【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった 作:ミズノみすぎ
シエルグリスの中央。
そこでカーティスとレグの連撃戦は続いていた。
【ディアマード家の長男】と【フォルス家の長男】。
どちらも一家きっての剣豪二人。
互いに最強の父を持つ二番手同士。
その斬り結ぶ速度は尋常ではない。
男二人の踏み込みは床を砕き、剣気は数メートル先の建物にヒビを入れる。
凄まじい剣気をぶつけ合いながら、カーティスの雷鳴の如き切り落としが走る。
歩をずらして避けたレグは烈風めいた薙ぎを撃ち放つ。
カーティスは鼻先ほんの二寸の位置でそれを躱すと返し、螺旋を描いて弾丸の如き突きを繰り出した。
長剣の切っ先がレグの頬を掠って血を流すが、その傷はすぐに回復する。
それはを見たカーティスは舌打ちした。
対するレグはふんと鼻息を鳴らす。
「一度ならずニ度までも。忌々しい奴め」
「こっちのセリフだ。この悪党め」
「生意気な口を聞くな平民の分際で!」
「いつまで貴族のつもりだ? お前はもう平民以下の悪党だろう」
「剣がオレと互角だからと調子に乗るなよ! オレにはまだドラグーンの力があるんだ! はぁああああああ!」
レグが雄叫び上げると全身が光り出した。
漆黒の竜鱗に覆われ、顔は竜の骨格へと変貌する。
鋭利な爪と長い尻尾が生え、長剣を握るその様はまさにドラゴンナイト。
先程よりレグの【気】が大幅に上がっていくのをカーティスは肌で感じた。
ヒリヒリと伝わる殺意はカーティスを戦慄させる。
こいつ……!
自分より高くなった【気】を感じてカーティスは冷や汗を頬に流した。
竜人化したレグは純粋に一段回パワーアップした雰囲気を見せる。
「……オレの能力は素朴でな。純粋な身体能力の強化しかしてくれない。翼も無ければ魔法の強化もない。何か特別な能力もなかった」
「……」
「最初はハズレの心臓だとガッカリしたが、オレほどの騎士ならば純粋な身体能力の強化は一番ありがたく、一番使いやすい」
レグが長剣を構える。
カーティスも戦慄する身体を押し殺して剣を構えた。
先程まで互角だった相手が強化されたということは、自分より格上になったということ。
これはマズイな……
一人で勝てるか?
「純粋な強化はオレの剣技さえも強化する! くらえ!【ディアマードアーツ・ブレイドパーティー】!」
レグの長剣が3つにブレ、それらが同時に振り抜かれた。
ブレイドパーティーは一個の斬撃から無数の斬撃を発生させる弾幕斬撃。
すべての斬撃が【真・竜斬り】の威力を秘めており、当たればオリハルコンの鎧でもパックリ両断される。
その一発一発が必殺級の斬撃がカーティスに向かって飛来する。
その数はもはや数え切れない!
「ちぃっ!」
向かってくる斬撃の弾雨をカーティスは走っては避けた。
ムーンサルト。
スライディング。
長剣による弾き。
それらを使って弾幕を突破してみせたカーティスはレグに肉薄し視線が重なる。
振り下ろした斬撃と薙ぎ払いの斬撃が重なり、そこからまたカーティスとレグの魂を削るような斬り合いが始まる。
だが今回の斬り合いはそう長くは続かなかった。
レグの一撃一撃の重さが先程とは比べ物にならないくらい強化されている。
受けに回った瞬間に押され始め、回転を乗せたレグの薙ぎ払いによって一気に吹き飛ばされた。
家を貫通して吹っ飛んでいくカーティスを見たレグは「ふふん」と嗤う。
しかしすぐにカーティスが真横に現れ一閃!
