【書籍化】S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった   作:ミズノみすぎ

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第404話【アグリスとドレス】

 深夜。

 

 集落のみんなが寝静まった時間。

 

 アグリスは眠れないでいた。

 

 アグリスはゼクード達とは別の小屋を宛てがわれていた。

 集落の隅っこにある小さな小屋だが、寝るだけなら十分な広さだった。

 

 貴族育ちのアグリスには耐え難いものもあったが、最近はずっと野宿だったから、こうしてベッドで屋根のある部屋で寝れるだけありがたかった。

 

 ゼクードたちは別の大きな家に案内されていた。

 四人で夫婦なのだから仕方ないのだが、それにしたってこの扱いの差は酷い。

 

 火山のドラゴンを討伐するのにはちゃんと協力したんだからもう少し良い部屋を紹介してくれたって良いと思う。

 

 ……ほんっと、これだから平民は嫌いよ。

 

 まぁでも宴の時にもらった食事は美味しかったし、温泉も悪くなかった。

 さすがにゼクードたちと入る気にはなれなかったから先に入ってしまったが……ゼクードと二人っきりだったなら……

 

「って! 何考えてんのよ私……」

 

 あんな人の事を便利屋としか思ってないクズ男と入浴だなんて有り得ない。

 確かに強くてカッコいいけど、やっぱりレグの方がカッコいいわ。

 

 いつだってレグは私を助けてくれる……

 

 でも……そのレグはもう……ドレスと同じで心臓に乗っ取られてるって話だし……私はこれからどうすればいいんだろう……

 

 ゼクードについて行っても……

 

 最後には殺されるかもしれない……

 

 ねぇゼクード……私が用済みになったら……アンタは私を殺すの?

 

 ………………

 

 …………

 

 ……天井が答えてくれるはずもなく、虚しい空気が漂うだけだった。

 

 はぁ……寂しい……

 冷たい……

 一人は嫌だ……

 

 一人じゃ眠れない……

 怖いよレグ……

 未来に何も希望が持てない。

 

 レグの顔や姉妹の顔を思い出す。

 お父様の顔も。

 

 ディアマード家は崩壊したんだ。

 私だけを残して……

 

 ゼクード……私……どうしたらいいの?

 

 レグではなく、ゼクードの顔を思い出してしまった。

 もう助けに来てくれないレグより、今は近くにいるゼクードを頼りにしてしまう。

 

 ゼクードはなんだかんだ助けてくれそうな雰囲気がある。

 ドレスから私を守ろうとしてくれたりした。

 でもそれは……まだ私に利用価値があるからで……

 私を想ってくれているわけではない。

 

 女としても、見てないって言ってたし……

 

 じわりと涙が出そうになってきた。

 

 

 

「こんにちは」

 

 

 

 

「え!?」

 

 突如聞こえた声にアグリスは驚いて飛び起きた。

 見ればそこにはドレスの姿があった。

 

「ドレス!? え……来ちゃったの!?」

 

「はい。アグリスさん会いたくて」

 

 私に……会いたくて?

 

 嘘でも本当でも、今のアグリスには嬉しい言葉だった。

 あれだけ寒かった心が仄かに暖かくなる。

 

「はは……よく見つからなかったわね」

 

「もうこの時間だとみんな寝てますからね。それより……」

 

 ドレスがゆっくりと歩み寄り、アグリスの唇に自分のそれを重ねた。

 

「―――――っっっ!?」

 

 ドレスの不意打ちキスに驚愕したアグリスは目を限界まで広げ、ドレスを押し退ける。

 

「ちょっ! ちょっと! なにすんのよ!」

 

「アグリスさん……私は言いましたよね? あなたとしたいことがあるって」

 

「! 言ってたけど……ま、まさか!」

 

「あなたは【竜ノ苗床】になれます。さぁ……私と一つになりましょう……」

 

「りゅ、【竜ノ苗床】って何!? ひ、一つって何!? ちょ、ちょっと待って! 落ち着いてドレス! 私たち女同士なのよ!?」

 

 迫ってくるドレスにアグリスは後ずさる。

 すると背中に壁が当たった。

 もう行き止まりだ。

 目をとろんとさせたドレスが頬を朱くしながらアグリスに近づく。

 

「あなたの匂いを嗅いだ時から……ずっと……興奮してました……もう……我慢できないんです……」

 

「ド、ドレス……」

 

 ドレスの眼は本気だった。

 これから何をされるのか、なんとなく分かってしまった。

 

 まさかドレスにそんな気があるなんて……

 いや、違う。

 これは心臓の人格なんだ。

 

 ドレスはもう、いない。

 

「お願いですアグリスさん……わたしを……わたしを受け入れて……」

 

「ドレス…………」

 

 ふわりとドレスに抱きしめられ、アグリスはそのまま押し倒された。

 

「あ……」

 

 ドレスのぬくもりがアグリスを包み込む。

 

 孤独の寒さを感じていたアグリスには、そのドレスのぬくもりは、あまりにも暖かくて……

 

 別人だと分かっていても、このドレスを押し退ける気持ちにはなれなかった。

 

「アグリスさん……」

「ドレス……」

 

 アグリスはドレスの背中に手を回して、彼女をそっと受け入れた。




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