【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

375 / 448
第375話【ローエVSレジーナ】

 開戦から先手を取ったのはローエだった。

 

「はあああああああああああ!」

 

 大上段からの振り下ろしは地面を破壊し、凄まじい衝撃波が近くの建物を壊していく。

 それを躱したレジーナは飛んでくる破片を大剣でガードしながら笑う。

 

「凄いパワーね! でもパワーならアタシも負けてないんだから!」

 

 石畳みを踏み砕き加速!

 ローエに急接近してみせたレジーナは大剣を薙ぎ払う。

 対するローエもハンマーによる薙ぎ払いで応えてみせた。

 

 お互い重量武器ゆえに衝突時の反動はデカい。

 並の筋力では手を離してしまうだろう。

 だがこの女騎士二人にそれは無縁だった。

 

 ハンマーと大剣の打ち合い。

 一歩も譲らない。

 それどころかお互いに押し合っていく。

 

 ……強いじゃないこの女。

 アタシの大剣をここまで打ち返してくるなんてさ。

 

 それにこの女の匂い……リーネとまったく同じだ。

 あのリイドって男騎士とも似ている香り。

 なるほど。

 それでこんなにお怒りなのね。

 でも!

 

「スキあり!」

 

 何度目かの打ち合いの末、ローエの武器が弾かれ空を舞う。

 

「もらった! ……え!?」

 

 素手になったであろうローエを攻撃しようとしたレジーナだが、さっきまで居たローエが忽然と姿を消していた。

 

「居ない!?」

 

 空からわずかな殺気を感じて即座に見上げればローエが!

 

 コイツいつの間に!

 弾かれた武器を影にして空に!?

 弾かれたと同時にジャンプしてたってこと!?

 なら最初から弾かれるつもりでこんな!

 

「終わりですわ!」

 

 迫りくるローエの一撃。

 それはもう回避の間に合わない距離だった。

 しかしレジーナは吼えた。

 

「舐めんなぁああああああ!」

 

 突如として背中から竜の腕が生えてきた。

 それは落下してくるローエのハンマーを受け止めた。

 

「手!?」っとローエが驚くが、構わずトリガーを引いてハンマーを起爆した。

 

「きゃあああああああ!」

 

 爆発をくらったレジーナは悲鳴を上げた。

 だが爆破の直撃をくらった竜の腕にダメージは少ない。

 

「ビックリした! なんなのよその武器!」

 

 叫んだ次の瞬間!

 すでにゼロ距離に居たローエがレジーナの腹をハンマーで強打!

 さらに追撃の爆破!

 

「がはあああああああっ!」

 

 吹き飛んだレジーナは建物を何件か貫通した。

 そして最後にぶつかった建物が衝撃で崩れて生き埋めになる。

 

 だがそれも束の間。

 レジーナはすぐに自力で瓦礫を吹き飛ばしてローエの前に戻ってきた。

 

「ああああもうアッタマきた! ぶっ殺してやる!」

 

「頭にキた? それはわたくしのセリフですわ! 怒りで身体が抑えられませんのよ!」

 

 ローエが怒りの余り裏拳で近くの建物を殴った!

 殴られた建物は亀裂が全部分に走り一瞬で崩壊した!

 

「あ」っとローエ。

 

 裏拳一発で家を崩壊させたローエにレジーナはギョッとする。

 

「ア、アンタ化け物でしょ!?」

 

「あなたにだけは言われたくありませんわよ!」

 

 問答無用でローエはハンマーを振り下ろす。

 レジーナは慌てて回避した。

 

「くっ! このゴリラ女! 調子に乗んじゃないわよ! 見せてやるわ! アタシのドラゴンの姿を!」

 

 そう言ってレジーナが立ち止まり、全身が光り始めた。

 セレンと同じ変身の光だ。

 その光を見たローエは立ち止ま――――らなかった!

 

「まぶしいですわね!」

 

 ブォン! っとハンマーが振り抜かれ、レジーナは変身完了直後にまた慌てて回避するハメになった。

 

「あぶなっ! ちょっと! 人が変身してる時に攻撃すんな!」

 

「うるさいですわ! そんなルール存じ上げませんわよ!」

 

 ローエは構わず突っ込んでくる。

 レジーナは二足歩行の巨大なドラゴン形態になっていた。

 赤く光る両手の拳。

 背中から生えた二本の剛腕。

 竜鱗に覆われた身体は赤く煌めく。

 

「ふん! まぁいいわ。この姿のアタシは最強よ! 何故ならぶへぇええええ!」

 

 また喋ってる時にローエにハンマーで殴られた。

 2倍以上の体格差があるにも関わらずレジーナは吹き飛ばされ巨体を地面に転がせた。

 

「よく喋りますわねあなた」

 

 呆れるローエにレジーナは立ち上がって怒る。

 

「アンタ! マジでいい加減にしなさいよ! 少しは言わせなさいよ!」

 

「ぶへぇええええって言ってましたわよあなた」

 

「うるさい! もう本当にマジでぶっ殺してやる!」

 

「やれるものならやってみなさい!」

 

 吼えたローエは踏み込む!