ガキン! と鉄製の音を響かせてレグが片腕で防御していた。
レグの竜鱗に阻まれ斬撃が止められている。
「くそっ!」
「残念だったなカーティス・フォルス!」
ガシッ! と首を掴まれまたも民家群に投げ飛ばされた。
「ぐあああああ!」
「これで死ねよ!【ディアマードアーツ・ソードウェイブ】!」
民家を貫通して吹っ飛んでいくカーティスに追撃の斬撃だった。
その巨大な三日月型の大斬撃は民家をパックリと斬って前進していき、空中から落ちてくるカーティスに迫った。
カーティスが地面に落ちる瞬間に合わせた斬撃のようだ。
剣を振れる態勢でもない。
空中で避けられない。
まずい!
直撃する!
「【真・竜斬り・閃空】!」
聞き覚えのある声が弾け、もう1つの【飛ぶ斬撃】が三日月型の大斬撃を相殺した。
「何をやってるんだカーティス! お前はその程度じゃないだろう!」
現れたのはミオンの息子ネオ・ラザ。
シエルグリス最強の騎士だ。
これは心強い援軍である。
カーティスは吹き飛ぶ威力を殺してなんとか着地し、隣のネオに口を開く。
「助かった。礼を言う」
素直に礼を言われたネオは目を丸くしてバツの悪そうな顔をした。
だがそれも束の間。
早くもレグがこちらに迫ってきていた。
「! 誰かと思えばまたお前かネオ! お前もまたオレの邪魔をするのか!」
そんなレグの怒声を無視してネオはカーティスに言う。
「あの男……前より数段強くなってやがる」
「ああ。奴のドラグーンの能力は身体能力の強化らしい」
「強化……厄介だな。勝算はあるのか?」
「お前が居てくれれば勝てる。手を貸してくれ。ネオ」
またも意外な一言にネオは驚きカーティスを見た。
カーティスの眼は真剣そのもの。
あのカーティスがネオに共闘を求めている。
つまり、それだけあのレグは危険な存在ということ。
認識を改めたネオは頷き、カーティスの隣に立った。
「ああ。まかせておけ!」
「よし……やるぞ!」
「おお!」
次世代最強の二人が初めて肩を並べた。
そして交戦!
カーティスとネオは並走し、レグに向かって連携した。
袈裟斬り!
刺突!
薙ぎ払い!
叩き伏せ!
回転剣舞!
からの怒涛の連突!
初めての連携とは思えないほどカーティスとネオの息は合っていた。
しかし竜人化したレグも最強タッグに遅れは取らない!
避けられ!
躱され!
いなされ!
切り弾かれ!
信じられない反応でカーティスとネオの斬撃を捌いていく!
「【真・竜斬り・銀雷】!」
「【真・竜斬り・閃空】!」
レグから間合いを空けたカーティスとネオが同時に【飛ぶ斬撃】を放つ!
「小賢しいんだよ!」
レグが長剣を薙ぎ払ってそれらの斬撃を打ち消した。
しかしそれだけではなかった!
レグの薙ぎ払いは地を斬り風を斬り無数の刃となってカーティスとネオを襲った。
「ぐっ!」
「くそっ!」
常人では見えない斬撃。
二人はそれらを剣で捌き、しかし全身の至るところから血が吹き出た。
カーティスとネオの足元も亀裂が走り、地面がボコンと音を立てて浮き出す。
かと思うとその浮き出たブロック状の地面が微塵に斬り裂かれて崩壊した。
カーティスとネオは慌てて後退する。
「くそ! コイツいったい一振りでどれだけの斬撃を!」
「気をつけろネオ! 奴の一閃は弾幕だ!」
伝えたその間にレグがまたも長剣を上段から振り下ろすのが見えた。
振り下ろされる寸前に長剣の切っ先が3つにブレるのも見て取ったカーティスは叫ぶ。
「また来るぞ!」
レグが長剣を振り下ろした!
3つの斬撃が無数に弾けてカーティスとネオに降り注ぐ。
「くそっ!」っとネオが斬撃群を捌きながら後退!
しかし相方のカーティスは突撃を仕掛けていた!
