【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった 作:ミズノみすぎ
朝日が昇り始めた頃。
【エルガンディ王国】の城門前にてゼクードは立っていた。
目前には息子のカーティス。
妻のローエ・カティア・フランベール。
義妹のレィナ。
シエルグリスのナンバー2ミオン。
どれもSS級以上の実力を持つ精鋭中の精鋭騎士たちだ。
対ドラグーン戦を想定した少数精鋭の竜狩り部隊
【ドラグーンキラー隊】の結成である。
彼らの周りにはアスレイ陛下やグリータ団長などが見送りに来ている。
ゼクードの後ろには母セレンと娘グロリアも待機していた。
みんなが揃ったことを確認したゼクードはゆっくりと口を開く。
「全員集まったな。俺たちの任務はリーネ・ロードリーの救出だ。彼女はおそらく今も【竜軍の森】に捕らえられていると思われる。そして彼女を捕らえている現行犯のドラグーンは7人いる。こちらも同等の戦力を用意した。奴らは一人一人が強力で、並の騎士では刃が立たない」
言ってから「特に」とゼクードは次の言葉を強く強調した。
「中でもリーダー格であるヴァルドレイクという男と、レグという男の騎士は危険だ。奴らの相手は俺とカーティスが務める。みんなは残りの5人の女騎士をなんとしてでも抑えてほしい。奴らは連携を得意としている。俺も一度それでやられている。分断して各個撃破を意識してくれ」
言い終えるとローエが「隊長」と手を上げてきた。
「どうした?」
「リーネを人質に取られた場合はどうしますの?」
「その場合は交戦をやめて、とにかく下がるんだ。それも相手が呆れるくらいの姿でやれると尚いい」
「どういうこと?」っとミオン。
「みっともなく下がって、奴らの意識をこっちに向けさせるんだ。うまくやれば追撃も誘える。そうなったらリーネさんを人質に取ってる奴を孤立させることができるかもしれない」
「孤立させてどうする気だ?」っとカティア。
「そこでセレンとグロリアの出番だ。セレンは俺たちにはない空を飛ぶ能力がある。太陽を背にした空襲だ。俺たち騎士は空からの攻撃に疎い。やつらも元は騎士ならその癖が残ってるはずだ。そこ突いてリーネさんを救出する」
「救出が成功したらどうするの?」っとフランベール。
「状況による。優勢ならそのまま押し切ればいいし、劣勢なら撤退する。目的はあくまでリーネさんの救出だからな。やつらとの決着はそのあとでいい」
できれば殲滅したいところだが、こればっかりは戦況による。
戦場だって見通しの悪い【竜軍の森】だから。
先のゼクードの言葉が終わって数秒。
どうやら誰も質問はないらしく、静かにゼクードの言葉を待っている。
「質問はないな? ちなみに移動は途中まではセレンの背中に乗るぞ」
「「「「ええ!?」」」」
声を上げて驚愕してきたのは他でもない愛妻ローエ・カティア・フランベールだった。
そういえば彼女らは俺が母さんに乗って帰ってきたことを知らなかったな。
「乗るって……背中に!?」
ローエが顔を青ざめさせながら言うとゼクードは頷いた。
「ああ。母さんの翼なら一日も掛からず【竜軍の森】に着く。大丈夫。そんな怖くないよ?」
「馬鹿者! 怖いとかそんな話じゃないだろ!」
「そうだよゼクードくん! セレンさんはわたしたちからすると【お義母様】なんだよ? そんなお義母様の背中に乗るなんて失礼だよ!」
え、そっち!?
「いやそれはそうなんだけど、乗ってもらわないと困るっていうか……」
俺が言葉に困っていると、後ろにいたセレンが前に出てきた。
「カティアさん。フランベールさん。ローエさん。どうかお気になさらないでください。私はこんな身体になってしまいましたが、それが役に立つならむしろ嬉しいのです」
「お義母様……」
カティアとフランベールが呟くと、そのままセレンは続けた。
「いま優先するべき事はリーネさんの救出です。使えるものは使ってください。それが私でも」
セレンの気持ちを聞いたカティアとフランベールは「お義母様。ありがとうございます」と頭を下げた。
が、一人だけ……
ローエだけは相変わらず顔を青ざめさせていた。
セレンのドラゴン姿を一般人に見せぬよう城壁の外へ出た。
そこでセレンはドラゴンへと変身する。
「変身!」
変なポーズを取ってからセレンの身体は光に包まれた。
その光は人型からドラゴン型へと変形し、桃色の竜鱗が露わになった。
おお……とセレンの変身を初めて見るアスレイ陛下やグリータ団長などは驚きの声を上げた。
あんなに小さかったセレンが何倍以上の大きさになって翼を広げた。
変身完了である。
俺は振り向いて陛下たちに挨拶だけした。
「それでは陛下。【ドラグーンキラー隊】これより出撃します」
「はい。どうかご武運を」
アスレイ陛下が言ってからグリータが前に出てきた。
「ゼクード……どうかリーネを頼む」
「ああ」
俺は頷いた。
するとグリータはレィナと目を合わせた。
互いに頷き合い、果たしてレィナはセレンに乗る。
レィナが乗ってからカティアたちも続いてセレンに乗った。
しかしローエだけ立ち止まっている。
「ローエ? どうした行くぞ?」
「わ、わかってますわ」
恐る恐るセレンに近づいていくローエ。
その足取りは遅い。
それを見たグロリアがクスクスと笑う。
「お母さんもしかして怖いの?」
「こ、怖くありませんわよ!」
強がって見せたローエだが、彼女が怖がっているのは一目瞭然だった。
あー、ダメだこりゃ。
ローエの足が震えてる。
メチャクチャ怖がってるなローエの奴。
そんな高いとこ苦手だったのか?
