【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった 作:ミズノみすぎ
「あ! あの女は!」
アグリスの顔が露骨に険しくなった。
彼女の視線の先には見覚えのある女騎士が二人いた。
ゼクードは目を凝らすと驚いた!
あれはカティアとローエ!?
よかった!
無事だったんだ!
ドラゴンに追われていることを忘れそうになるほど気持ちが高揚した。
思わず手を上げて声を高らかに発した。
「おお――――い! カティアー! ローエェエ!」
まるで子供のようなハシャギ声でゼクードは言った。
しかしここであることに気づいた!
ん!?
いや、ちょっと待て!?
なんでフランが一緒にいるんだ!?
しかもなんか追っかけられてるような?
火山の麓を走るカティアとローエ。
その後ろには【集落ハサカ】に捕まっているはずのフランベールの姿があった。
どうなってるんだ!?
愛妻が三人しっかり揃って嬉しいはずなのに困惑が勝(まさ)ってきた。
そしてかなり距離を詰めてきたカティアが口を開いてきた。
「ゼクードオオオ! こっちに来るな! あっちに行けぇえ!」
「えええええ!?」
無事に再会できた妻カティアからの第一声がそれだった。
悲しい!
「フランが暴走してますの! ドラゴンをこっちに連れて来ないで!」
「ええええええ!?」
無事に再会できた妻ローエからの第一声がそれだった。
泣きそう!
っていうか……
「フランが暴走ってどういうこと!?」
意味が分からず声を張るも、当のフランベールと目が合ってしまった。
その目はいつもの優しいフランベールの色ではなかった!
殺気!
ドス黒い殺気に満ちた目をしていた!
瞳には光さえ入っていない!
「は! ゼクードさん! ゼクードさぁああああああん!」
フランベールがカティアとローエから狙いを外し、ルートをゼクードへ変えてきた!
凄まじい形相で走ってくる!
よく見ると片手には石を握り締めている。
あれで殴り殺して来そうな勢いだ!
「ちょ、ちょっと! なんか雰囲気変わってない!?」
「凄い殺気ですね」
フランベールの豹変にアグリスとドレスが驚く。
「わたしというものがありながら! あなたって人はあああああああああああああああ!」
どんどん迫ってくるフランベール!
ゼクードはフランベールの殺気におもわず立ち止まった!
「ひぃっ! な、なんであんな怒ってんの!? アグリス! 俺なんかしたか!?」
「知らないわよ! とにかくさっさと謝りなさいよ! 後ろからドラゴン来てんのよ!」
そうだった!
火山のドラゴンをここ麓まで誘導させている途中だった!
もうここで十分なのだが思わぬトラブルが発生した!
なんとかしてフランベールを止めないと、まともに戦えない!
フランベールが怒ってるがさっぱり分からないが、なんでもいいから謝るしかない!
火山のドラゴンもすぐそこまで来てるんだ!
「あわわ! フラン! 俺が悪かった! 許してくれ!」
「許しません! あなたを殺してわたしも死にます!」
えええええ!?
「アグリス! 悪化したじゃねぇかバカ野郎!」
「私に言うな!」
「ああもう! おいフラン! なんでそんな怒ってるんだよ!? ちゃんと説明してくれ!」
「白々しい! そこの女二人はあなたの妻だって言うじゃないですか! わたしを妻だと言っておいてこれはどういうことなんです!? 浮気じゃないですかこれ!」
「えええええ!?」
そこの女二人とはカティアとローエを指しているようだ。
なんで今さら……
いや、そうか。いまフランは記憶を失っているんだった。
でもなんでこんな事態に!?
「浮気じゃないよ! 俺たちはみんなちゃんと結婚してるよ! ハーレム一家なんだって!」
「ハーレム……一家?」
フランベールが止まり、顔に血の気がなくなっていく。
そして肩を震えさせ、また殺気全開の眼になった!
「なにが……なにがハーレム一家ですかあああああ! もう少しマシな嘘をつけえええええええ!」
フランベールが激走!
「ひぃいいい!」
どんどんどんどん迫ってくるフランベールにゼクードは一歩引いた!
「面倒なメスですね。食べていいですか?」っとドレス。
「バカやめろ! ふざけんな! お前らはドラゴンの足止めをしろ! 早く!」
「んもう! 人使いが荒いんだから!」っとアグリス。
ドレスとアグリスはドラゴン形態に変身し、火山のドラゴンを迎え撃った。
それは2対1の空中戦となる。
「ゼクードさん! この! 裏切り者おおおおお!」
地上では発狂したフランベールがゼクードに追いついた!
石を握った手で殴り掛かかってくるフランベールだが、ゼクードは彼女の腕を瞬時に掴んで止める。
「やめろフラン! いい加減にしろ!」
「この! 離して! 離せ!」
ドゴン!
ゼクードの股間にフランベールの蹴りが炸裂した!
「ほばあああああああああああああああああ!!!!」
男として生まれたら永遠の弱点となるキン○マ!
そこを蹴られればたとえエルガンディ最強のSSS級騎士だとしても一撃で沈む。
今のゼクードのように。
「やめろフラン! 本当にやめるんだ!」
「そうですわ! あなたはこんなことをする人間では!」
倒れたゼクードをカバーするようにカティアとローエが駆け付けた!