 爆発的な加速でレジーナにまっすぐ突撃する。

 対するレジーナは両の拳を光らせた。 

 

「これに耐えられるかしら!」

 

 人間で言うストレートパンチを虚空に撃ち放つと、光った拳から火球が飛び出した!

 それはレジーナが拳を突き出すたびに発射される!

 

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラアアアアアア!」

 

 火球の乱射!

 それは竜の心臓で強化された【フレイム】。

 言うならば大砲を連発しているようなものだった。

 

 その火球の乱射を前に、ローエはいっさい怯まなかった。

 目を鋭くし、集中からの超反応で火球群を避けていく。

 避けられて流れ弾と化した火球は【シエルグリス】の街並みを爆砕し、火の海と化させていく。

 

 弾幕を抜けたローエはガラ空きのレジーナの顎を目掛けてハンマーによるアッパーをお見舞いする!

 

「うぐっ! このおおおおっ!」

 

 わずかな怯みに抑えたレジーナはすかさず大振りのフックを放つ。

 屈んで避けたローエはそのまま身体を回転させて、遠心力たっぷりの一撃を脚に叩き込む!

 

「いぎっ! こ、この野郎!」

 

 怒りに吼え、レジーナは拳を光らせ大振りの叩きつけを放つ。

 地面に着弾したそれは大爆発を起こした。

 難なく避けていたローエも、さすがにインファイト過ぎて鼓膜がイカれそうになった。

 

 飛んできた地面の破片で顔を切り流血する。

 しかしローエは開眼し、さらにさっきと同じ脚を狙って一撃叩き込んだ。

 

「うあっ!」

 

 二度目の強打にレジーナは転倒した。

 心臓を狙われると思って胸をガードしたが、ローエの狙いは頭部だった。

 

 ドガッ! っとレジーナの頭部にローエのハンマーが叩き込まれる。

 

「くあ…………っ!」

 

 頭を強打し、意識が一瞬だけ飛んだ。

 もう一撃振り下ろそうとしているローエが目に入り、レジーナは慌てて尻尾を薙ぎ払う。

 

 咄嗟に出した防衛攻撃だったがそれはローエの脇に直撃した。

 

「っ! ああああああああ!」

 

 ローエが吹き飛び建物にぶち当たる。

 建物が崩壊してローエが瓦礫に埋まった。

 ローエにとっては思わぬ反撃だったらしい。

 

 なんにせよこれであのゴリラ女は大ダメージだわ。

 ザマァ見ろっての!

 アイツは傷が増していくけど、アタシはすぐに回復していく。

 負ける気がしないわ!

 

 でも忌々しい!

 あのゴリラ女……マジで強いし、マジで速い。

 それにあのバカみたいな火力。

 竜鱗がまったく仕事しないじゃない!

 一撃一撃が痛いったらありゃしない!

 

 そう内心で愚痴っていると、瓦礫に埋まっていたローエが飛び出してきた!

 

「やってくれますわね!」

 

 なんだ生きてた。

 また接近してくる。

 アイツとのインファイトは危険だ。

 間合いに入られるとローエが一枚上手だ。

 

 ならば!

 

「【オーバーエクスプロード】!」

 

 自分の足元を大爆発させて空へ大ジャンプした。

 

「!?」

 

 ローエが眼を大きく開けて空のレジーナを見上げる。

 

「ふふ! どーよアタシのジャンプ力は! あと驚くのはまだ速いわよ!【オーバーフレイム】!」

 

 空から拳を放ち、火球をローエに撃ち落とす!

 

「くっ!」

 

 落下してくる火球を避けたローエだが、レジーナの攻撃は終わっていなかった。

 

「逃さないわよ! 全部避けられたら褒めてあげるわ! オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラアアアアアアアアア!」

 

 空からの火球の乱射! 乱射! 乱射!

 まるで隕石群のように降り注ぐ火球の弾雨。

 それによって街が一気に破壊されていき【シエルグリス】の一角が火の海となった。

 

「ぃいやっほぉおおおおー! 気持ちいい! 最っ高だわこの力! 街を一瞬で火の海にするのってこんなに気持ちいいものだったのね!」

 

 歓喜するレジーナは空中で浮遊していた。

 足元にエクスプロードを断続的に使うことで永遠に浮いていることができる。

 

「それにこうしてれば翼が無くても飛び続けられるじゃ〜ん。案外と当たりの心臓だったわねコレ」

 

 意気揚々と呟くレジーナは、遠くに見えるドラゴンの影を捉えた。

 翼の生えたドラゴンだ。

 メルセーヌだ。

 

 その前には桃色のドラゴンもいる。

 あれはセレンだ。

 背中に誰かを乗せているが、メルセーヌはその誰かにひたすら弓を射たれている。

 どうやら回避できないでいるようだ。

 

 やれやれ。

 しょうがないわねメルセーヌったら。

 

「な〜んか手こずってるみたいね。こっちは片付いたし手伝いに――――」

 

 刹那!

