【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第362話【来てはならない人物が】

「ところでそのカーティスという男はなんだ?」

 

「はっ!【エルガンディ】で戦った赤い騎士です。キザな男でしたが腕は確かでした。認めたくはありませんが……オレと互角に剣を交えるほどの別格の騎士です」

 

「ほぅ……ゼクード以外にも腕の立つ騎士がいるようだな」

 

「あ! そのゼクードで思い出したんですが父上、実は……」

 

「なんだ?」

 

「信じ難いことなのですが……あのカーティスという男は、そのゼクードの息子らしくて」

 

「息子?」

 

「はい……」

 

 レグに言われたヴァルドレイクは顎に手を当てた。

 

「ふむ……フォレッドの息子の割には若いと思っていたが、子供もいる歳なのか。若作りというやつかな」

 

「若作り……ですか。どう見ても15〜18くらいの若造に見えますが……」

 

「そのカーティスという男は何歳くらいの男なんだ?」

 

「それが……オレと同じくらいで……」

 

 すると後ろで娘たちがざわめき出した。

 

「レグと同じくらい!?」

「そんなデカい息子がいる歳なの!?」

「子供がいるってことは結婚してるってことよね」

「まぁ顔はなかなかハンサムだったもんね」

「え、そう? 可愛い系じゃない?」

 

 そんな姉妹たちの言葉は無視してレグは口を開いた。

 

「あのカーティスという男はどう見ても嘘をつくタイプには見えません。匂いだって嗅げば嗅ぐほどゼクードにそっくりなんです」

 

「兄弟ではないのか?」

 

「断じて違うと言っていました。あの男がオレにこんな嘘をつくメリットはありませんし。おそらく本当のことを言っているんだと思います」

 

「ふむ……ゼクードはあの顔で30を超えているということか。まぁ……フォレッドの息子ならばそんなものか……」

 

「やっぱり若作りということですか?」

 

「そうなるな。まぁそんなことはどうでもいい。問題は【エルガンディ】にはそんな強敵が二人もいるということだ」

 

「は……」

 

「視察した【シエルグリス】にも凄まじい【気】を発する男を見掛けた。おそらくあの国の主力だろう。名前は――――」

 

 

「ネオ!」

 

【シエルグリス】の中央広場にてネオはローグに呼ばれた。

 

「ローグ! 居たか?」

 

「いや居ねぇ……」

 

「くそ……エルジーはどこへ消えたんだ」

 

 夜の【シエルグリス】はエルジーが行方不明となって大騒ぎになっていた。

 大勢の人間がエルジーを探してくれているが、未だに見つからないでいる。

 

「ローグ! ネオ!」

 

 街の奥からやってきたのはリベカ大臣だった。

 彼女の顔は涙でグショグショになっている。

 

「母さん! 居たか!?」

 

「居ない! けれど情報があったの! エルジーが花を摘みに王国の外へ出たって!」

 

「外って……まさか!」

 

 ローグが青ざめて、釣られるようにリベカも崩れ落ちた。

 

「ドラゴンに……やられたのかもしれない……ローグ……私……」

 

「落ち着けよ母さん! まだそうと決まったわけじゃないだろ! なぁネオ!」

 

「ああ。例のドラグーンに捕まった可能性もある。死んだと決めつけるのは早計だ大臣」

 

「で、でも……」

 

「エルジーの花を摘む場所なら知っている。そこを調べてみる」

 

「おれも行くぜネオ!」

 

「ダメだ。お前は大臣のそばに居てやれ」

 

「え!? でもよ!」

 

「いいから。ここは僕に任せておけ」

 

「……わかった。頼む」

 

 ネオは頷き、城門へ向かって走り出した。

 夜の外は危険だが、そうも言ってられない。

 

 嫌な予感がするな。

 無事でいろよ。

 エルジー。

 

 

 エルジーがいつも花を摘む場所は【シエルグリス】の東にある。

 

 そこは日当たりが良く、風通しも良く、水はけもいいらしい。

 そんな拓(ひら)けた草原に咲くのはダリアという花だ。

 

 ここでやたらと咲く花で、彩り豊かなその花を好む女性は多い。

 

 エルジーもその一人で、よくここへ来て摘んでは食卓のテーブルに添えていた。

 今回もそれが目的でここへ来たのだろうが、それで行方不明になってしまった。

 

 ネオはダリアの咲く花畑前に馬を止めて降りた。

 視界の悪い夜なため、松明で辺りを照らす。

 

 赤やらピンクやら黄色やら……夜なのに目立つのがダリアという花だ。

 ネオはドラゴンを警戒しながら花畑を歩き、エルジーが襲われた痕跡を探した。

 

 昔、何度もエルジーにここへ連れて来られた。

 花を摘みたいから手伝って、と。

 ほぼただの護衛だったが、今思えばあれのおかげで今こうしてすぐに場所を特定できたわけだ。

 

 世の中、何が幸いするか分からないものだ。

 

 とはいえ、エルジーもいつの間にか自分の身は自分で守れるくらい強くなって、ネオを護衛に呼ばなくなった。

 それが今回の悲劇を生んだ思うと、なんとも言えない気持ちになる。

 

 どうかエルジーの食い荒らされた死体が見つかりませんように……

 

 ネオはそう祈りながら花畑を探索した。

 どこにも死体はないし、血痕も見当たらない。

 

 ドラゴンに襲われたならもう少し花は荒されていても良いはずだ。

 だが現にそれはどこにもない。

 

 エルジーがここでドラゴンに襲われた可能性は低くなってきた。

 だがここで襲われなかっただけで、別の場所で襲われた可能性も否定できない。

 

 ガチャ!

 

「ん?」

 

 何かを踏んだネオは足元のそれを拾い上げた。

 

「これはエルジーの!」

 

 花畑に落ちていたのはエルジーの使っていたロングソードだった。

 よく見ればヘッドドレスも落ちている。

 

 間違いない。

 エルジーはここで何者かに襲われたんだ。

 花畑がまったく荒らされていないところを見るに、相手は人間だろう。

 

 このタイミングなら相手は例のドラグーンの可能性が極めて高い。

 

 エルジーが抵抗した痕跡もない。

 おそらく一瞬で気絶させられ、捕まってしまったのかもしれない。

 血などが飛び散ってないから殺されてはいないはず。

 

 問題は……エルジーがどこへ誘拐されてしまったのかが分からないことだ。

 

 ドラゴンに食われたわけではない。

 エルジーが生きている可能性があることをリベカ大臣へ伝えに戻るべきか?

 

 そう思ったのも束の間。

 ネオは背後から迫ってくる気配に気づいた。

 

 ドラグーンか!

 

 内心でそう思い、剣の柄を握って振り返った。

 そこには!

 

「な!? ロジェール王女!?」

 

「ネオ! エルジーは!?」

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