レグはおそらくネオを狙っていたようで、斬撃がネオに対して集弾していた。
おかげでカーティスの弾幕は密度が薄くて突破できた。
「うおおおおおっ!」
カーティスはレグに斬り掛かる。
舌打ちをしたレグはそれを受け止めた。
カーティスとレグは何合かの剣戟を交えた。
レグの強化された筋肉によって振るわれる長剣は重い。
まともに受けていてはカーティスの長剣が持たなかった。
体格差も竜人化したレグが上となっており、剣を撃ち合うたびにカーティスが後退していく。
撃ち合いに勝てなくても押されていてもカーティスはレグから離れない。
コイツに剣を思い切り振るわせてはいけない。
レグは中・長距離での間合いが一番厄介だ。
零距離で剣を封じねば、また斬撃の嵐が吹き荒れる。
「さっさと死ねよカーティス! こうなったオレは誰にも止められんぞ!」
「黙れ! お前を自由にはさせん!」
そう。
カーティスはレグを抑え、そして倒すことを父ゼクードに強く頼まれている。
『カーティス。レグの相手をしっかり頼むぞ。あれはカティア達じゃ手に負えない相手だ。絶対に自由にさせるな。自由にさせたら味方の被害が甚大になる。這ってでも倒せ』
父ゼクードの言葉を思い出し、カーティスは歯を食い縛る。
コイツを自由にしたら母さん達が殺されてしまう。
意地でも負けるわけにはいかない。
しかし!
「遅いんだよ!」
レグの強烈な薙ぎの重撃!
間一髪! 長剣で受けたカーティスはそのあまりの力技に全身が浮いて吹き飛んだ!
しまった!
なんて力技だ!
また間合いを空けてしまう!
「はーっはっはっは! また浴びせてやるよ!【ディアマードアーツ・ブレイドパ――――】」
「やらせるか!」
飛び込んで来たのはネオ!
二刀流を逆手に持ち替え奥義の構えを取る!
「【真・竜斬り・無限刃】!」
「遅せぇよ!」
レグが叫び、殺到するネオの分身を斬り刻んでいく!
そして最後に残ったネオ本体の一撃を難なく片腕で防いできた。
「なっ!?」
完全に見切られ驚愕するネオにレグは嘲笑う。
「その技はオレに一度見せたよな? まさか二度も食らうとでも思ったか?」
「ふん……カーティス!」
「ああ!」
ネオとカーティスが合流し、また連携してレグに零距離の剣戟戦に持ち込んできた。
「っ! キサマら! まさか!」
レグは気づいた。
さっきの【真・竜斬り・無限刃】は吹き飛ばされたカーティスが戻るまでの時間稼ぎ。
一対一では押し負けるから二人掛かりで仕掛ける。
小賢しいな!
平民のくせに!
ネオとカーティスの連撃は目まぐるしく。
右を見ればネオの一閃。
左を見ればカーティスの一閃。
連携の練度も凄まじい勢いで上がっていき、次第に二人の斬撃を捌き切れなくなったレグは何発か身体に斬撃を貰った。
どれも軽い一撃だったが、一つだけ重い剣閃がレグの腕を斬り落とした!
カーティスの斬り上げだ。
まともに食らうと斬撃は竜鱗を突破してきた。
「おのれ!」
レグは瞬時に斬られた左腕を再生させるが、今度はその隙をネオに突かれ右腕を持っていかれる。
「ぐあっ!」
長剣を握っていた右腕が吹き飛び地面に落ちた。
「これで得意の剣術は使えまい!」
ネオが吼えるとレグはすぐに右腕を再生させて睨みつけてきた。
「キサマらぁ……調子に――――」
ドクンッ!
「――――ッ!?」
レグの心臓が高鳴った。
ドクンッ! ドクンッ! ドクンッ!
「ぁ、あ……! うっ! ぐっ! あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
レグが胸を押さえて大絶叫した!
「なんだ!?」
「苦しみ出したぞ!?」
突然の出来事にカーティスとネオが驚愕した。
レグに移植された竜の心臓が、身体を手にしようと動き出した!