二人はフランベールの腕を掴んで抑え込む!
「うるさい離せ! 離せええええ! ブッ殺してやる! お前らみんな殺してやる! わたし以外の女を抱くなんて許せない! 許さない! 許さない! 許さない! あああああああああああああああああああああ!」
発狂がピークに達してきた!
フランベールは全力で暴れてくる!
二人掛かりなのに振り回されそうになる!
ギリギリだ! 手を離したら誰かが殺される!
「フラン! 思い出してくれ! 私達は家族だろう! 今日まで苦楽を共にしただろう!」
「離せええええええええええええ!」
「ハーレムはあなたが一番望んでいたことじゃないですの! 思い出してフラン! わたくし達はみんな! みんな愛し合ってきたじゃないですの!」
「そうだフラン! 私達はみんな愛し合ってた! 本当だ! 私はお前も! ゼクードも! ローエも! みんな愛してる!」
「うるさいうるさいうるさいうるさい! なにが愛してるよ! そんなバラバラの気持ちが愛だなんてあるわけない!」
「「フラン!」」
「お前らはわたしからゼクードさんを奪った敵だ! 許さないからな絶対に! 絶対にぃいいいい!」
その時だった。
アグリスとドレスが戦っていた火山のドラゴンがマグマを吐いてきた!
そのマグマを回避したアグリスだったが、その方角にフランベールたちがいることに今さら気づいた。
避けてはいけなかったのだ。
「しまった! 危ない!」
アグリスが叫ぶがマグマはもうすでにフランベールの目前!
もはや回避も間に合わない距離にまで来ていた!
フランベールは目をこれでもかと見開く!
もうダメだとフランベールが思った瞬間!
「「フラン!」」
カティアとローエがフランベールを押し倒した。
それはフランベールを守るようにした陣形で、カティアとローエは自分の背中を盾にしていた。
信じられない光景にフランベールは驚愕し、そのまま二人の下敷きになった。
マグマが降り掛かる!
そう身構えて死ぬ覚悟を固めると同時にゼクードが駆け付けた!
カティアの背中にあった【ブレイブエルガンディ】がゼクードの手によって抜刀された!
「【真・竜めくり】!」
抜刀からの鮮やかな一閃で竜巻を起こしたゼクード。
それは愛妻たちに降り掛かろうとしていたマグマを飲み込み弾き返した!
「マグマを!」
「弾き返した!?」
アグリスとドレスが驚く。
「「ゼクード!」」
カティアとローエが振り向き歓喜に叫ぶ。
「はぁ……はぁ……間に合ったな! ナイスだカティア。この剣さえあれば!」
ゼクードは火山のドラゴンに向かって疾走する!
「うおおおおおおおおお!」
雄叫びを上げ、ゼクードは先ほど自分で起こした竜巻に乗り空中へ!
火山のドラゴンの頭上を取った!
「終わりだ!【真・竜(ドラゴン)斬り・竜獄斬】!」
銀色の斬撃が十重二十重に放たれ、火山のドラゴンをミンチにした。
マグマが固まった鎧も、竜鱗も、ゼクードの斬撃は一刀両断した!
ヴァルドレイク戦で限界を突破し、すでにフォレッドの【極・竜斬り】のレベルに達しているゼクードの斬撃に斬れないものはない。
得物がオリハルコン製の【ブレイブエルガンディ】なら尚更である。
「すご……」
アグリスはゼクードのあまりの強さに唖然としていた。
ドレスは表情を曇らせながらゼクードを見つめるのみ。
そして当の愛妻たちは。
「さっすがゼクードですわ!」
「ふん……私の夫ならこれくらいはやってもらわないとな」
ローエとカティアが夫の相変わらずの強さに満足しながら立ち上がろうとした。
ガシッ!
「「!?」」
立ち上がろうとしたカティアとローエの肩をフランベールが掴んできた。
カティアとローエはフランベールの顔を見る。
すると彼女の目元が濡れていた。
「……………………思い出した」
「え!? フランあなた!」
「フランお前!」
まさか記憶が!?
ゼクードもフランベールを見た。
フランベールはポロポロポロポロと涙を流していた。
そしてギュッとカティアとローエの肩を掴む手に力を込めて、自分の元へと寄せた。
「思い出したよ。カティアさん……ローエさん………………ありがとう……!」
「フランお前! 本当に記憶が……!?」
「うん! 全部……全部思い出した! ありがとう二人とも……本当に…………本当に…………ありがとう!」
「あぁ……良かった……良かったですわ……フラン!」
「まったく……ヒヤヒヤさせて……この、馬鹿者が……!」
ついにローエとカティアも涙を決壊させた。
ゼクードの愛妻3人が抱き合って嬉し泣きしている。
その光景を目にしたゼクードも貰い泣きしてしまう。
良かった……フラン!
本当に良かった!
ゼクードは心の中で繰り返した。
フランベールは嬉し泣きしてくれたカティアとローエを思いっきり抱き締めて笑う。
「えへへ…………ごめんなさい二人とも……………………大好き」