【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第392話【謎の民族】

 未知の大陸で初の朝を迎えた。

 青い空と明るい太陽が草原と海岸を照らした。

 

 ゼクードはさっそく無くした【ブレイブエルガンディ】の捜索のため海岸を沿ってひたすら歩いた。

 

 何歩も何歩も。

 気づけば一時間近くは歩いた。

 

「ないなぁ……」

 

「……」

 

 ゼクードの後を黙ってついてくるアグリスは溜め息を吐きながら髪を撫でていた。

 

「おいお前。ちゃんと探せよ」

 

「探してるわよ。っていうか……遠くまでは見れば無いことくらい分かるでしょ」

 

「バカ。砂に埋もれてる可能性があるだろう。そこんとちゃんと見ろって言ってんの」

 

「はいはい……平民のくせに指図ばっかり」

 

「あのな? お前がどれだけ偉かったは知らないけどここは【ハーティシオ】じゃねーんだ。地元ルールは通用しねぇからな?」

 

 言われたアグリスは露骨にムッとする。

 

「あのね? 言っておくけど私は本来ならあんたみたいな平民が口を聞いていいレベルの貴族じゃないんだからね!」

 

「はん! 依存貴族様がよく言うよ」

 

「こ、この……っ! 本当にムカつくコイツ……っ!」

 

 キィーッ! っと歯を食い縛るアグリスを無視してゼクードは先に進んだ。

 柔らかい砂浜が足を取ってきて歩きにくい。

 

 あわよくば他に流れ着いた仲間を見つけられるかもと思ったが、やはりそう簡単にはいかなかった。

 

 剣も心配だが、仲間の安否も心配だ。

 みんなどうか無事でいてほしいが……。

 

「あーダメだ。見つからない……大切な剣なのに……」

 

 かれこれ2時間は過ぎたか?

 仲間も武器も何一つとして見つからない。

 腹も減ってきたし、喉も乾いてきた。

 さすがにこれ以上【ブレイブエルガンディ】に時間を使うのはマズイ。

 

 まずは食料と水の確保。

 それから寝泊まりできる拠点の設置。

 これらを整えないと見つける前に死んでしまう。

 

 探すのは生活面を整えてからでも遅くはないだろう。

 

 武器がサバイバルナイフだけというのは不安でしかないが、幸いこの大陸はA級ドラゴンやドラゴンマン・ベビードラゴンなどか生息していないようだ。

 

 いくら海岸沿いを歩いているとしても、ここまで遭遇しないのは珍しい。

 気配すら無いから余計に新鮮な気分だ。

 

 こんなに堂々と城壁の外を歩けるとは平和な大陸だ。

 さっき牛を見かけたから、それらを捕獲して食料を確保しようか。

 飲み水も、どこかに湖か川を発見できればいいが。

 

 先の予定を決めたゼクードは遠くに見える火山を見た。

 2時間もチマチマ歩いてたおかげで火山はかなり近くまで来ていた。

 

 それでもまだ遠い。

 パッと見ですぐに着くと思っていたが、甘かった。

 火山はまだまだ遠い。

 

「馬もないからけっこう時間掛かるなぁ」

 

 ここに母さんが居たら移動も楽だったのに……

 

 そう思いつつゼクードは草原を歩きながらアグリスを見て閃いた。

 

「あ! そうだ! お前って飛べないの?」

 

「え?」

 

「ほら。ドラグーンなら変身できるだろドラゴンに。それでバーっと飛んで行けばすぐ着くだろ火山に」

 

「飛べるけど嫌よ!」

 

「なんで?」

 

「平民の……ましてや男を背中に乗せるなんて……」

 

 なんだ……

 何かと思えばそんなことか。

 やれやれ。

 

「あ〜そこは大丈夫。俺お前のこと女として見てないから」

 

「……は?」

 

「だからほら。早く変身して乗せろよ。ほら早く」

 

「あ……あんた……本当にっ!」

 

 アグリスが怒りを爆発させようとしたその時!

 火山からドラゴンの咆哮が聞こえてきた!

 

「……! 今のは、ドラゴンの咆哮か!?」

 

「た、たぶん。なんか……凄く怒ってる?」

 

 怒ってる?

 なんで分かるんだ?

 あ、そうかコイツはドラゴンの言葉が分かるのか。

 っていうかドラゴンいるのかこの大陸に!

 

 ん!?

 いや!

 それよりもマズイぞ!