風魔法でこういうのには慣れてると思ったんだが、仕方ないな。
俺はローエの前に座って手を取って誘導した。
「ローエ。俺にしっかり捕まってるんだ」
「りょ、了解ですわ!」
ガシッとローエはゼクードに後ろから抱きつく形になった。
プルプルと震えていて、ついでに鎧もミシミシと……ん?
ミシミシ?
ローエは恐怖のあまりに力加減を忘れていた。
オリハルコン製の鎧がローエの腕力に悲鳴を上げている。
「ちょちょちょ! 待て待て待てローエ! 鎧がミシミシ言ってる! 力加減抑えて!」
「はっ! ご、ごめんなさい!」
気づいたローエはすぐさま腕の力を弱めた。
危なかった。
鎧が無かったら即死だったかも。
「リーネのためですわ……リーネのためですわ……リーネのためですわ……リーネのためですわ!」
ローエが俺に抱きつきながらずっと唱えてる。
妹のために恐怖を抑えようとしているのは実にローエらしい。
「よし。いいよ母さん。飛んでくれ」
「うん。じゃあ……」
セレンが翼を広げ、羽ばたかせた。
ゆっくりとセレンの巨体が浮き上がり、俺の身体に浮遊感を与えた。
「おお! 浮いた!」
「スゴーイ!」
カティアとフランベールが歓喜の声を沸かせた。
やはり空を飛ぶとみんな似たような反応をする。
さっきから黙ってるカーティスでさえ離れていく地面を見て「おお……」と声を漏らしている。
もうちょっと濃い反応してもいいんだぞカーティス?
「本当に飛んでる! 凄い! わたしたち飛んでるよ!」
「ああ……感動的だ。おいローエ見ろ。凄いぞ」
カティアに呼ばれるが、ローエは俺の背中に顔を埋めるだけだった。
「めめ、目にゴミが入って、目が開けられませんわ!」
「そ、そうか……」
諦めたカティアにフランベールが目を丸くする。
「意外だよね。ローエさんが高いの苦手だなんて」
「ああ。風魔法で慣れてると思ってたが」
「ま、魔法と翼では違いますわ!」
「何が違うの?」っとグロリア。
「魔法は自分でコントロールできますけど、翼はそうでないでしょう! いつ落ちるか分からないじゃないですの!」
なるほど……コントロール出来るか出来ないかの差異が恐怖に繋がるのか。
なんとなく分からんでもないような。
「大丈夫ですよローエさん。絶対に落としませんから信じてください」
「ぉ、お義母様……」
セレンの言葉にようやっと俺の背から顔を離したローエ。
しかし吹き荒れる風と周囲の空模様でローエはまた俺の背中に顔を埋めた。
そんなローエにミオンが口を開く。
「ローエって風魔法使いなんでしょう? だったら仮に落ちても竜巻の魔法を使えば落下死することはないんじゃない?」
「……あ!」
ミオンの言葉にハッとなったローエが顔を上げた。
そして俺を抱きしめていた手を離す。
「そうでしたわね! わたくしとしたことが! 何を怖がっていたのかしら! こんな高いところ平気でしたわ!」
思い出したかのようにローエは気力を回復させた。
さっきまでの縮こまりか嘘のようである。
「さぁお義母様! 遠慮なく飛ばしてくださいませ!」
「え!? いえ! これ以上飛ばしたらみんな落ちちゃいますから……」
「あら、残念ですわ」
「お前な……」
カティアに呆れられ、他のみんなも苦笑いをする。
なにはともあれローエが復活して良かった。
ガクガクになって戦闘に影響しないか心配だったが大丈夫そうだな。
「ん……? あれ? この匂い……」
空の旅が始まってから数分。
セレンが鼻をクンクンさせ、何かに気づいた。
「どうした母さん?」
「あ! ゼクード下を見て!」
「下?」
セレンに言われるまま地上を見ると、そこには見覚えのある3人の姿があった。
真ん中にネオ。
左にエルジー。
右にリーネだ。
「あれは!?」
「ネオ!? それにエルジーまで!?」
「リーネもいますわ!」
ミオンとローエが驚く。
「父さん! これは……」
カーティスに聞かれ、俺は首を振る。
「わからん。とにかく事情を聞いてみよう。母さん降下してくれ!」
「うん!」