【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第37話【未来について】

 まさかフランベール先生の御家族が夫1人・妻4人の構成だったとは。

 

 なるほど、だから自分にもゼクードを推(お)してきたのか。

 

 普通の感覚ならば、意中の相手をわざわざ他の女性に進めたりはしない。

 好きな男性の一番で有りたいと願うのは女性ならば普通の思考だ。

 少なくともローエはそういう考えであり、そうでないと嫌だと思っている。

 

「だからローエさんがゼクードくんにアタックするのは有りだと思うよ?」

 

 ──だからこのフランベール先生の考え方に共感できない。

 困ったものだ。

 旦那を共有というのが、どうにも馴染めない。

 

 ローエの家庭は父と母が一人ずつ。

 そして妹リーネが一人のけっこう普通の家庭だ。

 だからこの一夫多妻の考え方が分からない。

 

「は、はぁ……わ、わたくしには馴染めない感覚ですわ」

 

「そっか」と少し残念そうにフランベールは呟いた。

 

 そこ普通なら安心するところじゃなくて!?

 なんで残念がられるんですの!?

 

「せ、先生? あの、そこはそんな残念そうにする場面じゃないと思いますけど?」

 

「あ、ごめんね。そうなのかもしれないけど、わたし……ローエさんやカティアさんのことも好きだから」

 

「ふぇ!?」

 

 バチンと音を立てて焚き火の薪が崩れた。

 驚愕したローエにフランベールは慌てて両手を振る。

 

「あ! 違う違う! そんな意味じゃなくて! 一緒にいると安心するって意味!」

 

「ああなるほど! び、びっくりしましたわ本当に」

 

「ごめんね。言葉足らずで……」

 

「いえ……でも、なぜわたくしやカティアさんをそんなに?」

 

「うん。わたしは上に兄が二人と姉が三人いるの。兄さん達はともかく、姉さん達は【攻撃魔法】を覚醒させてない『普通の女性』でね」

 

「ぁ……」

 

 ローエはこの時点で察した。

【攻撃魔法】を覚醒させていない普通の女性は、何故か【攻撃魔法】を覚醒させた女性を軽蔑する。

 気持ち悪い、と。

 

 ローエ自身もそんな経験は腐るほどあった。

 異端と罵られ。

 まともに女友達ができた試しがない。

 男ばかりの騎士学校なら尚更。

 

 他人に軽蔑されていた自分はまだいい。

 フランベールは姉の三人だ。

 ほぼ毎日のように顔を合わせることになる身内を相手に、毎日のように異端と罵られてきたのではないだろうか?

 身内だと無視するのも限度がある。

 それがどれだけ辛いことか、想像に難くない。

 

「やっぱり姉さん達には良い目で見られなくてね。他のお母様たちも」

 

 姉三人だけでなく、他の母親までとは。

 いつも笑顔を絶やさない優しいフランベール先生だが、家庭内ではこんなにも息苦しい生活を送っていたとは。

 

 自分がその場にいたならば、味方してあげられるのに。

 寄り添ってあげられるのに。

 

 ──……あぁ、だからフランベール先生は、自分とカティアと一緒にいると安心すると言ったのか。

 同じ女性の身で【攻撃魔法】を覚醒させた者同士だから。

 

「でも【ドラゴンキラー隊】が結成されてから、みんなと一緒に行動するのが楽しいの。わたしがここにいても何も変じゃないって、ローエさんもカティアさんも【攻撃魔法】を使えるのが当たり前だから、堂々と胸を張っていられる。それにゼクードくんもそんなこと気にしない優しい子だしね」

 

「ええ。共感いたしますわ先生」

 

 確かにこの【ドラゴンキラー隊】には居心地の良さを感じていた。

 

 なんだかんだ可愛いし凄く頼りになるゼクード。

 いつも優しいフランベール先生。

 ……壁としては良い仕事をするカティア。

 

【攻撃魔法】を持った異端な女性が三人いても、ゼクードはそれをまったく気にしていない(むしろ甘えてくる)。

 

 異端な女性が三人もいることで逆にそれが普通となり、とても居心地の良い雰囲気ができている。

 

 フランベール先生が【ドラゴンキラー隊】での行動を好きだと言うのはとても理解できる。

 

「わたくしもこの部隊はとても気に入ってますわ」

 

「やっぱりローエさんもそうなんだ。嬉しいなぁ……。だからね、この部隊のみんなが家族だったらどれだけ幸せなんだろうなぁって、最近よく考えるの」

 

「家族?」

 

「うん。みんなでゼクードくんのお嫁さんになって家族を築くの。偏見や歪みのない良い家族になれると思う。わたしたちの誰かが女の子を産んで、その子が【攻撃魔法】を覚醒させてもローエさんやカティアさん、わたしもみんな分かってあげられるし、良い家族になれる気がするわ」

 

 なんか凄い先のことまで考えてるこの人!

 

 ──……でもまぁ確かに。

 先生の言うとおり、悪くない家族になりそうな気はする。

 

 ただひとつ。

 自分がゼクードの一番にはなれないこと。

 そこが唯一の不満点か。

 

「だから、ね? ローエさんもゼクードくんが好きなら遠慮なくキスしてほしいな」

 

 まさか女性からこんなことを言われる日が来るとは思わなかった。

 

「ま、まぁ……考えておきますわ。ゼクードの気持ちもちゃんと聞いてからにしておかないといけませんし」

 

「ふふ、やっぱりローエさんって素敵。そこでちゃんとゼクードくんの気持ちのことを考えるんだから」

 

「え、いや、そんな……彼の気持ちを蔑ろにして成立する話ではありませんし」

 

「うん。そうだね」 

 

 何がそんなに嬉しいのか。

 フランベール先生はニコニコしている。

 

「それじゃあもう休もうか。見張り番はわたしがやるから、ローエさん先にどうぞ」

 

「わかりましたわ。お願いします」

 

 長話したおかげで昂っていた気持ちもかなり落ちついた。

 今ならゆっくりと寝られそうだ。

 

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