【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第372話【総力戦!】

 先頭にゼクード・カーティス・ネオ。

 その後ろにローエ・カティア・レィナ・ミオン・グロリア。

 

 計8人の精鋭が【シエルグリス】の街中を全速で走っていた。

 

 住民は王国の中央に集まっている。

 そこにヴァルドレイクが居るに違いない。 

 

「突撃ぃいいい! 突っ込めええええ!」

 

 ゼクードが吼えた!

 とにかくこっちに敵の注意を向けさせ、ヴァルドレイクに接近しておく必要があるからだ。

 

 走った先には人集りがあり、ゼクードたちを見た市民たちは何事かとギョッとしながらも道を避けるように空けてくれた。

 

 その先には高台があり、目標であるヴァルドレイクがいた。

 その傍らにはレグがいて、ロジェールを人質に取っている。

 あれさえなんとかすれば!

 

 ゼクードはさらに速度を上げてヴァルドレイクの高台へ接近していく。

 すると2つの影か前に飛び出してきた!

 

「ちょっと! 正気なのアンタたち!」

「止まりなさいゼクード・フォルス! あれが見えないの!」

 

 ゼクードたちに立ち塞がったのはいつかの女騎士二人。

 赤い髪の大剣使いレジーナと青い長髪の槍使いオルテンシアだ。

 

 敵が現れたがゼクードは抜刀しない。

 代わりにレィナが双剣を抜刀してオルテンシアに斬り掛かった!

 

 振り下ろされたレィナの一撃を槍で受け止めるオルテンシアは彼女を睨む。

 レィナは獲物を見つけたようにライトブルーの瞳をギラリと光らせた。

 

「青い長髪の女騎士。あなたがオルテンシアね」

「あら……どこかで会ったかしら?」

 

 初対面のレィナとオルテンシア。

 そんな二人の競り合いに水を差そうとしたのはレジーナだった。

 

「後ろがガラ空きよ!」

「させませんわ!」

 

 レィナの背後をカバーするようにローエが参戦!

 レジーナは振り抜かれたマグナムハンマーを寸でのところで回避する。

 

「あっぶな! って! またアンタなの!?」

 

 レジーナは顔を険しくした。

 過去にリイドがやられる寸前でローエが割り込み、レジーナと一度戦っている。

 その時はすぐに逃げられてしまったが、今回は逃さない!

 

「会いたかったですわ。あなたの相手はわたくしです。妹と甥を痛めつけた代償は払ってもらいますわ!」

 

 レィナとオルテンシア。

 ローエとレジーナ。

 

 二人の敵は彼女らに任せ、ゼクードはまっすぐ高台を目指した。

 だが残りの敵も黙ってはいない。

 

「止まりなさいよ! 人質が見えてないの!?」

「こんな抵抗をしてたらお父様が痺れを切らしますよ?」

 

 やはり出てきた。

 赤い髪の斧使いアグリス。

 金髪の双剣使いドレス。

 

「来たな。行けゼクード!」

 

 ゼクードの代わりに彼女らを抑えたのはカティアとミオン。

 二人は武器を展開し互いの武器をぶつけ合う!

 

「頼む! よし行くぞカーティス! ネオ! 俺に続け!」

「はい!」

「了解!」

 

 高台まで目前だ。

 しかしゼクードはここで気づいた。

 青い髪の斧使いメルセーヌがいなかったことに。

 

 メルセーヌを抑えるはずのグロリアが残った。

 どこにいるんだメルセーヌは?

 まさか……

 

 

「父上。奴ら突っ込んで来ます。人質が見えないのでしょうか?」

 

 迫ってくるゼクードたちにレグが呆れながら言った。

 しかしヴァルドレイクは顎に手を当てる。

 

「無謀すぎる……何か策があるはずだ」

 

 ヴァルドレイクは辺りを見渡すが、逃げ戸惑う市民ばかりで不審な動きをしている人間はいない。

 

 考えすぎか?

