【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第369話【新たなる王国】

 太陽に照らされた草原にセレンが降下し、ゼクードはその母の背から飛び降りてネオたちの元へ向かった。

 

「ネオー!」

 

「ゼクードさん!」

 

 呼び合う二人の横をローエが凄まじい勢いで駆け抜けてた!

 

「リーネ!」

「お姉さまー!」

 

 呼び合う姉妹が駆け寄って抱き合った。

 

「ああリーネ! よかった無事で!」

「うん! 心配かけてごめんなさい!」

「良いんですわよそんなの!」

 

 無事を喜ぶローエの後ろからレィナも駆けつけた。

 

「リーネ!」

「レィナ!」

 

 グリータの妻同士であり、親友でもあるレィナとリーネは無事である喜びを分かち合おうと抱き合った。

 

「リーネ良かった本当に!」

「来てくれてありがとうレィナ!」

 

 仲睦まじい二人を見ながらゼクードはネオに口を開いた。

 

「ネオありがとう! リーネさんを助けてくれたんだな!」

 

 あのドラグーンたちを相手にリーネさんを取り戻すなんて凄いな。

 カーティスと一緒で本当に頼りになる男だ。

 

 しかし当のネオはまるで浮かない顔をしており、まったく笑ってさえいなかった。

 よく見れば後ろで黙っているエルジーちゃんも腕をケガしているし、なぜか悲しそうな顔をしている。

 

「結果的にそうなっただけです。それよりも大変な事になりました」

 

「どうしたんだ?」

 

「……ロジェール王女がドラグーンどもに捕まりました」

 

 そのネオの一言で場が一気に凍りついた。

 

「な、なんだって!?」

 

「ちょっと! どういうことなのよネオ!」

 

 ゼクードの隣まで出てきたのはミオンだった。

 彼女の息子であるネオはゆっくりと重い口調で説明を始めた。

 

「実は――――」

 

 まずヴァルドレイクにエルジーが攫われ、その救出にネオが動いた。

 だがロジェール王女もエルジーを助けるために城を飛び出して来ていた。

 

 ネオはロジェール王女に帰れと促(うなが)したが聞かず、勝手に先行して行方不明になってしまった。

 

 その際に捕まっていたエルジーを発見し救出することに成功し、同じ場所にいたリーネも救出することになった。

 

 二人の人質を救出できたが、結局ロジェール王女は見つからなかった、とのこと。

 

 そしてドラグーンの数と能力ではロジェールは逃げ切ることは不可能であるため、捕まったと想定したそうだ。

 

「――――という事態になってしまったんです」

 

「なにやってんのよあの子は……」

 

 ミオンが顔を手で覆いながら呆れた。

 ゼクードは腕を組んで顔を険しくする。

 

「とんでもないことになったな……」

 

 言うとネオは「ええ」と頷く。

 

「おそらくもう【シエルグリス】は奴らの手に落ちている可能性があります」

 

「そうだろうな。王女を人質に取られては抵抗できない。いくら姉さんでも愛娘(まなむすめ)を見捨てるなんて無理だ」

 

「はい。ですからこのまま帰還しても僕も奴らの言いなりになる道しかありません。なのでどうか、助けて頂けないでしょうか?」

 

「もちろんだネオ。むしろ良い判断だ。よく知らせてくれたな。こうして王女が捕まったことを知らずに進んでいたら……俺たちも二の舞になっていた」

 

「でも、どうすんのこれ? ドラグーンたちは【シエルグリス】の戦力をそのまま手に入れたようなもんじゃない」

 

 やや焦り気味にグロリアが言った。

 するとゼクードは首を振る。

 

「落ち着けよ。【リーネさんの救出】が【ロジェール王女の救出】に変わっただけだ。まずはリーネさんとエルジーちゃんを【エルガンディ】へ送ろう。ネオはこのまま俺の部隊に加わってくれ」

 

「了解です」

 

 これでネオも加わった。

 戦力は8人。

 真っ向勝負さえできれば勝機はあるはずだ。

 

 問題はどうやってロジェール王女を救出し【シエルグリス】を自由にするか、だ。

 

 失敗すれば最悪な事態になる。

 セレンとグロリアだけでは不安だな。

 もう一人……ヴァルドレイクの意表を突ける奴を用意した方が良さそうだな。

 

 だとすると……

 

 

 波乱の夜明けを迎えた。

 レイゼは眠れないまま今も街中を歩いている。

 何人かの近衛騎士たちも付いてきているが、疲れが見えていた。

 

 昨日はエルジーが行方不明になり、そこから騒ぎが大きくなった。

 