 レジーナの真横に!

 血まみれのローエが!

 

「っ!?」

「【ドラゴンインパクト】!」

 

【気】を込めたローエの強打撃!

 頭にモロにくらったレジーナはそのまま地面へと叩き落された!

 

「きゃあああああああああああああ!」

 

 ガッシャーン! っと地面に落ちたレジーナ。

 その後にローエが着地する。

 

「少しは効いたかしら? オラオラさん」

 

「ぐ……っ!」

 

 頭を強打し目眩がするレジーナはなんとか目前のローエを捉えた。

 彼女はすでに満身創痍だった。

 あちこち血だらけになっている。

 

 なぜ?

 あの高度にいたアタシのところまで、この女はどうやって浮上したの?

 

 見ればローエの後ろには竜巻の残りが消えていくのが見えた。

 そういうことか、とレジーナは得心する。

 

 このローエという女騎士は風魔法の使い手だ。

【ハリケーン】で風に乗って浮上したらしい。

 竜巻に乗るのは誰でも思いつくことだが、実現させている奴を見るのはこのローエが初めてだ。

 

 簡単ではないからだ。

 この女……やっぱ危険だわ。

 

 そう改めたレジーナは殴られた頭のダメージをすぐに回復させ元通りにする。

 

「ふんっ! こんな傷がなによ! 無駄なのよ!」

 

「……ほんっと厄介ですわね。その再生能力」

 

 忌々しそうな顔を浮かべるローエにレジーナは大きくバックステップした。

 

「もうアンタに距離は詰めさせないわ。一方的に蹂躙してやる!【オーバーエクスプロード】!」

 

 足元に大爆発を起こし、爆風に乗ってまた大空へ大ジャンプした。

 

「ほら竜巻で追ってきなさいよ! 飛んだところにフルパワーのフレイムをお見舞いしてやるわ!」

 

「あらそう。ならば受けて立ちますわ!【ハリケーン】!」

 

 ローエが手に発生させた竜巻を地面に叩きつけると、それは一気に巨大化する。

 ローエはその竜巻に飛び込んで浮上していく!

 

「あはははっ! ホントに飛んできた! とんだ脳筋女ね! なら望み通り火ダルマにしてやるわ!【オーバーフレイムフルパワー】!」

 

 レジーナの狙いはローエの回避できないこの浮上の瞬間!

 竜巻に飲まれた状態では浮上はできるが横移動などはできない。

 

 まさにただの的と化すのだ。

 最大火力の火球を発射したレジーナは嗤う。

 巨大な火球はローエの2倍以上の大きさになっている。

 

 ローエはもう終わりだ。

 竜巻の中で回避もできずに焼け死ぬ。

 

「【エアフォース】!」

 

 ローエの声が弾けた!

 彼女のマグナムハンマーが風に包まれる。

 

 そして迫りくる巨大火球を睨み、ローエは吼えた!

 

「【ヴァリアブル・ドラゴンインパクト】!」

 

 ローエがハンマーを振り、火球とハンマーが激突する!

 そして次の瞬間!

 火球は打ち返された!

 

「え!?」

 

 跳ね返されたオーバーフレイムがレジーナに直撃!

 大爆発を起こした!

 

「か……………は…………」

 

 白眼を向いたレジーナの上にローエが!

 

「【ドラゴンインパクト・メテオストライク】!」

 

 ありったけの【気】を纏わせたハンマーの一撃がレジーナの胸に叩き込まれた!

 その破壊力はレジーナの竜鱗を軽く突破し、衝撃は胸部を貫通し風穴を空けた!

 

 そしてそれは竜の心臓さえも消し飛ばした!

 

「ああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

 

 メテオストライクの名の通り。

 レジーナは地面にクレーターを作る勢いで叩きつけられた。

 その時に発生した衝撃波が火の海を大きく揺らす。

 

「ふぅ……なんとか倒せましたわね」

 

 地面に着地したローエが血まみれの額を拭う。

 

「や……………だ…………」

 

「あら?」

 

 クレーターの中に蠢くレジーナがいた。

 もはや胸に風穴が空いた彼女は死に体。

 血がどんどん流れ、竜の心臓を失った身体は一気に衰弱していく。

 

「死に…………たくない…………暗いよ…………お父、様…………寒い…………寒い…………誰か………………たす……けて…………」

 

「早くお眠りなさい。あなたは負けたのよ」

 

「! その、声……おねがい……たすけて…………! もう……なにも…………しない、から……」

 

「そう。反省したのなら結構ですわ。さようなら」

 

 ローエは長い金髪を手で靡かせて去っていく。

 

「! ま……待って…………待って…………おねがい……待って……待って…………助けて…………………助けて!」

 

 必至にローエに手を伸ばしていたレジーナだったが、その手が動かなくなるのにそう時間は掛からなかった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。