 

「や〜っぱり考えてなかったわね? 気の利く娘で良かったわね。アタシの家に特別に泊めてあげるわ」

 

「え、いいのか?」

 

「いいわよ。……お父さんもその方が安心して眠れるでしょ? アタシとお婆ちゃんを目の届く範囲に置けるんだから」

 

 確かに……

 それならまだ余裕があってしっかり睡眠も取れそうだ。

 

「……助かるよ。ありがとうな」

 

「ありがとうグロリア」

 

「いいのよお婆ちゃん」

 

 

【竜軍の森】の奥深く。

 そこは森の中であり、焚き火がパチパチと弾ける。

 夜空の下で丸太に座らされたリーネは、目の前に現れた男を見上げた。

 

「この女が例の錬金術師か?」

 

「はい。間違いありません。彼女の店には他にもオリハルコン製の武器が何個かありました」

 

「よくやった」

 

 男はリーネの前に立つと丁寧に御辞儀した。

 

「お初にお目に掛かるお嬢さん。私はヴァルドレイク・ディアマードという者だ。あなたを手荒に扱ったことはどうか許してほしい」

 

「家に帰して!」

 

「それはできません。あなたには我々の建国に協力していただきます」

 

「誰があなた達なんかに!」

 

「あなたはオリハルコンを錬成できるようですね。我々も騎士の身。オリハルコンの武器は是が非でも手に入れたい。どうか我々にオリハルコンを錬成してくれませんか?」

 

 やっぱりオリハルコンが目的だったらしい。

 リーネは震える自分を誤魔化しながらヴァルドレイクを睨みつける。

 

「その武器で何をするつもりなの?」

 

「もちろん……あなた方を支配するために使います」

 

「……っ! 話にならない! 私の武器はドラゴンから人を守るための武器よ!」

 

「我々もドラゴンから平民を守ります。今はただ使う順番が逆なだけです。支配が済めば元の使い方に戻りますよ」

 

「その支配のために、何人殺すの?」

 

「抵抗する者すべてですね」

 

「やっぱり……話にならないわ」

 

「そうですか。まぁ……当然と言えば当然の答え。できればこの手段は使いたくなかったのですが……」

 

 ヴァルドレイクが指を鳴らすと、奥からメイド服を着た女の子が連れられてきた。

 茶色い髪の茶色い瞳。

 顔は何度か殴られたらしく、あちこちにアザがある。

 

 そのメイドは女騎士からヴァルドレイクへ渡された。

 

 リーネは嫌な予感がした。

 心臓がドクンドクンと高鳴る。

 

 この男……まさか……!

 

 リーネの目の前にこんな女の子を連れてくるなんて理由は一つしかない。

 

「彼女はこの先にある王国【シエルグリス】のメイドだ。名前はエルジー。視察のついでに捕縛しておいた。この時のためにな」

 

 まさか! 

 や、やめて!

 

 ドクンドクンドクンドクン!

 

 リーネの心臓が張り裂けそうなほど脈動している。

 今からこのヴァルドレイクがやろうとしていることを想像できてしまったのだ。

 

「さぁリーネさん。もう一度話をしましょうか?」

 

 ヴァルドレイクはエルジーの肩を抱き寄せ密着し、彼女の指をそっと握った。

 

「オリハルコンを錬成してくれれば、この娘とあなたには危害は加えない。協力していただけますね?」

 

「ひ、卑怯者! 子供を人質にするなんて大人のやることなの!」

 

 ボキィッ!

 

「あああああああああああああああ!」

 

 ヴァルドレイクに指をへし折られ、エルジーは激痛に悲鳴を上げた。

 

 なんてヤツなの!?

 こんな少女の指を顔色一つ変えないでへし折るなんて。

 このヴァルドレイクという男は血も涙もない化け物だ。

 

「リーネさん。状況をよく見て喋った方がいい」

 

「ま、待って! やめて! 協力するから! お願い!」

 

「最初からそう言えば――――」

 

「だ、ダメです! コイツの言いなりになっては!」

 

 指を折られたエルジーが涙目でリーネに言った。

 ヴァルドレイクの目が鋭くなり、エルジーを睨む。

 しかしエルジーは言った。

 

「私一人のために協力しないでください! コイツらに武器を渡したら、何人殺されるか! あっ!」

 

 ヴァルドレイクはエルジーを手放し、リーネの前へ放り捨てた。

 

「うぐ……っ」

 

 倒れたエルジーにリーネが慌てて駆け寄ろうとしたが、それよりも先にヴァルドレイクがエルジーの手を踏みつけた。

 

「ひぎっ!」

 

  折れた指も巻き込んで踏みつけられる。

 

「ぐっ! うっ! あ……ああああ!」

 

 ヴァルドレイクは足に捻りを加えて折れた指をさらに抉る。

 

「ひ! あぁあああ! 痛い! 痛い痛い痛い! やめてええええうわあああああああああああああああ!」

 

 エルジーの断末魔が森に響いた。

 リーネはそんな少女の叫びに耐えられず泣き叫ぶ。

 

「やめて! お願いやめて! もうやめてえええええ!」

 

「では我々に協力するか?」

 

「するから! するから足をどけて! 早く!」

 

「最初からそう言えば良いんだ」 

 

 ヴァルドレイクが足をどけると、リーネは即座にエルジーを抱きしめた。

 

「あなた大丈夫!?」

「ひ、く、は、はぁ、はぁ、う……ぐ…………っ! す、すみません……私の、せいで……」

「いいのよ! それより誰かお願い! 手当てしてあげて!」

 

 リーネが叫ぶと、ヴァルドレイクは革袋を付近に落としてきた。

 

「その中に我々のオリハルコンが入っている。全員分の武器を錬成しろ。今すぐにだ」

 

「ぉ……お願い。先にこの子の手当てを……お願い、します……」

 

 リーネに懇願され、ヴァルドレイクはやれやれと溜め息を吐いた。

 

「オルテンシア」

 

「はい」

 

「手当てしてやれ」

 

「わかりました」

 

 

 そしてリーネはヴァルドレイクの要望通りにオリハルコンを錬成した。

 それぞれの者に完成品を手渡していく。

 

「これがオリハルコンの武器! すごーい! 思ったより軽いのね」

 

 赤い髪の女騎士が大剣をブンブン振りながら喜ぶ。

 

「よく手に馴染ませておけ。すぐに実戦で使うことになる」

 

「はい! お父様!」

 

 娘たちの良い返事にヴァルドレイクは構わず続けた。

 

「手始めにこの先にある【シエルグリス】を制圧する。女騎士だらけの奇妙な王国だ」

 

「女騎士だらけ? 随分と頭の悪い王国みたいですね」

 

 金髪の男騎士が溜め息混じりにそう言うと、赤い髪の女騎士が前に出てきた。

 

「ちょっとレグ! なによその言い方! 女騎士を馬鹿にすんのやめてよね! 不愉快だわ!」

 

「なにが不愉快だ。女なんて家事と育児だけしてりゃいいんだ。アグリス。お前がいくら男の真似事をしてもオレに勝てるわけないだろう? 身体の作りがそもそも違うんだからな」

 

「あ、あんたねぇっ!」

 

「なんだ? 事実だろう? あのカーティスという男に手も足も出ず危うく殺されかけたくせに」

 

「くっ!」

 

「レグ……そのへんにしておけ」

 

「は……」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。