 まぁ以前もゼクードは単騎でセレンを追いかけてきて我々に負けた男だ。

 

 意外と頭の中はカラッポなのかもしれん。

 ならば、とヴァルドレイクはロジェールを人質に突きつけようと思ったが……

 

「お父様! セレンが空に居ます!」

 

「なに?」

 

 それは空を見張らせていたメルセーヌの声だった。

 空を見れば確かにセレンが迫って来てきた。

 しかしメルセーヌに後ろを付かれ、すでに追いかけ回されている。

 

「しまった!」

 

 あのゼクードが顔面蒼白になって言った。

 どうやらこれが作戦の切り札だったらしい。

 通りでバカ見たく突っ込んで来るわけだ。

 もともと自分たちは囮だった、というわけだ。

 

「なるほど。正面から突っ込み注意を向けさせ、空からの奇襲で人質を奪い返す作戦だったか」

 

「……っ!」

 

「残念だったなゼクード・フォルス。お前の誤算は【空には誰もいない】と思っていた事だ」

 

「くっ!」

 

「空は最も無防備になりやすいが、私はそんなに迂闊じゃない。見張りを飛ばしておいたのさ。詰めが甘かったな。お前は千載一遇のチャンスを逃した」

 

 ヴァルドレイクが笑おうとしたその時、笑ったのはむしろゼクードの方だった。

 

「詰めが甘いのはお前だ! ヴァルドレイク!」

 

「なに?」

 

 ピュン! っと風切り音がしたかと思うと「ぐあっ!」というレグの声が次いで弾けた。

 

「っ!?」

 

 振り返ればレグは肩から血を吹き出させていた。

 不意打ちすぎて竜鱗の防御が間に合わなかったようだ。 

 

 なんだ!?

 何が起きた!?

 

「今だ!」

 

 ゼクードの声が弾けるとカーティスとネオが動いた!

 ゼクードはヴァルドレイクに向かって剣を振りかざす。

 

「ちぃっ!」

 

 舌打ちしながらヴァルドレイクは抜刀!

 さすがの反応でゼクードの一撃を受け止めた。

 だがこれでヴァルドレイクはゼクードに抑え込まれる形になった。

 

 近くにいたレイゼを人質に使おうと考えたが、当のレイゼはとっくにグロリアによって救出されていた。

 グロリアは機転を利かせ、倒れていたローグも抱えて高台を降りる。

 

「ここは戦場になるわ! みんなここから離れて!」

 

 グロリアはリベカや市民たちを逃がすために声を上げる。

 

 おのれ! あの小娘ぇ!

 

 怒るヴァルドレイクだが、事態はもっと最悪になっていた。

 

 怯んだレグの隙を逃さずネオはロジェールを取り返し、抱えてその場を離れていた。

 それとほぼ同時にカーティスがレグに斬りかかり追撃を防ぐ。

 咄嗟に抜刀してそれを防いだレグは怒りを爆発させた。

 

「ぐっ! おのれキサマら!」

「お前たちの悪事もここまでだ! 観念しろ!」

 

 カーティスとレグが交戦を開始した。

 人質ロジェールもレイゼも救出された。

 完全に逆転されてしまった。

 

 くそ!

 なぜだ!

 なぜレグは攻撃を受けた!?

 いったいどこから!?

 

 ヴァルドレイクは横目でそれを確認すると、レグの肩に氷の矢が刺さっているのに気づいた。

 

「氷の矢!? 矢だと!? そんなバカな!」

 

 驚愕するヴァルドレイクにゼクードはニヤリと笑う。

 

「ヴァルドレイク。アンタの誤算は【空からの奇襲】だけだと思った事だ」

 

「なんだと!?」

 

「【空からの狙撃】なんて夢にも思わなかったろ?」

 

「!?」

 

 空からの……狙撃!?

 馬鹿な!

 セレンは確かにメルセーヌに追い回されて狙撃どころじゃない。

 それどころか武器一つ使いこなせない素人のはずだ。

 

「セレンの背中に狙撃が上手い弓使いが居てね。彼女にレグの狙撃を頼んだのさ」

 

「なん……だと!?」

 

 あの追い回されてハチャメチャに動くセレンの背中から、この距離で、正確に、だと!?

 

「そんな化け物じみた狙撃が……」

 

「俺には無理だけどな! フランにはそれができるんだ! さぁ! これでお前を守る人質はもう居ない! その心臓を潰してやるから覚悟しろ! ヴァルドレイク!」

 

「おのれ……ゼクード!」

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