 ネオはエルジーを探しに出撃したまま帰らず、ロジェールさえも帰って来ない。

 

 レイゼは気が気でならなかった。

 どうかロジェールがネオと一緒に行動してますように……

 レイゼにはそう祈るしかなかった。

 

 しかし……

 それは突然……空から降ってきた。

 見たこともないドラゴンが7体。

 

 ここ【シエルグリス】のド真ん中に降り立った。

 

 レイゼは目を疑った。

 周りにいる近衛騎士たちも目を限界まで見開く。

 人間の倍以上もある巨大なドラゴンが7体も並び、さらに空からの奇襲という形に全員が度肝を抜かれて硬直していた。

 

 よく見れば7体の内の1体がロジェールを片手に掴んでいた。

 今にも握り潰されそうになっている。

 

「ロジェール!」

 

「お母様……ごめんなさい……」

 

 漆黒のドラゴンに掴まれたまま涙するロジェール。

 なぜロジェールが捕まっているのか分からないが、極めて危険な状態なのは見てわかる。

 

 だがレイゼや他の騎士たちも動けなかった。

 下手に動いてドラゴンを刺激すればロジェールが潰されるかもしれない。

 

 それに残りの6体もいつ暴れ出すか分かったものではない。

 どう見てもS級クラスのドラゴンどもだ。

 こんな奴らが街中で暴れたら【シエルグリス】は一瞬で滅亡するだろう。

 

 どうすればいいんだ!?

 

「お初にお目にかかります。レイゼ女王」

 

 声を発したのはロジェールを拘束している漆黒のドラゴン。

 しかし次の瞬間には光に包まれ人間の姿へと変貌した。

 

「な!?」

 

 ド、ドラゴンが人間になった!?

 これがゼクードの言っていた例のドラグーンって奴らか!

 まさかこんなにも早く【シエルグリス】にやってくるとは!

 

「私の名はヴァルドレイク・ディアマード。空からの来訪で失礼する」

 

 丁寧に一礼するヴァルドレイクの傍らにはロープで縛られたロジェールが立つ。

 それを見たレイゼは嫌な汗が流れた。

 

 くそ! 

 ミオンもネオもいないこんな時に!

 

「ロジェールを離せ! 話はそれからだ」

 

「いえ、話はこれからですよ女王。娘を想うならば抵抗しないことを推奨します」

 

「……」

 

 剣を構える近衛騎士たちをレイゼは片手で制した。

 武器を収めた騎士たちを見てヴァルドレイクは微笑を浮かべる。

 

「賢明な判断で助かります」

 

「……」

 

「そう睨まないで頂きたい。我々の目的は建国です。争うことではありません」

 

「人の娘を人質に取ってなにが建国だ。やってる事は侵略じゃねぇか」

 

「ええ。仰る通りです。そこは否定しませんよ。しかしながら【エルガンディ】【シエルグリス】ともに人口が少ない。【ハーティシオ】の四分の一もない人口です。これほど少ないと、我々としてもできるだけ無傷で国を手に入れたいのですよ」

 

「それで人質作戦ってか?」

 

「偶然ですよ。我々にとっては願ってもない幸運でした。まさか王女が自分からやってくるなんて思わないでしょう?」

 

 ヴァルドレイクの言葉にレイゼはロジェールを見た。

 ロジェールはそんな母の目が怖いのか、ずっと俯いている。

 

「自分からって……ロジェールお前……なんで!?」

 

「ああ……誤解しないであげてください。ロジェール王女はただエルジーというメイドを助けに来ただけです。ワザと捕まったわけではありませんよ」

 

「……っ!」

 

 そういうことか!

 

「エルジーが行方不明になったのはやっぱりテメェらのせいだったのか!」

 

「その通りです。これも我々にとっては幸運でした。まさか少女が一人で城壁の外にいるなんて思わないじゃないですか」

 

 くそっ! 

 何もかも奴らの都合の良い状況になってたってことかよ!

 

 そして今この状況もだ。

 最高戦力のネオも居ない。

 ナンバー2のミオンも不在。

 

 目の前には6体のS級ドラゴンが並び、真ん中にはロジェールを人質にしたヴァルドレイク。

 

 こんなの……どうすりゃいいんだ……

 

「意気消沈(いきしょうちん)お察しします女王。ですが大丈夫です。あなたは私の言うとおりに動いてくれればそれでいい。さぁ【シエルグリス】の平民を集めてください。新たなる王を宣言するために」

 

 ダメだ……

 助けてくれ……ゼクード!

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