【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第397話【激昂のフランベール】

 鉄格子の影が日光によって伸びる。

 牢屋の中でフランベールはボウっと空を見上げていた。

 

 何も思い出せない空っぽな自分。

 そんな空っぽの脳には先程のゼクードの顔が焼き付いていた。

 

 名前はゼクード・フォルスって言っていた。

 

 その人はわたしにとって本当に不思議な人だった。

 初めて会ったはずなのに、心と身体が彼に対して反応していたのだ。

 

 もう大丈夫だ。

 安心していい、と。

 

 やっぱりわたしは……彼を知っているんだ。

 いきなり抱きつかれても、なぜか心が安らいだくらいだ。

 

 自分の名前すら思い出せないわたしをフランベールと呼んでいた。

 

 それも不思議で……違和感を感じなかった。

 

 わたしはフランベールなんだ。

 

 フランベールという名前で、ゼクードの妻で、彼との間に子供が二人もいて、その子供の名前は【レミーベール】と【リィンベール】というらしい。

 

 子供が二人もいると言われて驚いたが、彼が言うと……どうにも本当のような気がしてくる。

 

「レミーベール……リィンベール……」

 

 フランベールは呟きながら自分のお腹を擦った。

 子供がいるってことは、つまりわたしは、あのゼクードって人と……エ、エッチなことをしたってこと?

 

 途端に理解したフランベールは一人で顔を赤くしてしまった。

 

 いや、でも、そういうことだよね……?

 子供がいるってことは、そういうことしたってことだし……

 

 うう……次ゼクードさんに会うとき、どんな顔すればいいんだろう……

 

 恥ずかしくて目が合わせられないよ……

 

 でもやっぱり……嫌って気持ちが湧かない……

 以前のわたしは、本当にゼクードさんの事が好きだったんだ。

 

 ゼクードさんのことを考えれば考えるほど、胸に高揚感が湧いてくる。

 

 たしかにゼクードさんって、とってもカッコいい顔してた。

 身長もそこそこ高くて、隻眼だけど優しそうで、見てたら吸い込まれそうなパープルの瞳は素敵だった。

 

 抱き締めて来た時もわたしが痛くないように優しい力加減で抱き締めてくれていた。

 そんな気遣いができるのがゼクードさんという男性なのだろう。

 

 やだ……ゼクードさんって、本当にカッコいい……

 

 わたし……あんなカッコいい人の子供を二人も生んでるんだ。

 

 急に自分が誇らしくなってきて、なんとも言えない優越感がフランベールを満たした。

 

 すると脳裏にゼクードとの【夜の営み】がフラッシュバックした!

 

「うっ!」

 

 ズキッと頭が痛んだ。

 ゼクードに抱かれている光景が見えた。

 その光景は様々で、自分がゼクードに何度も抱かれた女だと言うことを思い出させてきた。

 

 ああ……わたし……やっぱりゼクードさんに……抱かれてるんだ……

 

 それを自覚したフランベールは目を閉じて記憶を探った。

 思い出しかけてるんだ。

 もっと、もっと思い出したい。

 

 ゼクードさんとの日々を……

 子供たちのことを……

 

 刹那!

 見覚えのない二人の女性が脳裏から現れた! 

 

 一人目は赤いポニーテールの女で瞳はライトブルー。

 びっくりするくらいのカッコイイ美人だ。

 

 え……誰?

 

 二人目は長い金髪の女で瞳はエメラルドグリーン。

 こっちもまたとんでもなく強そうな美人だ。

 

 え? え!? 誰なのこの二人!?

 

 その赤と緑の女二人はあろうことかゼクードと腕を絡め、有り得ないほど身体を密着させている。

 美人二人に挟まれたゼクードは嬉しそうに鼻の下を伸ばしている。

 

 ちょ、ちょっと……これどういうこと!?

 誰よあの女どもは!?

 

 挙句の果てにゼクードはその女二人とキスしてしまった。

 それも深い方の。

 

「――――――――――っ!!!?!!?」

 

 嘘だ……浮気!?

 わたし……浮気されてるの!?

 わたしという妻と二人の子供を持ちながら浮気!?

 

 信じられない!

 信じられない!

 嘘だと言ってよゼクードさん!

 

 しかし脳裏から現れたその女二人は消えない。

 ずっと見せつけてくるようにゼクードとイチャイチャしている。

 

「やめて! ゼクードさんから離れて!」

 

 大声を出して我に返ったフランベールは、自分が息を荒くして全身を震えさせていることに気づいた。

 嫌な汗が全身から出ている。

 

 信じられない記憶が…………いや、信じたくない記憶が見えてしまった。

 

 あの人……ゼクードさんは……わたしの記憶が無くなったのをいい事に、浮気したことをチャラにしようとしているの?

 

 だったら……許さない!

 

「おい! うるさいぞ! 静かにしろ!」

 

 牢屋の番人に怒られるが、フランベールには届かない。

 

 この記憶にある女二人は誰なの?

 浮気相手なのは間違いない。

 ゼクードさんに問い詰めなければ!

 

 意を決したフランベールは立ち上がった!

 怒りに満ちた碧眼が牢屋の入口を見据える。

 そこにはこちらを覗く番人がいた。

 

「おい聞いてるのか! もう大声出すんじゃないぞ!」

 

「うるさい!」

 

 怒りが収まらないフランベールは牢屋の出口を蹴り開けた!

 出口が鍵もろとも破壊され吹き飛んだ!

 番人が「んなんっ!」っと巻き込まれて吹き飛び、出口の下敷きになって気絶した。

 

 牢屋の出口が開いて、フランベールは外へと逃げ出す。

 

 浮気なんて許さない!

 

 待ってなさいゼクードさん!

 

 記憶にある女二人が誰なのか白状させてやる!!

 

 フランベールはゼクードがいるであろう火山へ激走した。

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