 

「悪い。囲まれてる」

「え?」

 

 気づいた頃には遅かった。

 あちこちの茂みから何人もの人間が現れてゼクードとアグリスを包囲してきた。

 

 ゼクードは出てきた人間たちの装備を見る。

 レザー製の鎧を着た男たちだ。

 武器は石と木の組み合わせで作られた槍と弓だ。

 

 装備は有り得ないほど貧弱だが、有り得ないほど気配を消すのが上手かった。

 コイツら狩りのプロかもしれない。

 

 というか、まさかこの大陸に人間がいるとは。

 俺は今とんでもない体験をしてるのかも。

 

「動くな!」っと一番大柄な男がゼクードに槍を突きつけてきた。

 どうにもこの集団のリーダー格みたいだが。

 

「ちょっと! なによあんた達!」

 

「動くなと言った! 刺すぞ!」

 

「このっ!」

 

「よせアグリス。刺激するな」

 

「でも!」

 

「いいからお前は黙ってろ」

 

 アグリスを黙らせ、ゼクードは大柄の男を見た。

 

「お前らどこから来た!」

 

 大柄の男はどこかピリピリした口調で聞いてきた。

 ゼクードは落ち着き払った態度で肩を竦める。

 

「ここよりもっと東北にある国だ」

 

「東北? お前らベイグナートの人間か?」

 

 お、良い情報を引き出せた。

 ベイグナートって国があるのか。

 

「へぇ〜こっちじゃそう呼ばれてるのか? じゃあそれだ。俺たちはベイグナートで奴隷にされていたんだ。それで嫌になってここまで逃げて来たんだよ」

 

「嘘をつくな! 奴隷がなんでそんな豪華な鎧を着てるんだ!」

 

「実験だよ実験。この鎧がちゃんと役に立つのかどうかのな。仮に役に立たなくて俺たちが死んでも奴隷だからどうでもいいってわけ。上の人間ってみんなそうなんだよ」

 

 そうペラペラ喋るゼクードに、アグリスはジトッとした視線を向ける。

 

(よく口が回るわねコイツ……全部が全部ウソだし)

 

「ずーっとベイグナートで奴隷をやらされてたから、俺たちここがどこかも分からなくてさ。本当に困ってたんだよ」

 

「……」

「……」

「……」

 

 大柄の男や他の男たちがゼクードを睨む。

 ゼクードは構わず続けた。

 

「ほら。武器らしい武器もこのナイフ一本だけだし、碌な狩りができなかったんだ。水と食料にも困ってる。争うつもりは無いから、せめて飲み水だけでも分けてもらえないかな?」

 

「おい……どうする」

「たしかに武装はしてないが……」

「昨日捕まえた女の仲間かもしれんぞ?」

 

 昨日捕まえた女?

 

「ちょ、ちょっと待って!」

 

 聞きつけたアグリスが前に出てきた。

 

「その捕まえた女ってどんな子なの!?」

 

「なんだお前! やっぱり仲間なのか!」

 

「なんでそうなるのよ! どんな子か聞いてるだけじゃない!」

 

「そんなことを聞くのがすでに怪しいんだよ!」

 

「はぁ!? 意味分かんない!」

 

 あーもう! このバカ女!

 ヒートアップしてるじゃねぇか!

 こんな未知の大陸で敵を作るのは得策じゃない!

 

「やめろアグリス! お前は引っ込んでろ!」

 

「なによあんたまで!」

 

「すみませんみなさん。実は一緒にベイグナートから逃げ出した連れがもう一人いたんです。それがコイツの姉妹でして。途中ではぐれてしまって、もしかしたらその捕まってる女がそうなのかもって事なんです」

 

 ゼクードなりになんとかまとめた説明だったが、大柄の男は槍を下ろそうとはしてくれなかった。

 それどころか顔が敵意に満ちている。

 

「もし本当に姉妹なら、どのみちお前たちを捕まえることになるぞ!」

 

「あ〜……あの、その捕まった女はなにをやらかしたんですか?」

 

 ゼクードが頭を掻きながら聞くと、大柄の男は遠くに見える火山を顎でしゃくって指してきた。

 

「……さっき火山から化け物の咆哮が聞こえたろ?」

 

「ええ聞こえました」

 

「あの化け物を刺激して怒らせたのがその女なんだ。あいつのせいで集落が危険に晒されている」

 

「なるほどそれで……」

 

 傍迷惑な女だな。

 こっちは完全に巻き込まれだよ。

 

 そう脳内で愚痴ってると、また火山からドラゴンの咆哮が聞こえてきた。

 すると大柄の男や他の男たちがビクッと身体を震わせた。

 

「……これ以上ここでの会話は危険だな。いつこっちに来るか分からん。集落へ移動するぞ」

 

 大柄の男がそう言い、ゼクードとアグリスは集落へ案内される形になった。

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